2012 Fiscal Year Research-status Report
機能的結合fMRIによるてんかん病態診断システムの開発
Project/Area Number |
24591303
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
金桶 吉起 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (20280589)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堂西 倫弘 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (70326354)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | てんかん / 脳機能 / 機能的結合 |
Research Abstract |
初年度(平成24年度)は、健常成人(20歳から30歳まで)の脳機能的結合データの収集に力を入れ、男女100名ずつのデータを集めることができた。このデータを解析して正常脳での機能的結合の状態、正常なハブ領域の位置およびハブ化の程度を数値化するべく、現在鋭意検討中である。てんかん患者のデータは、和歌山県立医科大学脳神経外科学講座との共同研究を開始し、現在10例ほどのデータが集まっている。 データ解析手法に関しては、新しい手法を開発し発表した(PLoS One 2012)。脳の部位間の機能的結合は、2つの部位の相互相関係数で評価する。一般に2つのデータ間の相互相関は、それぞれのデータが無作為に抽出されたことを前提に評価することができる。しかし、fMRIの時系列データはある時点の値は常に以前のデータとなにがしかの関係を持っており、無作為に抽出されたデータではありえない。ある時点の値がどの程度以前のデータと関係があるかは自己相関関数で評価することが可能である。これによって時系列データの何パーセントが独立した次数であるのかを推定して相互相関係数の有意性を検討する必要がある。これまでの機能的結合の研究ではこの点を無視して行われてきた。我々はより統計学的により厳密な機能的結合の評価方法を提案した。今後その解析手法を用いて、てんかん患者特有の機能的結合異常を探索していく予定である。 てんかん患者では、焦点が脳病変や他の手法(PET、SPECT、脳波など)で疑われる部位周辺に機能的結合のハブが存在する可能性について、学会報告した。ハブとはグラフ理論に基づく概念で、ここではある部位の他の全ての脳部位との機能的結合の平均値が他の部位の平均値より有意に高いとき、その部位をハブという。てんかん焦点がハブであるとすると、その部位の異常な活動はただちに他の多くの部位に伝播することを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
てんかん患者のデータは10名程度に留まっているが、深部脳波や手術の前後での貴重なデータもあり、当研究の発展に大いに寄与するものばかりである。今後さらに他科との共同研究も模索しており、患者データの収集はさらに加速するものと期待される。一方で、健常成人のデータは当初の予定20名をはるかに超え、現在200名程度のデータが集められている。てんかん患者はヒトそれぞれで多様な異常性がみられる可能性があり、患者群と健常群の比較では明瞭な機能的異常が浮き彫りにならないことが考えられるため、健常データは年齢ごとに多くのデータが必要となる。現在は20代の若い成人を中心にデータ収集したが、今後は30代、40代以降のデータ収集も随時行う予定である。 これまでの個々のてんかん患者での解析で、脳病変付近がてんかん焦点である可能性が高い患者では、病変周囲にハブが存在し、そのハブは視床や後部帯状回と強い機能的結合を示すことが示唆された。この機能的結合が健常成人と比較してどの程度高い値かの検討はまだ行われておらず、今後の課題のひとつである。またてんかん焦点付近に見つかるハブ領域は、健常成人のハブ値と比較して有意に高いことが多いことが分かったが、正常範囲のものもあり、ハブ値の値のみでてんかん発症に関わるすべてのハブを識別することは難しいことがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
健常成人のデータは今後も順調に増やしていく予定である。とくに高年齢のデータ収集を手掛ける。このために新聞などでの有償ボランティアの広告も検討する。 てんかん患者のデータは、和歌山県立医科大学の脳神経外科との共同研究が始まり、順調にデータ収集が続けられる。さらに小児科、精神科などとも共同研究を立ち上げることにより、多くの患者データを収集する予定である。 解析手法に関しては、患者群ではなく個々のてんかん患者についてそれぞれ特有の機能的結合の異常をとらえることでのみ臨床で役立つので、これをめざす。そのためには詳細な正常グループの機能的結合の個人差を解析する必要がある。ハブ領域、ハブの値、特定の部位間の機能的結合などの個人差を数値化していく予定である。 また機能的結合を利用した研究は現在非常に多く、他領域の研究成果も積極的に取り入れていく必要がある。国際学会に積極的に出席し論文になる前の情報収集を行っていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
健常成人のデータ収集を今後も続けていくので、一人当たり謝金6千円とMRI使用料6千円、計1万2千円で、60名ほどのデータ収集を目指す。 また、国内およびイギリスで開催される国際生理学学会に出席し研究途中経過を発表する予定である。これらの経費一人当たり30万円を研究代表者と分担者の二人分を計上する。
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