2012 Fiscal Year Research-status Report
脂肪組織の肥大化と糖エネルギー代謝異常におけるPDGFシグナルの意義の解明
Project/Area Number |
24591318
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
和田 努 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 助教 (00419334)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹岡 利安 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (00272906)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | PDGFR / Obesity / Insulin resistance |
Research Abstract |
肥満に伴う脂肪組織の増大には、個々の脂肪細胞の肥大化だけでなく脂肪組織における血管新生が重要な因子であり、PDGF(血小板由来増殖因子)はこの両者のプロセスに関わり重要な役割を担うことが想定される。そこで本研究では、肥満過程での脂肪組織の肥大化および糖脂質代謝におけるPDGFの作用を検討し、初年度は以下のことを明らかにした。 高脂肪食負荷マウスの血清PDGFR-BBは通常食マウスに比べ、有意な上昇を認めた。各組織におけるPDGFbetaの発現レベルの変化を検討したところ、内臓脂肪、皮下脂肪、褐色脂肪組織において著明なPDGF発現レベルの上昇を認めたが、骨格筋、肝臓、膵臓、視床下部では変化を認めなかった。 2型糖尿病モデルマウスのdb/dbに、PDGFR阻害薬を4週間投与したところ、体重および体組成分布、摂餌量、エネルギー消費には影響を与えなかった。精巣上体脂肪の脂肪細胞サイズにおいても明らかな変化を認めなかった。しかし脂肪組織における慢性炎症の指標はPDGFR阻害薬により低下を認めた。さらに糖負荷試験、インスリン負荷試験において、、PDGFR阻害薬投与はdb/dbマウスの耐糖能障害とインスリン抵抗性を有意に改善した。 PDGFおよびPDGFRのKOマウスは胎生致死であるため、タモキシフェン投与によりPDGFRbetaが欠損するコンディショナルノックアウトマウス(KO)の解析を行った。KOは高脂肪食負荷に対し、肥満抵抗性を示した。この体重増加抑制効果は、内臓脂肪と皮下脂肪の増加抑制に起因し、脂肪細胞サイズも抑制されていた。またKOでは肝臓への脂肪蓄積も抑制されていた。これらの結果、高脂肪食負荷で認められる耐糖能障害とインスリン抵抗性の悪化は、対照マウスと比較しKOで改善を認めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
通常マウスにおける、肥満病態での変化を検討し、db/dbマウスの糖代謝障害に対するPDGF作用阻害による治療介入効果も明らかとなった。 またPDGFRbeta conditional KOマウスの基礎的な解析も終了した。 本学の動物実験センターの改修工事に伴い実験が抑制されたが、その間も工夫し研究が停止しないように計画した。 しかし新しい遺伝子改変マウスに関する準備は必ずしも順調に進行しておらず、センターの再開以降、鋭意促進して検討にあたる。 次年度以降は、これらが生じる作用メカニズムにつき、詳細に検討する。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度の検討は、1年目に得られた成果に対し確認作業を行い、かつそのメカニズムの探究を行う。特にPDGFRbeta conditional KOで認められた肥満抑制効果が生じる原因解明を主眼とする。 高脂肪食負荷PDGFRbeta conditional KOに対し、①代謝計測システムにより、エネルギー代謝を検討する。②各組織の組織学的解析を行い、特に脂肪組織の血管新生像を検討する。血管新生は、組織の立体染色を行う必要性を認めたため、Whole mount immunostainingを行い共焦点レーザー顕微鏡で解析する。③脂肪組織の慢性炎症に関し、遺伝子発現変化、マクロファージの表面抗原に対するFACSを行い、その極性変化などを検討する。④糖代謝改善機構の解析を行う為、各組織におけるインスリンシグナル伝達の解析を行う。 また、PDGFの脂肪細胞分化およびマクロファージ機能に及ぼす効果につき、培養細胞およびPDGFRbeta KO由来の細胞を用いて検討し、PDGF作用の包括的な作用機構を解明する。 さらに、マクロファージ特異的PDGFRbeta欠損マウス作成に向け、LysM-Creマウスの入手およびPDGFRbeta flox/floxマウスとの交配を行う予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度の交付額を有効に使用したが、本年3月31日時点で残金が4655円となった。実験もおおむね順調に進行しており、残金は次年度に合わせて使用予定である。 本研究計画に、次年度は120万円の直接経費の内定を頂いている。そこで、以下のような予算配分計画を行った。 1)マウス購入費、および飼育費 80万円 2)細胞培養費 20万円 3)リアルタイムPCRなど遺伝子解析および生化学試薬購入費 20万円
|