2013 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病の新規時間治療開発に向けた視床下部オレキシンによる体内時計の同調機構の解明
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24591317
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
恒枝 宏史 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (20332661)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹岡 利安 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (00272906)
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Keywords | 糖尿病 / エネルギー・糖代謝異常 / 生物時計 / インスリン抵抗性 |
Research Abstract |
体内時計を基盤とした概日リズムは生体のグルコース恒常性の維持に必須である。本研究では糖代謝リズムの統合機構を解明するため、睡眠・覚醒リズムとエネルギーバランス調節の両者に関わる視床下部オレキシンの役割に着目した。6か月齢のオレキシン欠損(OXKO)マウスでは血糖値の日内リズムの消失と肝インスリン抵抗性の増大が誘発されるので、本年度はこれらの異常の因果関係を検討した。その結果、3か月齢のOXKOマウスでは肝インスリン抵抗性の増大に先行して、血糖値の日内変動の振幅が減少すること、肝臓における時計制御遺伝子(Rev-erbα, RORα)および糖新生律速酵素(Pgc1α, glucose-6-phosphatase)の発現量の日内変動が異常を呈することを認めた。代謝測定システムを用いた検討では、3か月齢のOXKOマウスの摂食、飲水、自発運動、およびエネルギー消費の日周リズムには異常は認められなかった。また血清インスリン、グルカゴンおよびコルチコステロン値にも血糖リズムを破綻させる異常は認められなかった。したがって、視床下部オレキシンは肝糖新生の日内リズムの制御に重要であり、その機構には自律神経系の介在が示唆された。一方、2型糖尿病db/dbマウスは定常的な高血糖を示すが、オレキシンAを覚醒期(暗期)に1日1回連続的に脳室内投与すると血糖値の日内リズムが形成され、明期の血糖値が低下した。休息期(明期)にオレキシンAを連続投与した場合では高血糖の改善効果は限定的であった。このように、オレキシンAによる中枢性の糖代謝調節作用は投与時刻依存的であることが示された。以上より、視床下部オレキシン神経系は睡眠・覚醒リズムに加えて肝糖新生の日内リズムの調節にも関与しており、本機構の破綻は休息期の血糖上昇や肝インスリン抵抗性の増大の誘発要因となる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)交付申請書において、平成25年度以降の研究実施計画に記載した通り、本年度は、「末梢時計の破綻した糖尿病マウスに対するオレキシンの治療効果の時間薬理学的解析」を行った。その結果、研究開始時点で予測した通り、2型糖尿病モデルdb/dbマウスにオレキシンを投与すると抗糖尿病効果が認められ、しかもその効果は投与時刻依存的であることを見出した。またオレキシンの欠損により、まず血糖リズムが消失し、その後肝インスリン抵抗性が生じることを実証した。このように本年度までの研究により、オレキシンが生体リズムに合わせて糖代謝リズムを制御することでインスリン感受性の維持に寄与することを突き止めた。これらの結果は当該助成事業の中核となる成果であり、平成26年度では本年度までの成果をさらに発展させるための解明研究を計画通り実施することが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)交付申請書に記載した通り、平成26年度においては、オレキシンによる交感神経/副交感神経のバランス変換を介する末梢時計の制御機構の解明研究を実施する。そのため、オレキシンの脳室内投与による肝臓での糖産生の変化を指標に、自律神経遮断薬や自律神経切除術などを用いて交感神経と迷走神経の関与を検討し、さらにその過程に末梢組織の細胞内小器官の機能変化が介在する可能性を追究する。これらの検討により、オレキシンによる糖代謝リズム調節と肝インスリン抵抗性防御機構のメカニズムを明らかにできると考えられる。以上のように、今後も、研究開始時点での計画通りに研究を推進していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度においては、交付された直接経費1,600,000円と前年度の繰越金2,363円を合わせた総額1,602,363円を計画通りに研究活動に使用し、かつ、消耗品の利用に際して最大限の節約努力を行った結果、5,509円の残額となった。 本事業の最終年度に当たる平成26年度は、直接経費として交付される800,000円と平成25年度の直接経費の残額5,509円を合わせた805,509円を全て計画通り使用する予定である。使用内訳は主に物品購入費であり、その内訳は実験試薬、実験器具、実験動物などの消耗品購入費である。なお、1品又は1組もしくは1式の価格が50万円以上の物品を購入する予定はない。
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