2014 Fiscal Year Research-status Report
低出生体重個体における腎症発症機序の解明:特にミトコンドリアの関与について
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24591222
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Research Institution | Clinical research Center, Chiba-East National Hospital, National Hospital Organization |
Principal Investigator |
今澤 俊之 独立行政法人国立病院機構(千葉東病院臨床研究センター), その他部局等, その他 (80348276)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Mitochondria |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は低出生体重個体ラットの腎皮質の定量的プロテオーム解析を行い、低出生体重個体においてはミトコンドリア・エネルギー産生機能が生来低下していることを明らかにし、その後の成長過程で巣状分節状糸球体硬化症が発症することを突き止めました(論文投稿中)。 また、臨床症例をもとにミトコンドリア機能障害がポドサイト障害に関与している可能性も報告し(Imasawa T et.al. Ren Fail 2014: 36;1461, Imasawa T et.al. Diagn Pathol 2014:9;181)、ポドサイトにおけるミトコンドリア機能の重要性を示唆してきました。ポドサイトの足突起末梢までミトコンドリアネットワークが発達していることもin vivoならびにin vitroで示し(Imasawa T et.al. Int J Biochem Cell Biol 2013 45;2109)、ポドサイト内の精巧なエネルギー産生・運搬機構の破綻がポドサイトの形態・機能障害へと繋がる可能性を考え、更に実験を続けてきました。過去、ポドサイトのエネルギー産生機構、あるいは病態との関連についての検討はほとんどされてこなかったものの、我々は、1.ポドサイトはその分化過程において効率的なエネルギー産生機構を発達させるべく、PGC-1-NRF-1-TFAM系が活性化されミトコンドリア新生が促進されるとともに、酸化的リン酸化経路の各種コンポーネントも順次構築されていく様を明らかにし(現在論文投稿中)、更に、2.高血糖下においては、未分化型の解糖系への依存度を高める非効率的なエネルギー産生機構にシフトすることも明らかにし、そこにはLKB1-AMPK pathwayの低下が関与していることも明らかにしています(論文投稿中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は低出生体重個体における腎症発症機序におけるミトコンドリアの関与に関する研究が到達目標であったが、網羅的な定量的プロテオミクスを行ったことで非常に明快な回答が得られ、ミトコンドリアを中心としたエネルギー代謝系が低出生体重個体で低下していることが明らかになった。さらに糖尿病性腎症でもこれまでミトコンドリアの関与が指摘されてきており、我々は高血糖下での糸球体上皮細胞培養実験にまで発展させ、そのエネルギー代謝機構の変化にまで迫ることができた。さらに最近、我々は糖濃度依存的にclass Iのヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)であるHDAC1が上昇するという結果も得た。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究過程で得られた成果を更に発展させ、高血糖下におけるポドサイトのエネルギー産生機構の障害機序の更なる解明を進め、実際の糖尿病性腎症の治療へと結びつけるべく以下の研究を行っていきたいと考えています。
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Causes of Carryover |
当初予定していた低出生体重個体の腎臓の解析は網羅的な定量的プロテオミクスを行うことで安価に終えることができた。また大量のデータも同時に得ることができその解析に時間がかかった。また過去にミトコンドリア機能に影響を与えるとされてきたAICAR、メトホルミン、オリゴマイシンなどを使用し培養糸球体上皮細胞のミトコンドリア・エネルギー産生機構を変化させた場合の影響を検討する予定であったが、添加する試薬の適正な濃度設定に時間がかかっており本実験に入るまでの時間を要してしまい、本事件への使用を予定していた試薬購入分、論文投稿料などに関し未使用額が発生した。来年度には本実験に入ることができる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本実験に使用予定であった培養関連試薬、酸素消費量測定、ATP産生量測定、ROS産生量の測定、ウェスタンブロット関連試薬、抗体購入等に使用させていただきます。また現在さらに2本の論文を本研究課題から執筆中(本年度も既に2本の欧文誌への掲載済み)であり、その校正・投稿料にも使用させていただきます。残額の全額が適正に本研究課題の推進のため過不足なく使用される見込みです。
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Research Products
(2 results)