2013 Fiscal Year Research-status Report
片側嗅内野傷害後の自然回復に関わる、嗅内野ー海馬体再神経支配の形態学的解析
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24591305
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
本多 祥子 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (40287313)
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Keywords | 海馬の神経線維連絡 |
Research Abstract |
平成25年度は、前年度に引き続き正常ラット嗅内野と海馬体の間をつなぐ神経線維連絡を形態学的手法で詳細に調べる研究を遂行し、国内学会で成果を報告した。現在原著論文を投稿準備中である。具体的には、海馬体から海馬周辺皮質および皮質下領域への情報の出口とされる海馬台領域に注目し、様々な海馬周辺皮質の各部位に逆行性トレーサーを打ち分け、海馬台内部で逆行性標識された細胞体の分布様式を調べた。海馬台錐体細胞層には、脳梁膨大後皮質、前部帯状皮質、前、傍海馬台、内側、外側嗅内野などの皮質領域へ情報を送る皮質投射ニューロンが存在するが、それらの大半は海馬台中間層の遠位側(CA1から遠い側)に分布し、しかも中隔―側頭葉軸および遠位―近位軸方向に各皮質との部位対応関係が存在することが分かった。海馬台の最深部には皮質投射細胞が非常に少なく、ここは主に視床前核に投射する細胞群が主体であることが分かった。上記の結果は本研究を遂行する上での基盤的知識となる。 本研究においてはまず過去に報告された嗅内野傷害後の歯状回再支配現象を再現性高くできるだけ明瞭に観察する必要があり、当初傷害対象としていた嗅内野II層のみならずIII層、V層も含め多数の層を横断する形で傷害を作成する必要があることが分かった。このことを踏まえ、今後はまず嗅内野のやや大きめの範囲にイボテン酸注入を行うことで歯状回における軸索再支配現象を確認した上で、各層に注入を限局させていく方針とした。同時に、正常ラットにおける海馬―皮質間線維連絡の解析も引き続き遂行する方針である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、前年度に引き続きトレーサー注入による正常ラットの嗅内野―海馬体間線維連絡の解析を行いながら、同時に海馬台皮質投射細胞分布についても新知見を得て成果の一部を発表することができた。昨年度明らかにした、単一嗅内野ニューロンの歯状回への軸索投射様式については、さらに例数を増やした上で学会、論文発表を準備中である。片側嗅内野傷害実験については、傷害作成に必要なイボテン酸が昨年度一時入手困難となっていたが、現在は入手可能となっており、再び実験条件を策定しながらモデル動物の作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までと同様、正常ラットの嗅内野―海馬投射線維連絡についてのデータを充分に集めて解析し、得られた神経結合関係の全貌をまとめて発表していく。さらに当初の計画通り、片側嗅内野傷害モデルにおけるウイルスおよび通常トレーサーの注入実験を行い、歯状回再支配を起こしていると思われるニューロンの軸索形態データを数多く取得する。まずは嗅内野局所にイボテン酸を注入するよりも、広範囲に確実に注入することにより大きめの傷害を誘発しその後の回復期間を充分おくことで、神経再支配現象がより高確率に起こる状況を作成することに重点を置く。今年度は最終年度のため、できる限り効率良く実験例数を増やしていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
先年度に一時製造販売中断されていた試薬があったため充分な実験例数が得られず、このため結果的に、実験に必要な物品、薬品類も当初の購入計画における必要量を下回った。従って次年度使用額が生じたが、この試薬が入手可能となり今後実験例数の確保に見通しがついたため最終年度で全額使用したい。 実験に必要なガラス器具類、薬品類の継続的な追加購入および、トレーサーとして必須のCTB(コレラトキシンBサブユニット)やBDA(ビオチンデキストランアミン)の一括購入を計画している。
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Research Products
(2 results)