2012 Fiscal Year Research-status Report
肺炎マイコプラズマ感染と続発する合併症の発症に関与するTh17細胞の働き
Project/Area Number |
24591175
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
蔵田 訓 杏林大学, 医学部, 助教 (00383670)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 肺炎マイコプラズマ / Th17細胞 / サイトカイン / 炎症 |
Research Abstract |
肺炎マイコプラズマ(M. pneumoniae)は若年齢層に好発する市中肺炎の起因菌である。肺炎自体の予後は比較的良好なものの、Stevens-Johnson 症候群やギランバレー症候群など多彩な肺外合併症を続発する症例が報告されている。一方近年、Th1、Th2に続く新たなT細胞サブセットとしてTh17 細胞が同定され、様々な自己免疫疾患において中心的な役割を果たしていることが明らかとなっている。 そこで我々は、マウスを用いた実験的マイコプラズマ肺炎モデルを作成し、Th17細胞や、制御性T細胞群がマイコプラズマ肺炎および続発する合併症へどのように関与しているのか検討した。 肺炎マイコプラズマの菌体を超音波により破砕した菌体抗原をBALB/c系SPFマウスに経鼻的に1mg protein /kgで1ヶ月間に5回反復感作した。同様の感作方法にて抗原量を0.1mg protein /kgに減少させた低濃度感作群、更に1mg /kgの抗原量で1ヶ月に2回のみの感作を行った群も作成した。最終感作の翌日にマウスの肺の病理組織学的な検索およびELISA法による肺内サイトカインの定量を行った。 その結果、肺炎マイコプラズマ菌体抗原の感作がマウスの肺の病理組織学的な肺炎を誘導した。また、マウス肺内のIL-17AおよびIL-10濃度は肺炎マイコプラズマ菌体抗原の濃度および感作回数の増加に従って上昇した。しかしながら、1mg protein /kgの高濃度の抗原感作であっても、1ヶ月間に2回のみの感作ではIL-17AおよびIL-10の上昇は頻回感作群と比較して軽度であった。高濃度かつ頻回の肺炎マイコプラズマ抗原感作がTh17細胞の分化を誘導し、その抑制にはIL-10を産生する制御性T細胞(Treg)であるTr1細胞の関与が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
古典的肺炎起因菌とは異なり、毒素等の著明な病原因子を保有しない肺炎マイコプラズマ感染症の発症機構には、過剰な宿主免疫応答の関与が考えられている。我々はBALB/c系SPFマウスに肺炎マイコプラズマの菌体抗原を反復感作することで、実験的マイコプラズマ肺炎モデルを作成した。このモデルの病理組織学的解析および免疫学的解析を行うことによって、マイコプラズマ菌体抗原の経鼻腔感作が肺の炎症とIL-17Aの産生をはじめとする過剰な宿主免疫応を誘導する事が明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスの系によって感染に対する宿主免疫応答が異なる報告がされている事から、BALB/c系だけでなくC57BL/6系マウスを用いて肺炎マイコプラズマ菌体抗原を反復感作した実験的マイコプラズマ肺炎モデルを作成し、その免疫応答について解析する。 更にマウスリンパ球を分離し、肺炎マイコプラズマおよび他の肺炎惹起細菌の菌体抗原、また種々の免疫惹起物質で刺激したin vitroの実験系を用いて、免疫応答を比較することにより、肺炎マイコプラズマ菌体抗原による宿主免疫誘導機構の特異性について検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験動物より分離したリンパ球を肺炎マイコプラズマ菌体抗原で感作する際、副刺激を与えるために利用する抗体の購入に使用する。また、リンパ球の培養上清中に産生されたサイトカインの定量のためのELISAキットの購入にも使用する。
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Research Products
(15 results)