2012 Fiscal Year Research-status Report
肺の炎症終息と組織修復における小胞体ストレスのインパクト
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24591169
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
森本 浩之輔 長崎大学, 熱帯医学研究所, 准教授 (50346970)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 小胞体ストレス / 肺線維症 / 急性肺障害 |
Research Abstract |
高血糖状態は、末梢血単球に小胞体ストレスを惹起し、その機能を障害していることがわかっている。肺の炎症終息機構において重要な肺胞マクロファージも同様の影響を受けていると考えられる。ストレプトゾトシン投与により高血糖マウスを作成し、肺胞マクロファージの機能について解析を行った。アポトーシス細胞の貪食機能は健常マウスと同等であったが、これに引き続くHGFの産生が有意に抑制されていた。また、マクロファージのcell lineであるRAW細胞を使用してツニカマイシン(TM)により小胞体ストレスを生じさせると、同じ現象がおきた。また、RAW細胞は、高グルコース濃度よりもインスリン欠乏で小胞体ストレスを生じた。一方糖尿病の非炎症時の肺胞マクロファージにおける小胞体ストレスは健常マウスと差が見られなかった。 二型肺胞上皮の小胞体ストレスは、肺の線維化と関連している。二型肺胞上皮のcell lineであるA549細胞にTMを用いて小胞体ストレスを生じると、TNF刺激によるGM-CSF産生が抑制された。GM-CSFは上皮の修復に重要であり、線維化における上皮修復障害の機序の一つと考えられる。また、IL-8やMIP-2の産生は抑制されず、炎症の遷延と組織修復の障害を同時に説明できる成果である。A549は元来癌細胞であり、primary細胞を用いた検討が不可欠と考えられた。マウスの二型肺胞上皮のprimaly細胞分離の手技を確立し、同様の現象をでも確認することができた。 マウスにLPSによる急性肺障害モデルを作成し、TM投与により組織修復が抑制されるか検討した。しかし、TM投与により炎症細胞が増えたため、組織修復を比較することができなかった。動物モデルの見直しが必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
糖尿病マウスの肺胞マクロファージの機能の解析が順調に進んでいる。高血糖よりもインスリン欠乏で小胞体ストレスを生じることが判明するなどしており、あと一年程度で肺胞マクロファージのefferocytosisによるHGFの産生と小胞体ストレスの関連を知ることができる。 肺胞上皮を用いた検討では、GM-CSFの産生抑制、IL-8が抑制されないことを確認することができた。また、cell lineだけでなくprimary cellの分離・培養方法を確立し、この現象を証明できたことは意義が大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
肺胞マクロファージについては、産生抑制のメカニズムを検討する。また、アポトーシス細胞の貪食によって産生されるもう一つの増殖因子であるTGF-βがどのように変化するのか検討する。 二型肺胞上を用いた実験では、GM-CSFの産生がmRNAを定量して転写レベルで抑制されているのかを検証し、細胞内シグナル伝達経路について調べる。 動物実験では、小胞体ストレスの影響を検証するため、ブレオマイシン肺臓炎モデルなどを試し、より適切なモデルを確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の進行上、今年度予定していた動物実験のモデルが再検討が必要になるなど、一部遅れが出て126415円を次年度に使用することとした。 次年度の研究費はマウスや、各種サイトカインや増殖因子を測定するためのELISAキットや抗体、PCR用の試薬、ウェスタンブロットのための抗体、細胞培養培地、プラスチック製品などの消耗品を購入することに充てる。
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