2014 Fiscal Year Research-status Report
新規生理活性物質SCGB3A2の肺線維症治療薬としての応用を目指した基盤研究
Project/Area Number |
24591151
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
黒谷 玲子 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (00453043)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 宏之 山形大学, 理工学研究科, 教授 (10375199)
柴田 陽光 山形大学, 医学部, 講師 (60333978)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | SCGB3A2 / 肺線維症 / ブレオマイシン / トレッドミル |
Outline of Annual Research Achievements |
新規生理活性物質セクレトグロビン(SCGB)3A2は、肺炎や肺線維症を改善する可能性が高いタンパク質である。肺線維症は、細胞のダメージ、炎症、コラーゲン沈着を経て重症化する。本研究では、SCGB3A2の肺線維症治療薬としての有効性の検証を目的とし、昨年度から継続して、Scgb3a2遺伝子欠損マウス(Scgb3a2 KO)と野生型マウス(WT)に対し、ブレオマイシン(BLM)で肺線維症を誘導させた時の呼吸機能評価と病理解析を行った。加えて、細胞培養系を用いたSCGB3A2の抗炎症作用を検討した。 BLM投与後、トレッドミルによる走行実験を行った。その結果、PBS投与群マウスの走行距離(653m)はWTマウスにBLMを投与した時の走行距離(730m)により減少した。BLM投与KOマウスの走行距離は432mであった。以上の結果は、一昨年に続いて高い再現性を得られた。マッソン・トリクローム染色による肺組織の線維化の程度を解析した結果、WTマウス、KOマウスともにBLM投与によって線維化領域は広範囲に認められ、KOマウス肺の線維化領域が増加することが再現できた。 一方、培養系の解析として成獣マウス肺の線維芽細胞を用いた炎症系モデル(LPS刺激)を用いて、SCGB3A2の効果を検討した。この結果、LPS刺激によって有意に増加したTUNEL陽性細胞は、SCGB3A2によって有意に抑制された。マウス肺繊維芽細胞株MLgを用いた再現実験によって、成獣マウス肺の線維芽細胞で得られた結果に類似した結果が得られた。 本年度の研究により、昨年度に得られたSCGB3A2の肺線維症改善効果に対する再現性が得られ、SCGB3A2の肺線維症治療薬として有効性が示された。WTおよびKOマウスのコンプライアンス測定を計画していたが、安定的な計測結果を得ることができていない。延長期間内に、コンプライアンス測定と肺組織におけるコラーゲン遺伝子発現の定量化を行い、BLM誘導性肺線維症におけるSCGB3A2の治療効果を証明したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度以降の計画として、SCGB3A2のアポトーシス抑制効果を細胞レベル、組織レベル及び器官レベルで解析し、SCGB3A2の肺線維症改善効果を科学的に検証することを挙げた。野生型(WT)およびScgb3a2欠損(KO)マウスに対し、ブレオマイシン(BLM)により肺線維症を誘導させた時の肺線維症におけるSCGB3A2の重要性の検討を計画した。 BLM投与3週間後のマウスの体重減少はScgb3a2 KOマウスで最も顕著であった。また、走行距離もScgb3a2 KOマウスのBLM投与群で最も短い結果であった。このことから、Scgb3a2が呼吸機能に重要な役割を持つ可能性が示唆されたが、体重減少が走行距離に影響をしている可能性は否定できない。しかしながら、WTおよびScgb3a2 KOマウスにPBSを投与した場合、体重は共に約9%増加したのに対し、Scgb3a2 KOマウスの走行距離はWTに比べて減少していることから、SCGB3A2が呼吸機能の維持に重要であることが示唆された。以上の結果に対する再現が確認できた。 また、走行実験後の肺組織の病理解析を行った結果、マッソン・トリクローム染色によって、WTマウス、Scgb3a2 KOマウスともにBLM投与によって線維化領域は広範囲に認められ、特に、Scgb3a2 KOマウス肺組織での線維化の範囲が増加することの再現性が得られた。 培養系の解析として、成獣マウス肺の線維芽細胞を用いた炎症系モデル(LPS刺激)を用いて、SCGB3A2の存在・非存在下での検討を行った。その結果、LPSで刺激した際に有意に増加するTUNEL陽性細胞がSCGB3A2によって有意に抑制されることが明らかになった。現在は、マウス肺繊維芽細胞株MLgを用いた再現性の確認を行っており、成獣マウス肺の線維芽細胞で得られた結果に類似した結果が得られてきた。継続期間中に細胞内シグナル経路の決定を行う。 計画の一部で進行が遅れている解析があるが、新たな知見や再現性の確認ができ、おおむね順調に進展したと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
延長期間中には、「培養肺細胞を用いたSCGB3A2のアポトーシス抑制効果の検討」として、SCGB3A2の抗アポトーシス効果における細胞内シグナル経路の決定を行う。また、「肺器官培養システムを用いたSCGB3A2の肺組織構築促進効果の検討」を同時にすすめ、ex vivoの系における抗アポトーシス効果も検討する。アポトーシスの生物学的解析では、TUNEL法およびAnnexin V結合試験での解析は進んでいるため、チトクロームC(CytC)局在解析を加えて、SCGB3A2存在下・非存在下でBLM刺激したマウス肺線維芽細胞のアポトーシス抑制効果を解析する。器官培養システムを用いた検討では、培養液にBLMを添加し、器官培養系において組織レベルでの肺線維症モデルを構築したため、ex vivoの系におけるSCGB3A2のアポトーシス抑制効果を検討する。この肺器官培養システムを用いたSCGB3A2の肺組織構築促進効果の検討によって、肺組織構築に対するSCGB3A2の効果が明らかになる。さらに、「肺線維症モデルマウスを用いたSCGB3A2の肺線維症抑制効果の検討」のうち、WTとScgb3a2 KOマウスに対し、BLM投与により肺線維症を誘導したマウスの解析として;1)生理機能検査としてコンプライアンス測定による安定したデータの収集と解析。2)TUNEL法による肺組織におけるアポトーシスの検出と局在の検討を継続する。
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Causes of Carryover |
平成25年11月に第2子を出産し、平成26年1月中旬までの2か月間産休を取得。その後、仕事に復帰したが、短縮勤務をしていたため研究の進行が予定より全体的に遅れた。本研究において重要な動物実験についても遅れが生じたため、計画より遅れている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度中に計画していた動物実験の一部(生理学的解析)、病理学的解析の一部に関する試薬の購入を予定。また、培養細胞系を用いた実験を計画・実施しているが、細胞を観察するための倒立顕微鏡が老朽化しているため新しい顕微鏡の購入を計画している。
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Research Products
(28 results)
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[Journal Article] A magnetic anti-cancer compound for magnet-guided delivery and magnetic resonance imaging2015
Author(s)
Eguchi H, Umemura M, Kurotani R, Fukumura H, Sato I, Hoshino Y, Lee J, Amemiya N, Sato M, Hirata K, Singh DJ, Masuda T, Yamamoto M, Urano T, Tanigaki K, Yamamoto M, Sato M, Inoue S, Aoki I, and Ishikawa Y
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Journal Title
Sci Rep.
Volume: 17
Pages: 9194
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Epac1-dependent phospholamban phosphorylation mediates the cardiac response to stresses.2015
Author(s)
Okumura S, Fujita T, Cai W, Jin M, Namekata I, Mototani Y, Jin H, Ohnuki Y, Tsuneoka Y, Kurotani R, Suita K, Kawakami Y, Hamaguchi S, Abe T, Kiyonari H, Tsunematsu T, Bai Y, Suzuki S, Hidaka Y, Umemura M, Ichikawa Y, Yokoyama U, Sato M, Ishikawa F, Izumi-Nakaseko H, Adachi-Akahane S, Tanaka H, Ishikawa Y
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Journal Title
Clin Invest.
Volume: 124
Pages: 2785-2801
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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