2012 Fiscal Year Research-status Report
PPARαアゴニストによる肺腫瘍抑制メカニズムの検索
Project/Area Number |
24591159
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
久野 壽也 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00345779)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | PPARαアゴニスト / 肺 / 腫瘍 |
Research Abstract |
肥満、高脂血症を自然発症するTsumura Suzuki Obese Diabetes (TSOD)マウスを用いて4-nitroquinoline 1-oxide (4-NQO)誘発肺増殖性病変に対するPPARαアゴニストfenofibrateの効果を検討した。99匹の雄性TSODマウス(6週齢)を5群に分け、1-3群に対しolive oilに懸濁した4-NQO (10mg/kg体重)を単回皮下投与し、肺増殖性病変を誘発した。1群には基礎食を与え、2,3群にはPPARαアゴニストであるfenofibrateをそれぞれ0.01, 0.05%の濃度で4-NQO投与1週間後より混餌投与した。4群には0.05%fenofibrateのみを与え、5群は無処置群とした。実験開始後30週にて犠牲死、剖検を行い、肺を中心に病理学的解析を行った。1群に比し2,3群に有意な体重低下が見られた。実験終了時の血清中トリグリセリド、遊離脂肪酸、インシュリン、IGF-1R値は0.05%fenofibrateの混餌投与により1群に比べ有意(p<0.01)に減少した。総コレステロール値と血糖値は群間に差を認めなかった。1群の肺増殖性病変(腺癌、腺腫及び過形成)の発生率は33%、その発生個数(/マウス)は0.42±0.72であった。2,3群における肺増殖性病変発生率と発生個数(/マウス)はそれぞれ17%および 0.21±0.51、4%および0.04±0.20であり、いずれも3群で有意(p<0.05)に減少していた。免疫組織化学的に、4-NQO誘発肺腺癌にはIGF-1R, pAkt, pErkの発現を認めた。FenofibrateはIGF-1R経路の抑制を介して肥満、高脂血症を背景とした4-NQO誘発マウス肺増殖性病変に対し、抑制効果を有することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マウスを用いた実験は順調に終了し、PPARαアゴニストが増殖シグナル経路に修飾を加えることにより、肥満、高脂血症を背景とした4-NQO誘発マウス肺増殖性病変を抑制することが動物実験で明らかとなった。しかしながら解析に多くの時間が必要となったため、細胞株を用いた実験の遂行が困難であった。今年度中にin vitroの実験を行い、それと平行して25年度分として予定されていた動物実験を終了させることを目指したい。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度中に肺腺癌細胞株(A549, H1666, HCC827)を用いてPPARαアゴニストのシグナル伝達経路に及ぼす影響を検討する。細胞レベルでの効果を確認し、遅れていた課題を完了させたい。平行して4-NQO誘発ddyマウス肺腫瘍に対するfenofibrateの効果実験を行い、肥満、高脂血症状態にないマウスにおいてもPPARαアゴニストが肺腫瘍を抑制するかどうかを検討する。動物実験期間は30週であり、その飼育期間中に細胞株を用いた実験を優先的に行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
668,012円の繰越金は細胞実験の遅れのために生じており、肺腺癌細胞株を用いた実験遂行のために使用したいと考えている。研究費はすべてを消耗品の購入に充てることにしており、細胞株以外に、動物とその飼育及び解析のための費用にほとんどを使用する予定である。
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