2013 Fiscal Year Research-status Report
2型糖尿病における運動による炎症性シグナル改善機序の解明
Project/Area Number |
24591314
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤城 緑 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (50420211)
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Keywords | 糖尿病 |
Research Abstract |
糖尿病性血管合併症の発症・進展機序には、慢性的な高血糖のみならず、間歇的な血糖上昇による、酸化ストレスや軽度の慢性炎症を含む多くの因子が関与していることが明らかとなってきている。最近、適度な運動習慣は、抗酸化作用や抗炎症作用を介して、糖尿病性血管合併症の進展抑制に大きく貢献することが証明されたが、臨床の現場では、様々な理由で運動を実行できない場合が多い。2型糖尿病が既に若年者にまで蔓延していることを考慮すれば、運動療法を模倣できる特効薬の開発は急務である。 我々はこれまでに、3種のMAPキナーゼがインスリン抵抗性に与える影響について詳細に検討し報告してきた(Mol Endocrinol. 2003;17(3):487-97, J Biol Chem. 2001;276(23) :19800-6)。運動によってこれらの蛋白との結合が著明に変化する重要な蛋白を速やかに発見し、新規糖尿病治療薬開発に発展させたいと考えている。 平成24年度には、3種のMAPキナーゼ蛋白のそれぞれに、myc tag、TEVプロテアーゼによる切断配列、flag tagを順番に取り付けた蛋白をコードするcDNAを作成し、これらのtag付き蛋白を発現するアデノウイルスを作成した。マウスのヒラメ筋にアデノウイルスを直接注射する手法(Am J Physiol Endocrinol Metab. 2002; 282(6):E1239-44)を試みたが、骨格筋での十分な過剰発現を確認できなかった。 この為平成25年度は、力価の高いアデノウイルスを再度作成し同様の手法を試みたところ、わずかながら発現が見られたが、十分な過剰発現となっておらず、培養筋細胞への過剰発現実験を試みるなど工夫を重ねている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2種類の独立したエピトープタグ(myc:MEQKLISEEDとFLAG:MDYKDDDDKD)を、TEVプロテアーゼ切断配列(ENLYFQG)とスペーサー配列を用いて直列に連結させた構造を持つ特殊なタグを採用する。このタグを用いることによって、目的の蛋白に結合している蛋白質を極めて高純度に調整することが可能となる。実際我々はこの手法を用いて、IRS-1に結合しインスリン感受性を増強させるPin1を発見し、報告した実績があり(J Biol Chem. 2011;286(23):20812-22, J Biol Chem. 2010;285(43):33018-27)、この手法の遂行には自信を持っている。今回も、tag付きcDNAコンストラクト作成から同蛋白を発現するアデノウイルスの作成・増幅・濃縮・精製は順調に進展している。平成25年度にはより高力価のアデノウイスルを作成し、増幅・濃縮・精製をやり直したところ、わずかながら発現が見られたが、十分な過剰発現となっていない。上述の特殊なtagが付いた3種のMAPキナーゼ蛋白を培養筋細胞に過剰発現させる予備実験を行ったところ、十分な発現を確認できており、pull down実験でも示唆に富む結果を得ることができている。引き続き、マウスヒラメ筋へのアデノウイルスの直接注射を確実にさせる手技の獲得を急ぐとともに、培養筋細胞に同蛋白を過剰発現させた場合に起こる変化も確認する必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、マウスヒラメ筋への目的の蛋白の骨格筋への過剰発現を実現させる。その後は計画通り、運動させた群(Am J Physiol Endocrinol Metab. 2008 ;295(3):E586-94)とさせない群に分け、それぞれの筋肉を採取後に可溶化し、付加した特殊なtagを用いた免疫沈降法で結合蛋白を高純度に調整する。得られたサンプルをLC/MSにより解析することにより、bait蛋白に結合する蛋白質の網羅的解析を行い、最も有意な蛋白を同定する。同定蛋白に対する特異抗体を作成後に筋肉以外の臓器での発現と、MAPKとの内因性結合を免疫沈降法を用いて確認する。糖尿病モデル動物での同蛋白の発現や活性の変化の解析を行い、さらに運動により発現量やMAPK活性がどのように変化するかを詳細に検討する。また、トランスフェクション法を用いた遺伝子導入法により各種組織由来培養細胞に同蛋白を過剰発現させた場合と、siRNAを用いた遺伝子発現抑制法により同蛋白の発現を抑制した場合の、インスリン作用や炎症への影響を詳細に検討する。 次に、同蛋白の遺伝子を各種インスリン作用臓器(肝臓・筋肉・脂肪)に特異的に過剰発現させたtransgenicマウスを作製し、高脂肪食負荷+運動負荷を与えた場合の同蛋白の各臓器での役割の重要性を明らかにする。さらに、動物用行動解析装置を使用し、各群で運動量を詳細に比較・検討するとともに、酸素消費量測定装置(OxyMax)を用いて、遺伝子導入の効果を熱産生・呼吸商・酸素消費量について比較する。運動負荷による変化についても検討していく。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Detection of novel visible-light region absorbance peaks in the urine after alkalization in patients with alkaptonuria.2014
Author(s)
Tokuhara Y, Shukuya K, Tanaka M, Mouri M, Ohkawa R, Fujishiro M, Takahashi T, Okubo S, Yokota H, Kurano M, Ikeda H, Yamaguchi S, Inagaki S, Ishige-Wada M, Usui H, Yatomi Y, Shimosawa T.
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Journal Title
PLoS One
Volume: 9
Pages: e86606
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Par14 protein associates with insulin receptor substrate 1 (IRS-1), thereby enhancing insulin-induced IRS-1 phosphorylation and metabolic actions.2013
Author(s)
Zhang J, Nakatsu Y, Shinjo T, Guo Y, Sakoda H, Yamamotoya T, Otani Y, Okubo H, Kushiyama A, Fujishiro M, Fukushima T, Tsuchiya Y, Kamata H, Iwashita M, Nishimura F, Katagiri H, Takahashi S, Kurihara H, Uchida T, Asano T.
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Journal Title
J Biol Chem
Volume: 288
Pages: 20692-701
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Lactobacillus casei strain Shirota protects against nonalcoholic steatohepatitis development in a rodent model.2013
Author(s)
Okubo H, Sakoda H, Kushiyama A, Fujishiro M, Nakatsu Y, Fukushima T, Matsunaga Y, Kamata H, Asahara T, Yoshida Y, Chonan O, Iwashita M, Nishimura F, Asano T.
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Journal Title
Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol
Volume: 305
Pages: G911-8
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Resistin-like molecule β is abundantly expressed in foam cells and is involved in atherosclerosis development.2013
Author(s)
Kushiyama A, Sakoda H, Oue N, Okubo M, Nakatsu Y, Ono H, Fukushima T, Kamata H, Nishimura F, Kikuchi T, Fujishiro M, Nishiyama K, Aburatani H, Kushiyama S, Iizuka M, Taki N, Encinas J, Sentani K, Ogonuki N, Ogura A, Kawazu S, Yasui W, Higashi Y, Kurihara H, Katagiri H, Asano T.
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Journal Title
Arterioscler Thromb Vasc Biol.
Volume: 33
Pages: 1986-93.
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Integrator complex plays an essential role in adipose differentiation.2013
Author(s)
Otani Y, Nakatsu Y, Sakoda H, Fukushima T, Fujishiro M, Kushiyama A, Okubo H, Tsuchiya Y, Ohno H, Takahashi S, Nishimura F, Kamata H, Katagiri H, Asano T.
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Journal Title
Biochem Biophys Res Commun
Volume: 434
Pages: 197-202.
DOI
Peer Reviewed
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