2013 Fiscal Year Research-status Report
脊髄小脳失調症31型のRNA病因説に対するプロテオーム解析
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24591255
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
吉田 邦広 信州大学, 医学部, 教授 (90242693)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小柳 清光 信州大学, 医学部, 教授 (00134958)
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Keywords | 脊髄小脳失調症31型 / プルキンエ細胞 / Golgi装置断片化 / 蛋白-RNA結合 |
Research Abstract |
脊髄小脳失調症31型(SCA31)患者2名の剖検脳の神経病理学的検索から、特徴的なプルキンエ細胞周囲のhalo構造は細胞体からの樹状突起の増生(somatic sprouting)とシナプス顆粒から成ることを確認した。また、haloを有する変性プルキンエ細胞ではhalo構造を有さない変性細胞に比べて、核の変形、およびGolgi装置の断片化が高率に起きていることを見出した。このことは疾患特異的なhalo構造の形成には、細胞の内部環境変化が強く関与することを示唆するものである (Yoshida K, et al. Neuropathology 2014)。 一方、SCA31の遺伝子異常は第16染色体長腕のBEAN/TK2遺伝子イントロン内の(TGGAA)nの挿入とされる。そこで、ビオチンラベルした(UGGAA)8プローブを用いて、Dynabeads M-280によるpull-down法→LC-MS/MS解析により、(UGGAA)8に結合する蛋白の同定を試みた。マウス脳ホモジネートを試料として、同法により候補蛋白を一つ同定した。この候補蛋白はミトコンドリア内膜に局在する蛋白であった。剖検脳標本の電子顕微鏡的な観察では、ミトコンドリアの形態変化も強く見られた。仮に本来、核内に存在する、(UGGAA)nが過剰に伸長したpre-messenger RNAとミトコンドリア局在蛋白の会合が起こるとすれば、その背景に核の高度の変形(核膜の脆弱性)がある可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、予定していたNorth-western blot法によるRNA結合蛋白の同定がうまく行かなかったこと、現在までにpull-down法で得られた候補蛋白がミトコンドリア局在であること、配列上、核酸結合ドメインを有さないこと、候補蛋白の変異によるヒトの病態が小脳失調症とはかけ離れていること、などから現時点では真に過剰伸長した(UGGAA)nを有するpre-messenger RNAと結合する蛋白が取れていない可能性があることが大きな理由である。また、SCA31患者の凍結脳が入手できないこと、およびパラフィン切片を用いた免疫染色がうまく行かないこと、から上記の候補蛋白のヒト脳内での増減や局在についても検証できていない。すわなち、上記の候補蛋白はあくまで人為的な実験条件下で得られたものであり、本当にSCA31患者脳内での病態を反映しているか、が検証できていない。 以上から上記区分と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
【現在までの達成度】に記載したように、現在の方法論(マウス脳を試料とし、ビオチンラベルした(UGGAA)8プローブを用いてNorth-western法やpull-down法によりRNA結合蛋白を同定する)では限界がある可能性を考えている。さらに、SCA31患者および健常対照者の末梢血白血球由来のRNAを用いたマイクロアレイ解析も行ったが、得られた結果が脳内の病態をどこまで反映するか、という課題がある。 やはり、SCA31の病態を解明するためには、すでに入手できた患者脳のパラフィン切片を病理形態的、免疫組織化学的な面から詳細に検討し、蛋白化学的な病態変化のヒントを得ることが重要ではないかと考えている。今後は、SCA31患者脳の病理形態的、免疫組織化学的アプローチを主体に研究を進める方向で軌道修正する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
19,391円残額が余った理由は、当初計画したよりも安価な試薬代で研究を遂行できたため。 上記の残額と平成26年度経費を合わせ、今後の研究の推進方策に従って新たな試薬購入費に充てる。具体的には、患者のパラフィン脳組織切片を用いた免疫組織化学およびfluorescence in situ hybridization (FISH)を行うための試薬の購入に充てる。
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Research Products
(3 results)