2013 Fiscal Year Research-status Report
劇症1型糖尿病発症における自然免疫の役割と発症予防に関する研究
Project/Area Number |
24591321
|
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
會田 薫 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (50184015)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 哲郎 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (30113442)
|
Keywords | 劇症1型糖尿病 / エンテロウイルス / ヘルペスウイルス / インターフェロンα / インターフェロンγ / プロテオミクス |
Research Abstract |
前年度までに、我々は、劇症1型糖尿病の膵島を免疫組織学的に検討し、膵島にエンテロウイルス蛋白が存在すること、自然免疫/獲得免疫に関与する多くの分子が発現することを示し、劇症1型糖尿病はエンテロウィルスにより惹起された自然免疫系および自己免疫系の活性化によっておこることを明らかにした。本年度はさらに、 1. IFNαにより誘導されることが知られているviperinとISG15が劇症1型糖尿病患者膵に特異的存在することを免疫組織学的に示した。このことで劇症1型糖尿病において自然免疫が活性化していることを追試できた。 2. 劇症1型糖尿病患者の血清中のIFNα、IFNγ、CXCL10を測定した。血清IFNαは、劇症1型糖尿病患者で正常者よりむしろ低値を示した。血清IFNγと血清CXCL10は、劇症1型糖尿病患者で正常者より高値を示した(論文準備中)。 3. ウイルスの分離同定を行った。劇症1型糖尿病患者の発症3日目から5年までの患者11例の血清、発症3日目の患者2例の咽頭拭い液、1例の発症3日目の患者の便からRNAを抽出した。すべてのエンテロウイルス属のウイルスを網羅的かつ高感度に検出できるCODEHOP VP1snRT-PCRにてエンテロウイルスRNAの検出を試みたがいずれも陰性であった。一方、3例の発症3日以内の患者の血清、咽頭拭い液、便からウイルス分離を試み、1例の患者の咽頭拭い液から、Herpes simplex virusを分離した。これは劇症1型糖尿病患者から分離された初めてのウイルスである(第51回日本糖尿病学会関東甲信越地方会にて発表)。 4. 劇症1型糖尿病膵と正常膵切片からlaser microdissectionにより膵島のみをとりだし、そこから蛋白を抽出しプロテオーム解析し、劇症1型糖尿病膵島に特異的に発現している蛋白を複数同定した。確認実験を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)viperinとISG15が劇症1型糖尿病膵に特異的に発現していることから、本症においてエンテロウイルスによる自然免疫の活性化を追試できた。しかし、血清IFNαが低値であったことは、感染がごく局所に限られている事によると考えられる。血清IFNγと血清CXCL10が高値を示したことはIFNγ系が活性化しており、Th1が優位であることを示している(論文準備中)。 2)高感度検出法でもエンテロウイルスRNAは検出できなかった。しかし、IFNαは膵島では検出されるが血清では高値を示さないことを合わせて考えると、ウイルス感染・複製は膵の局所に限局されており、viremiaを起こす程のものではないと考えられる(論文準備中)。 劇症1型糖尿病患者から初めてヘルペスウイルスを分離同定した。これは劇症1型糖尿病から分離された初めてのウイルスである(学会発表した)。 3)劇症1型糖尿病患者膵と正常膵からプロテオーム解析を行い、劇症1型糖尿病膵島に特異的に発現している蛋白を初めて複数同定した。現在確認中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)劇症1型糖尿病膵島に特異的に発現している蛋白について:本年度は、劇症1型糖尿病膵と正常膵切片からlaser microdissectionにより膵島のみをとりだし、そこから蛋白を抽出しプロテオーム解析し、劇症1型糖尿病膵島に特異的に発現している蛋白を複数同定した。そこで、これら蛋白の特異的発現を免疫組織学的に確認する。さらに、膵島のどの細胞に発現しているかを検討する。また、蛋白相互連関を解析し、劇症1型糖尿病発症との関連を検討する。 2)劇症1型糖尿病モデルマウスについて:CD28 knock-outマウスにpoly I:Cを投与し、劇症1型糖尿病モデルマウスを確立する。そして、ヒト劇症1型糖尿病と同じメカニズムが働いているかを検討する。モデルマウスにおいても血清CXCL10が高値を示すことを確認する。ついで、anti-CXCL10抗体を静脈内に投与し、糖尿病の発症進展を阻止できるか検討する。また、ヒト組織のプロテオソーム解析から同定したヒト劇症1型糖尿病特異的蛋白が、モデルマウスにおいても関与しているかを検討する。
|
Research Products
(5 results)