2012 Fiscal Year Research-status Report
2型糖尿病における運動による炎症性シグナル改善機序の解明
Project/Area Number |
24591314
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤城 緑 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (50420211)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 糖尿病 |
Research Abstract |
糖尿病性血管合併症の発症・進展機序には、慢性的な高血糖のみならず、間歇的な血糖上昇による、酸化ストレスや軽度の慢性炎症を含む多くの因子が関与していることが明らかとなってきている。最近、適度な運動習慣は、抗酸化作用や抗炎症作用を介して、糖尿病性血管合併症の進展抑制に大きく貢献することが証明されたが、臨床の現場では、様々な理由で運動を実行できない場合が多い。2型糖尿病が既に若年者にまで蔓延していることを考慮すれば、運動療法を模倣できる特効薬の開発は急務である。 我々はこれまでに、3種のMAPキナーゼがインスリン抵抗性に与える影響について詳細に検討し報告してきた(Mol Endocrinol. 2003;17(3):487-97, J Biol Chem. 2001;276(23) :19800-6)。運動によって、これら3種のMAPキナーゼ蛋白との結合が著明に変化する重要な蛋白を速やかに発見し、新規糖尿病治療薬開発に発展させたいと考えている。 平成24年度は、3種のMAPキナーゼ蛋白のそれぞれにmyc tag、TEVプロテアーゼによる切断配列、flag tagを順番に取り付けた蛋白をコードするcDNAを、PCRを用いて作成した。次にこれらのtag付き蛋白を発現するアデノウイルスを作成し、293細胞を用いて大量に増幅した後に濃縮精製した。精製したアデノウイルスを、マウスのヒラメ筋に直接注射する手法(Am J Physiol Endocrinol Metab. 2002; 282(6):E1239-44)により、各蛋白を骨格筋に過剰発現させることで、免疫沈降法を利用してこれらの蛋白に結合している蛋白質を極めて高純度に調整することが可能となるが、骨格筋での十分な過剰発現を得る為に、現在試行錯誤中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2種類の独立したエピトープタグ(myc:MEQKLISEEDとFLAG:MDYKDDDDKD)を、TEVプロテアーゼ切断配列(ENLYFQG)とスペーサー配列を用いて直列に連結させた構造を持つ特殊なタグを用いることによって、目的の蛋白に結合している蛋白質を極めて高純度に調整することが可能となるが、我々はこの手法を用いて、IRS-1に結合しインスリン感受性を増強させるPin1を発見し、報告した実績があり(J Biol Chem. 2011;286(23):20812-22, J Biol Chem. 2010;285(43):33018-27)、この手法の遂行には自信を持っている。今回も、tag付きcDNAコンストラクト作成からアデノウイルス作成・増幅・精製までは順調に進展していた。 精製後のアデノウイルスを、過去に我々が用いた手法で(Am J Physiol Endocrinol Metab. 2002; 282(6):E1239-44)、マウスのヒラメ筋に直接注射することで、目的の蛋白質を骨格筋に過剰発現させようとしているが、本コンストラクトは十分量の過剰発現が得られず、その後の進展が遅延している。 アデノウイルスの力価が低い可能性があり、アデノウイルス増幅から再度やり直しが必要と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後まずは、作成済みのアデノウイルスの増幅・精製を早急にやり直し、ウイルス力価を上げて再度マウスのヒラメ筋に目的の蛋白質の骨格筋への過剰発現を成功させる。 その後は予定通り、アデノウイルスを直接注射することで骨格筋に過剰発現させたマウスを運動させる群(Am J Physiol Endocrinol Metab. 2008 ;295(3):E586-94)とさせない群に分け、それぞれの筋肉を採取後に可溶化させる。付加した特殊なtagを用いた免疫沈降法で結合蛋白を高純度に調整し、得られたサンプルをLC/MSにより解析することにより、bait蛋白に結合する蛋白質の網羅的解析を行い、最も有意な蛋白を同定する。 同定蛋白に対する特異抗体作成後に内因性結合を確認し、糖尿病モデル動物での同蛋白の発現や活性の変化の解析を行う。アデノウイルスを用いた各種組織由来培養細胞への過剰発現による検討を行うとともに、siRNAを用いた発現抑制による同蛋白の作用の確認を行う。次に、同蛋白遺伝子を臓器特異的に導入したtransgenicマウスを作製し、同蛋白の各臓器での役割の重要性を明らかにする。さらに行動解析装置や酸素消費測定装置を用いて、遺伝子導入効果を運動量・熱産生・呼吸商・酸素消費量につき比較する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
作成済みのアデノウイルスを増幅・精製する為に、培養液・培養器具・アデノウイルス精製用の試薬費用として合計250,000円、マウスヒラメ筋への過剰発現確認の為にマウス購入費用として200,000円必要である。筋肉への過剰発現確認後、いよいよマウスを運動させる為のマウス用運動装置購入費用として450,000円が必要であり、マウス運動予備実験が順調に行けば、その後は、予定通り次年度の計画を遂行していく為に、試薬250,000円、制限酵素100,000円、プライマー類100,000円、培養液100,000円、培養器具100,000円、ウサギ・マウス400,000円の使用を予定している。
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[Journal Article] Integrator complex plays an essential role in adipose differentiation.2013
Author(s)
Otani Y, Nakatsu Y, Sakoda H, Fukushima T, Fujishiro M, Kushiyama A, Okubo H, Tsuchiya Y, Ohno H, Takahashi S, Nishimura F, Kamata H, Katagiri H, Asano T.
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Journal Title
Biochem Biophys Res Commun
Volume: 434
Pages: 197-202.
DOI
Peer Reviewed
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