2014 Fiscal Year Annual Research Report
腎糸球体疾患におけるオートファジーの意義と分子制御機構の解明
Project/Area Number |
24591200
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
杉山 斉 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (60325090)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | オートファジー / 糸球体上皮細胞 / 尿蛋白 |
Outline of Annual Research Achievements |
オートファジー(Autophagy)は酵母において発見された細胞の生存維持機構の一つである。腎構成細胞や動物実験モデルでの報告は増加しているが、ヒト腎疾患におけるAutophagyの意義については明らかではない。本研究では、ヒト腎組織を電子顕微鏡で評価し腎疾患の進展におけるAutophagyの意義を明らかにした。電子顕微鏡で腎生検組織126例 (MCNS:38例、膜性腎症:32例、IgA腎症:21例、ループス腎炎10例、その他:25例)のPodocyteでのAutophagyを観察し、その頻度を半定量化する事により臨床検査データとの検討を行った。その結果、年齢に伴いPodocyteのAutophagyの増加が見られた (p = 0.0049)。MCNSにおいては足突起融合率 (r = -0.477、p = 0.002)、尿蛋白 (r = 0.410、p = 0.013)と有意な相関が認められた。疾患別でみると、膜性腎症や MCNSではIgA腎症やループス腎炎など増殖性疾患に比しAutophagyの出現が有意に増加していた(p = 0.037)。 糖尿病性腎症における検討(4例、平均年齢は48.0歳、eGFR 75.3 mL/min/1.73m2、血清Alb 2.3 g/dL、総コレステロール259 mg/dL、尿蛋白5.0 g/dL)において、糸球体上皮細胞のオートファジーが観察された。糸球体オートファジー数と年齢、尿蛋白、血清Alb値との相関関係の検討では、有意差は認められなかったが年齢と正相関、血清Alb値と負相関の傾向が認められた。オートファジー関連分子の検出においては、糸球体内にLC3陽性所見が見られ、一部は糸球体上皮細胞のマーカーであるWT1染色と一致した。 以上より、腎組織において恒常的にある一定レベルのAutophagyが生じているが、糸球体ではPodocyteに出現頻度が高く、なかでもMCNSではPodocyteのAutophagyと尿蛋白、足突起癒合率が相関している事が示された。PodocyteのAutophagy誘導機構と足突起融合機序の連関を更に解明することが重要であると考えられた。
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