2012 Fiscal Year Research-status Report
視床下部ー報酬系ー大脳辺縁系神経回路による摂食調節の解明と過食病態へのアプローチ
Project/Area Number |
24591326
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
勝浦 五郎 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (20401226)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 伸子 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50400891)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 摂食調節 / 過食 / 報酬系 / 視床下部 / 中脳辺縁系 / 食事性肥満モデルマウス |
Research Abstract |
摂食は薬物依存による快楽刺激と共通した報酬系(中脳辺縁系ドーパミン神経系)によっても調節されていると予測されるが、その調節機構は明らかにされていない。そこで、肥満モデルマウスを用いて、この調節系の解析を行っている。さらに、レプチンによる報酬系への作用についても、レプチン過剰発現(LepTg)マウスを用いて解析を行っている。高嗜好性食物である60%高脂肪食を2週間摂食させた食事性肥満モデルマウス(HFDマウス)を用いて解析を行った。現在までの結果は以下のとおりである。自由摂食時では、HFDマウスとコントロール食(CD)マウスとで差が認められなかったが、48時間絶食後の4時間再摂食量はCDマウスに比べ有意に増加していた。そこで、このマウスの過食メカニズムを解析する目的で、ホメオスタティックな調節を行う視床下部および報酬系を主に調節する側坐核のメラノコルチン、オピオイド、ドーパミンおよびグルタミン酸神経系関連因子のmRNA発現を検討した。その結果、自由摂食時では、CDマウスとHFDマウスの各mRNA発現パターンに明らかな差は認められなかったが、48時間絶食後および48時間絶食後4時間再摂食後では、CDマウスとHFDマウス間で、いずれの検討部位においてもこれらの遺伝子発現に有意な差が認められた。さらに、扁桃体、海馬、大脳皮質におけるグルタミン酸関連のmRNA発現を検討した。また、CDマウスとHFDマウスで、オピオイド受容体アンタゴニストの側脳室内投与による摂食抑制作用の反応の程度が有意に異なっていた。これらの結果から、正常食と比較して、2週間の高脂肪食摂取により脳内の報酬系に大きな変化が生じることが明らかになった。また、LepTgマウスの側座核では、報酬系に関連した転写活性因子の有意な発現減少が認められ、レプチンは報酬系を抑制する可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は、肥満で認められる過食は中脳辺縁系ドーパミン神経系(報酬系)の破綻によって生じるのではないか、さらに、その異常病態は、神経可塑性によって減量後も継続するため、容易にリバウンドするのではないかと考えている。 これまでの検討により、①2週間の高脂肪食負荷により、脳内の報酬系を含む摂食調節系に変化が生じていること、②絶食により、その変化が顕在化すること、が明らかになり、2週間という比較的短期間の高脂肪食摂取が、脳内の報酬系に大きな変化をもたらす可能性が示された。さらに、48時間絶食後の再摂食に及ぼすメラノコルチン受容体拮抗薬、オピオイド受容体拮抗薬およびグルタミン酸神経系受容体拮抗薬の脳室内投与を行い、再摂食量に対する作用を検討したところ、CDマウスとHFDマウスの反応に違いが認められた。また、レプチンが報酬系の抑制、つまりanti-reward systemとして中枢神経系に作用している可能性も示された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討で得られた結果をもとに、機能解析、分子生物学的解析および代謝パラメーター解析などを加え、より包括的に解析し、肥満における報酬系の生理的意義を明らかにする。最終的に、これらの解析から、過食につながる報酬系の病態生理学的意義を明らかにし、新規抗肥満薬の創薬に繋がる基盤的情報を見出す。具体的には、現在得られているCDマウスとHFDマウスの遺伝子発現や受容体アンタゴニストの反応性の違いについて、脳部位に特異的な変化をとらえるために、特に側座核、偏桃体および視床下部の神経核にアンタゴニストを投与して、その反応性の違いを行動学的および分子生物学的に同定する。そうして、2週間という比較的短期間のHFD摂取が、どのような機序で、絶食‐再摂食による摂食量の増加につながっているのかを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前述の内容の項目を検討するために、(1)各種受容体アンタゴニストおよびアゴニストの側脳室内投与あるいは神経核への投与による絶食後の再摂食に及ぼす影響を検討、(2)各種受容体の発現変化およびシグナル伝達物質の変化の検討、(3)HFD摂取2週間の間のタイムコースについて検討、予定である。そこで、これらの実験のために、主に、以下の内容に項目について予算を使用する予定である。(1)PCRおよびWestern blottingなどの遺伝子あるいはタンパク質発現変化を検討するための試薬関係、(2)マウスの購入、(3)血中パラメーターの測定のための測定キット、(4)学会発表および論文投稿費用。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] Intracerebroventricular Administration of C-Type Natriuretic Peptide Suppresses Food Intake via Activation of the Melanocortin System in Mice.2013
Author(s)
Yamada-Goto N, Katsuura G, Ebihara K, Inuzuka M, Ochi Y, Yamashita Y, Kusakabe T, Yasoda A, Satoh-Asahara N, Ariyasu H, Hosoda K, Nakao K.
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Journal Title
Diabetes
Volume: 62
Pages: 1500-1504
DOI
Peer Reviewed
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