2012 Fiscal Year Research-status Report
プロテアーゼおよび酸化ストレスによるヴィシャスサイクルメカニズムの解明
Project/Area Number |
24591207
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
白石 直樹 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 助教 (40423660)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | セリンプロテアーゼ / 酸化ストレス / 腎障害 |
Research Abstract |
セリンプロテアーゼが腎障害の進展機序にどのようにかかわっているかを調べるために、慢性腎不全モデルである5/6腎摘ラットを作成し、合成セリンプロテアーゼ阻害薬であるcamostat mesilate(CM)を投与しその効果を検討した。CM投与群では、尿蛋白がコントロール群の約1/3に減少し、また血清Cr濃度も有意に低下し、CMの強い腎保護効果が証明された。続いてその機序を検討したところ、CM投与群では、糸球体上皮細胞におけるnephrinやsynaptopodinの減少が抑制され、TGF-β、TNF-αなどの炎症性サイトカインや線維化マーカーの発現も抑制されていた。さらにCM投与群では、NADPH oxidase発現の抑制、活性酸素種の産生抑制、蛋白質過酸化物の産生抑制などが認められ、CMによる抗酸化作用が証明された(Am J Physiol F1126-1135, 2012)。このCMによる抗酸化作用、腎保護効果が、このモデルにおける特殊な効果ではなく、他の腎障害モデルでも認められるかどうかを検討するために、他のモデルでも同様の実験を行ったところ、CM投与による有意な腎保護効果が認められた(投稿中および投稿準備中)。CMは、既に本邦において膵炎の治療薬として保険収載され、広く使用されている。今回種々の腎障害に対し保護効果を示すということが示されたため、腎不全進行抑制薬として近い将来の臨床応用が期待される。さらに現在種々培養細胞を用いて、CMによる酸化ストレス抑制の詳細なメカニズムを検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
慢性腎不全モデルである5/6腎摘ラットを作成し、合成セリンプロテアーゼ阻害薬であるcamostat mesilate(CM)を投与し、セリンプロテアーゼ阻害薬の腎障害進展における役割を検討した。さらにその機序にアプローチし、上皮細胞の障害にセリンプロテアーゼが関与していること、また炎症性サイトカインの産生や線維化にも関与していること、そして腎障害時の酸化ストレス産生にも関与していることを示した。次にその酸化ストレス産生の詳細について検討し、セリンプロテアーゼがNADPH oxidaseの発現に影響することを発見した。また、このプロテアーゼ阻害薬による抗酸化作用、腎保護効果が、このモデルにおける特殊な効果ではなく、他の腎障害モデルでも認められるかどうかを、検討する実験を行い、良好な結果を得ている(投稿中および投稿準備中)。続いて細胞を用いたin vitroでの研究を進めセリンプロテアーゼが酸化ストレスを誘発する詳細なメカニズムを検討しており、研究計画はおおむね順調に進行していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在行っている種々培養細胞を用いたin vitroでのプロテアーゼが酸化ストレスを誘導するメカニズムについて、プロテアーゼ阻害薬のみならず、SiRNAによる個別蛋白のノックダウンなどの方法を利用して検討をさらに進める。ここで得られた知見をもとに、in vivo SiRNAシステムを用いて、各種動物モデルにおけるin vivoでの個別のセリンプロテアーゼノックダウンの影響を検討し、またプロスタシン過剰発現マウスおよびプロスタシン臓器特異的ノックアウトマウス、プラスミノーゲンノックアウトマウスなどのプロテアーゼ関連遺伝子組み換えマウスなどにおける腎障害進展機序について検討する。さらに、プロテアーゼ阻害薬と抗酸化薬併用投与や、既存の腎保護薬であるアンギオテンシン変換酵素阻害薬であるACE-Iやアンギオテンシン2受容体阻害薬などとの併用による組織障害への効果の検討およびその効果的投与方法などについても検討し、実際の臨床応用につなげていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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Research Products
(6 results)