2012 Fiscal Year Research-status Report
樹状細胞を介したHTLV-1感染モデルの構築と薬剤スクリーニングへの応用
Project/Area Number |
24591280
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
竹之内 徳博 関西医科大学, 医学部, 准教授 (20533235)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 正和 関西医科大学, 医学部, 助教 (20454613)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | HTLV-1 / 樹状細胞 / 感染モデル |
Research Abstract |
平成24年度はHTLV-1感染ヒト樹状細胞の作製と、それをリザーバーとした、ヒトT細胞へのHTLV-1感染を行う系の樹立が目的であった。当初の計画では、NOG-SCIDマウスへヒト臍帯血由来造血幹細胞を移入し、ヒト化マウスを作製した後に、HTLV-1感染細胞株(MT-2)を接種することで、マウス体内の血球細胞へHTLV-1を感染させ、そのマウスよりHTLV-1感染ヒト樹状細胞を分離する予定であった。しかしながら、学舎移転のため動物実験施設の使用が予定外に困難となったため、既得の試料による代替手段を用いて系の樹立を試みた。具体的には、ヒト臍帯血より単球を分離し、サイトカインを用いることで樹状細胞へ分化させ、MT-2との共培養でHTLV-1の感染を試みた。結果として、HTLV-1感染ヒト樹状細胞は作製出来たが、共培養後にMT-2と感染樹状細胞の分離が困難であることが判明した。MT-2が混入すると、実験の次のステップである、T細胞への感染実験に影響がでるため、現在はMT-2に変わる感染細胞の作製・使用を検討している。一方で、分化された樹状細胞へ、HTLV-1 molecular cloneをトランスフェクションし感染樹状細胞を作製する系も試みた。しかしながら、感染効率が予想外に低く、T細胞への感染実験へ用いるには困難が予想されたため、現在はGFPプラスミドを使用しトランスフェクション効率を検証しつつ系の最適化を行っている。また、樹状細胞のHTLV-1感染率が低い場合でも、ウイルス感染能が測定出来る新たな系を樹立中である。具体的には当初の計画では、ウイルス感染能はT細胞のHTLV-1プロウイルス量の測定にて評価する予定であったが、HTLV-1の感染によってルシフェラーゼ活性を発現するT細胞株が作製出来たため、現在はこれを用いたウイルス感染能の評価の追加を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
代替手段により、研究目的の第一段階であるHTLV-1感染ヒト樹状細胞の作製については、ウイルス感染率はやや低いもののおおむね達成している。第二段階であるHTLV-1感染ヒト樹状細胞からヒトT細胞へのHTLV-1感染は、現時点では充分には達成できていない。樹状細胞のHTLV-1感染率が低いことが問題と思われるため、感染率の改善或いはより鋭敏にT細胞へのHTLV-1感染を評価できる新たな系の樹立が必要と判断している。感染率の改善については、現在最適化を図っているが、当初期待したレベルの感染率までは達していない。一方で、より鋭敏にT細胞へのHTLV-1の感染を評価できる系については、HTLV-1の感染によってルシフェラーゼ活性を発現するT細胞株を用いてほぼ樹立出来ている。この系でも今後行う予定である、薬剤による感染阻止実験への応用は可能であり、平成24年度の目標の第二段階である、HTLV-1感染ヒト樹状細胞からヒトT細胞へのHTLV-1感染の系の代用は可能と考えている。しかしながら、よりヒト生体に近い状態を再現した方が感染モデルとしては有用なので、樹状細胞のHTLV-1感染率を高め、プライマリーなヒトT細胞への感染系の作製は継続する必要があると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
先ず、当初の予定であった、NOG-SCIDマウスへヒト臍帯血由来造血幹細胞を移入し、ヒト化マウスを作製した後に、HTLV-1感染細胞株(MT-2)を接種することでHTLV-1を感染させ、そのマウス脾臓よりHTLV-1感染ヒト樹状細胞を分離する。MT-2は感染能が強い一方で欠損ウイルスを多く含むため、欠損ウイルスに感染した樹状細胞が作製される場合もある。この場合は後のT細胞への感染実験へ影響がでることが予想されるため、感染能が低くても欠損ウイルスを含まないHTLV-1感染細胞株の使用を検討する。欠損ウイルスについてはPCRにて鑑別可能である。獲得した樹状細胞のHTLV-1感染率やウイルス感染能を評価し、代替法(平成24年度の方法)で得た樹状細胞のそれらと比較を行う。仮に、感染マウスから充分なHTLV-1感染率とウイルス感染能をもつ樹状細胞が回収出来た場合は、以後は薬剤による感染阻止実験への応用を図る。代替法で得た樹状細胞と大差ないレベルであった場合は、感染マウスへ抗CD8抗体を投与するなどして感染がより起こり易くし、HTLV-1感染率の改善を図る。HTLV-1感染率の改善を図っても、代替法で得た樹状細胞よりも優位に低いレベルであった場合は、代替法を主軸にし感染阻止実験への応用を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず、マウス購入・飼料・飼育費等に95万円(NOG-SCIDマウス 20匹=\255,885 X 3回、マウス飼料、床敷およびケージオートクレーブ等飼育管理費に\30,000/月 x 12 = \360,000)を使用する。マウスへ移入するヒト造血幹細胞のヒト臍帯血からの分離のためと、ヒト化マウスよりのヒトCD4陽性T細胞及びヒト樹状細胞の分離のために、マイクロビーズ試薬(MACSカラム試薬)を購入する。HTLV-1感染の評価のためのプロウイルス定量用にPrimer及び蛍光標識Probe(TaqManプローブ)、及びPCR用試薬(NTPs, Taq polymerase, PCR Buffer Mix)を購入する。また、FACS解析用に抗ヒト及び抗マウス血球表面マーカー抗体(T細胞、樹状細胞用)を購入する。さらに、HTLV-1感染ヒト化マウスの病態評価のための血清サイトカイン濃度測定のために、マルチプレックスアッセイ定量解析用試薬を購入する予定である。その他、学会発表(国内旅費)に10万円、論文校正・投稿料として10万円を要する。 HTLV-1感染効率の改善が図られた後は、薬剤による感染阻止実験を行うので、必要に応じて感染阻止実験用の薬剤としてステロイド、IFNα、ビタミンC、カテキン、ラクトフェリン、ブロッキング抗体等を購入する。
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Research Products
(7 results)