2012 Fiscal Year Research-status Report
アストロサイト病変モデルにおける二次性脱髄機序の解明
Project/Area Number |
24591247
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三須 建郎 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00396491)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際研究者交流(オーストリア) |
Research Abstract |
視神経脊髄炎(NMO)はアクアポリン4抗体によって引き起こされる炎症性疾患であるが、その病態メカニズムには液性因子以外にも多くの因子が関連すると推察される。しかし、その病態研究において必須である病態再現するモデルが世界的にも有用なものが未だなく、その作成が求められている。その理由としては、アクアポリン4抗体のエピトープが不明であり、病態形成を起こす抗原が不明なため、再現良く病態を起こすことが難しいことが挙げられる。また、ヒトと動物におけるアクアポリン4は相同性があるものの、構造的にも異なるために、ラット等特定の種ではヒト血清由来免疫グロブリンが生体内で病態を引き起こすことが解っているが、マウスでは起こしにくいことが解っている。 本研究では、Lewisラットを用いてヒト由来免疫グロブリンを幾つかの投与方法により投与し、AQP4抗体依存性のアストロサイト病変やAQP4抗体非依存性のアストロサイトパチーモデルを作成することとし、それらを検証する目的で共同研究を進めている。今回、アクアポリン4抗体をラット脳に注入する基礎実験によって、ラット大脳白質にアクアポリン4の脱落するヒトNMO病変様の病変を呈することを明らかにした。この病変は、ヒトNMOでも観察されている補体や免疫グロブリンが沈着すること、インターロイキン1b(IL-1b)やインターロイキン6(IL-6)等の各種サイトカインによって血液脳関門の破綻を来して病変形成が惹起されることが示され、この種の病変形成において炎症を惹起するサイトカインが重要な役割を担っている可能性が示唆された。これらの基礎実験を経て、今後は病態を起こすモデルにおいて抑制する因子を検索することにより、NMO患者の治療に結び付けられることが大いに望まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
使用する免疫グロブリンは、血漿交換治療を受けた視神経脊髄炎患者から得られた血漿より分離して精製した精製抗体を長期保存していたものを使用していた。この度、保存していたそれらの免疫グロブリンは、予期せぬ長期停電の影響でディープフリーザーが止まり全て失われてしまったこともあり、その後に新たに収集を始めているのが現状であるが、なかなか収集が進まず一部の症例で開始しているのが現状である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、AQP4抗体を用いた中枢神経局所におけるアストロサイト傷害モデルを作成し、アストロサイトの傷害機序ならびに二次性に生じる脱髄機序を明らかにすることである。また、モデルを通して治療に結びつく治験を得ることが肝要である。 AQP4抗体を用いて、髄鞘特異的T細胞を導入した実験的脳脊髄炎(EAE)モデル、脳内局所注入モデルを作成し、NMO様病変の再現性の検証を続けるとともに、各種神経マーカーを用いて組織傷害機序を明らかにする。特に、脱髄を起こす機序についてはアストロサイトからの二次的な栄養障害や炎症の伸展が考えられるが解明されておらず、その点を明らかにする。 また、アクアポリン4抗体が作用することには血液脳関門を破綻する因子が重要であり、基礎実験からも幾つかの候補物質が判明している。それらの物質の病態への促進効果や抑制効果を検証し、治療に結びつけるとともに、新たな病態抑制因子を解明することが臨床的には求められる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は、ウィーン大学神経疾患研究センター神経免疫学の協力を得ており、研究計画には共同研究を遂行する上での打ち合わせのための旅費が含まれる。また、我々の研究室では動物実験を長く手掛けており研究を進めていくうえでは充分な環境が整っており、多くは動物や病理標本作成のための費用、抗体購入費などが主体となる。 一部実験の遅れにより未使用額が発生しているが、今後実験が進むことにより解消する見込みである。
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Research Products
(24 results)