2012 Fiscal Year Research-status Report
劇症1型糖尿病発症における自然免疫の役割と発症予防に関する研究
Project/Area Number |
24591321
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
會田 薫 山梨大学, 医学部附属病院, 講師 (50184015)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 哲郎 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (30113442)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 劇症1型糖尿病 |
Research Abstract |
劇症1型糖尿病は著明な高血糖とケトアシドーシスが突然に発症し、きわめて短時間で重篤化する1型糖尿病のサブタイプの1つであり、その病因は明らかではない。しかし、我々は、劇症1型糖尿病剖検膵を免疫組織学的に検討し、膵島におけるエンテロウイルス蛋白の存在を証明してきた。 平成24年度は、劇症1型糖尿病の膵切片を使用して、エンテロウイルス感染後に起きる自然免疫の各ステップにおける因子の活性化状態を検討した。 その結果、劇症1型糖尿病においては、エンテロウイルス感染の結果、TLR3発現細胞の膵島への浸潤し、ウイルスRNAのセンサーであるRIG-I, MDA5の発現がβ細胞で増強し、膵島細胞においてはインターフェロンα/βの発現が誘導されることが明らかとなった。インターフェロンは樹状細胞やマクロファージの成熟と活性化、膵島細胞におけるMHC クラスI分子の発現増強、β細胞におけるMHCクラスII分子の異所性発現などをもたらすことも明らかになった。これらの結果、膵β細胞自身にインターフェロンγとケモカインCXCL10が発現し、それらによってT細胞やマクロファージが活性化・膵島へ遊走し、炎症性サイトカインを分泌し、β細胞を破壊すると同時に、残存β細胞にCXCL10の発現を誘導し、β細胞破壊の悪循環が起こることを明らかにした。β細胞がアポトーシスを起こしていることは、Fas-FasL系の発現、Caspase-8, -9, -3の発現から明らかである。 以上より、劇症1型糖尿病は、エンテロウィルスにより惹起された自然免疫系および自己免疫系の活性化によっておこることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
劇症1型糖尿病患者の膵切片を用いて、自然免疫および獲得免疫の各ステップにおける因子の活性化状態を免疫組織学的に検討することに関しては、ほとんど予定通りに進み、その結果も順調に得られている。 劇症1型糖尿病患者の膵切片からRNAを抽出し、発現しているmRNAを検討することを予定していた。しかし、この方法では、膵島のみからRNAを得ることは技術的に難しいことが明らかとなった。そこで、laser microdissectionによりパラフィン切片から膵島のみをとりだし、そこから蛋白を抽出しプロテオーム解析を行うこととした。すでに、この研究に着手しており、結果が得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
1)劇症1型糖尿病患者の膵切片を用いた自然免疫および獲得免疫の各ステップにおける因子の活性化状態を免疫組織学的に検討することについてはほぼ終了し、論文執筆中である。 2)これまでに、劇症1型糖尿病では、エンテロウイルスの感染と、それに引き続く自己免疫、獲得免疫反応が起きることを組織学的に明らかにした。その成果を臨床応用するため、患者血清中の各種サイトカイン・ケモカインを測定し、劇症1型糖尿病の早期診断、早期治療、さらに病態解明につなげる。我々は全国の先生方のご協力により、多くの劇症1型糖尿病患者血清を収集しているので、それらを用いて検討する。 3)劇症1型糖尿病患者の膵島に発現している蛋白の同定(プロテオーム解析)は、laser microdissectionによる膵島単離、蛋白の抽出、HPLC/tandem mass spectrometryによる解析を行っている。正常膵の解析と比較することにより、劇症1型糖尿病膵で特異的に発現が変化している蛋白を同定する。ついで、それらの変動を、免疫組織学的に検討し、変動を確認する。 4)劇症1型糖尿病の動物モデルを確立するため、CD28 knock-outマウスにpoly I:Cを投与する。Poly I:Cの投与量、および、投与期間を検討し、最も早期に糖尿病を発症する条件を見いだす。糖尿病発症早期のマウスの膵を組織学的に検討し、ヒト劇症1型糖尿病と対比する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(5 results)