2013 Fiscal Year Research-status Report
動脈硬化危険因子による脳小血管内皮細胞の接着機構障害とその機序の解明
Project/Area Number |
24591260
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
八木田 佳樹 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20403066)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北川 一夫 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70301257)
大山 直紀 大阪大学, 医学部附属病院, その他 (90622895)
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Keywords | 血管内皮細胞 / 血液脳関門 |
Research Abstract |
脳小血管内皮細胞の接着機構に対する脳虚血の影響を検討するために、VE-cadherin-catenin系とIQGAP1の相互作用に注目した。虚血24時間後のVE-cadherinの発現量は変化しないが、IQGAP1とβ-cateninの相互作用が増強し、VE-cadherinを介した接着活性は抑制されていることが示唆された。血管内皮細胞においてVE-cadherinは虚血72時間以降、その発現が亢進しており、小血管のリモデリングへの関与が示唆された。VE-cadherinによる接着活性抑制から始まる一連の脳小血管内皮細胞の動態に関与する分子としてVEGFが想定された。Real-time PCRによる検討から、脳虚血24時間後のVEGF、IQGAP1、VE-cadherinの遺伝子発現がいずれも亢進していることが示された。またVEGFについてはいくつかのスプライシングバリアントが報告され、各々機能が異なることが想定されている。これらの分子のmRNAを区別して検出しうるPCRにより、脳ではVEGF165が他のものより優位に発現しており、脳虚血後もその発現比率には変化がないことが示された。VEGF165を脳室内投与すると、IQGAP1の発現が亢進することから、虚血脳においてはVEGF-IQGAP1-VE-cadherin-cateninシグナルにより血管内皮細胞間接着が抑制され、虚血早期の時相では血管透過性亢進に関与し、その後の時相では血管リモデリングにつながることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血管内皮細胞の細胞間接着に脳虚血や動脈硬化危険因子がどのような影響を与えるか検討することが本研究の目的である。平成25年度はVE-cadherinとIQGAP1の相互作用の上流にVEGFが機能していることを想定し、検討を行ってきた。これに関しては上記の結果を得ている。血管周皮細胞の関与を検討する目的で樹立した培養系を用いた検討では、想定していた結果を得ることが現時点ではできていない。その代り、血管透過性亢進が問題となる糖尿病モデルマウスにおいて、大脳皮質におけるTNFαシグナルが障害されていることを見出し、それが細胞接着機構に与える影響を検討中である。以上のことから、研究計画に若干の見直しを必要とするものの、来年度への研究に大きな問題なく進むことが可能であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
糖尿病は主要な動脈硬化危険因子の一つである。糖尿病では血管透過性の亢進が問題となるが、大脳皮質における血管内皮細胞間接着機構への影響についてはあまり検討されていない。2型糖尿病では高血糖以外に内臓脂肪由来のサイトカインなどによる、血管の慢性炎症が問題となる。その中でも代表的なサイトカインの一つであるTNFα発現量が大脳皮質においても亢進していることを見出した。TNFαは細胞接着活性を抑制する作用が報告されている。現在、大脳皮質におけるTNFα発現細胞の同定、TNF受容体の発現、機能について検討している。今後はIQGAP1-VE-cadherin-catenin系に対してどのような相互作用があるか検討していく予定である。
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