2012 Fiscal Year Research-status Report
BirtーHoggーDube症候群のFLCN遺伝子解析と肺嚢胞形成分子機構の解明
Project/Area Number |
24591177
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
吉川 美加 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90327792)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬山 邦明 順天堂大学, 医学部, 准教授 (10226681)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | BHD症候群 / 嚢胞性肺疾患 / 気胸 / 遺伝子検査 / 肺線維芽細胞 / 肺嚢胞 |
Research Abstract |
気胸・多発性肺嚢胞を契機にBHDSが疑われた日本人Birt-Hogg-Dube症候群(BHDS)患者のFLCN遺伝子診断を継続して行い診断数は180例を超えた。依然として日本人に多い変異はexon11のc.1285dupC、exon12のc.1347_1353dupCCACCCT、exon13のc.1533_1536delGATGであったが、本年度の解析では本邦初の変異としてexon11のc.1252delC、exon14のc.1665_1666ins31bp、exon6~9にかけてのゲノム欠失を各1例ずつ確認した。 BHDS症例の気胸手術時に切除される肺組織の一部から11例、原発性肺癌により肺葉切除術を受ける症例の非癌部肺組織の一部から9例(コントロール)、肺線維芽細胞を培養し、増殖能、遊走能とゲル収縮能を検討した。その結果、増殖能はBHD症例とコントロールで差はなかったが、コントロールに比べBHDS線維芽細胞の遊走能は有意に低下していた。BHDS症例肺線維芽細胞におけるFLCNの発現を検討したところ、リアルタイムPCR法による遺伝子発現解析ではコントロールとの間に有意差を認めなかったが、ウエスタンブロット法によりFLCN蛋白量を検討した結果ではコントロールに比べ有意に減少していた。一方、TGF-β、Fibronectin1、COL1A2などの細胞遊走能や接着に関与する遺伝子についてBHDS肺線維芽細胞で有意な発現量の低下を認め、さらにTGF-β、Fibronectinについては培養上清中の蛋白量の減少も確認できた。 ヒト胎児肺線維芽細胞株HLF-1を用いshRNAによるFLCN遺伝子ノックダウンを行った結果、増殖能には影響はなかったが遊走能が有意に低下した。一方、HLF-1に野生型FLCNを過剰発現させると遊走能が亢進したが、変異型FLCNを過剰発現させても変化はなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子検査の検体は全国から定期的に寄せられており、診断症例数を順調に増やすことができた。 また本年度は、BHDS症例の肺線維芽細胞と肺癌患者の非癌部肺線維芽細胞を用いた増殖能、遊走能とゲル収縮能の比較検討や、細胞遊走能や接着に関与する遺伝子の発現量測定など、新しい試みも行う事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
BHDS患者肺線維芽細胞、shRNAによりFLCN遺伝子をノックダウンした肺線維芽細胞、変異型FLCN遺伝子を過剰発現させた肺線維芽細胞らについて遺伝子発現プロファイルを網羅的に解析する。 24年度に線維芽細胞の増殖に関わるTGFβシグナルに関連のあるサイトカイン(TGFβ1&2、TGFβ receptor、inhibin βA chain、SMAD3など)や細胞外基質タンパク質(collagen、elastin、fibronectinなど)をリアルタイムPCR法で検討し、BHDS患者肺線維芽細胞と対照肺線維芽細胞ではそれら分子の発現がやや異なる傾向を認めた。今後は、FLCN遺伝子発現が影響する他の分子を広く同定する目的で、発現解析用マイクロアレイにより遺伝子発現プロファイルを明らかにする。 日本人BHDS症例で高頻度に検出される4種類の変異型FLCN遺伝子(exon7のc.769_771delTCC、exon11のc.1285dupC、exon12のc.1347_1353dupCCACCCT、exon13のc.1533_1536delGATGの4種類)をクローニングし、コントロール肺線維芽細胞あるいはHFL-1に強制発現させ細胞機能への影響を検討する。変異型FLCN遺伝子を発現させた対照肺線維芽細胞あるいはHFL-1の機能(遊走、ゲル収縮能、増殖能)を検討し、野生型FLCN遺伝子を対照として過剰発現させたHFL-1の細胞機能と比較検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
BHD症候群患者のFLCN遺伝子診断は本年度も継続して行うため、PCR、DHPLC、DNAシーケンス、リアルタイムPCRなど診断に必要な一連の試薬を購入する(80万程度)。 FLCN遺伝子発現が影響する分子を網羅的に同定するため、アフィメトリクス社よりヒト遺伝子発現解析用マイクロアレイ及び試薬セットを購入する。ある程度統計的な解析を行うためにはBHDS患者肺線維芽細胞、shRNAによりFLCN遺伝子をノックダウンした肺線維芽細胞らについてそれぞれ5~10例程度は実施する必要があると考えており、100万円程度の試薬代を見込んでいる。 その他、細胞培養関連試薬やチップなど消耗品の購入、成果発表のための学会参加や論文投稿などにも研究費を使用したい。
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