2013 Fiscal Year Research-status Report
FSP27による臓器間の脂肪分布変化がインスリン感受性を制御するメカニズムの解明
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24591331
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田守 義和 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90379397)
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Keywords | 脂肪細胞 / 脂肪滴 |
Research Abstract |
本課題の目標はFSP27の発現レベルがインスリン感受性臓器における中性脂肪蓄積量およびインスリン感受性に如何なる影響を与えるかを検討すると共に、効率よく中性脂肪滴を形成する脂肪細胞特異的FSP27変異体過剰発現マウスを作成し脂肪細胞の脂肪蓄積能と耐糖能・インスリン感受性の関係を解析することである。 FSP27の発現量と脂肪蓄積能に関しては、摂食と絶食という、相対するエネルギー出納の状態で、インスリン感受性臓器の脂肪蓄積量とFSP27の発現量に関連があることを明らかにした。絶食というエネルギー欠乏状態では、白色脂肪組織でFSP27の発現量とともに中性脂肪量が著明に減少した。一方、肝臓では絶食により逆にFSP27の発現量とともに中性脂肪蓄積量も増加した。褐色脂肪組織でもFSP27の発現が著明に増加した。これは個体のエネルギー代謝において、エネルギー欠乏時はエネルギー貯蔵臓器である白色脂肪細胞からエネルギー消費臓器である肝臓や褐色脂肪細胞に中性脂肪の蓄積が移動するのに際し、各臓器におけるFSP27の発現変化が効率的に細胞内の蓄積脂肪量を制御している機構が示唆された。 同時にFSP27の構造機能連関を解析した。その結果、巨大な脂肪滴の形成に重要なFSP27のC末端側構造(131-239アミノ酸)のうち、脂肪滴膜に局在するためには131-200アミノ酸部分で十分であるが、巨大脂肪滴を形成するのには最もC末端側の201-239アミノ酸部分の39アミノ酸が必須であることを見出した。さらに、この中でも206-214アミノ酸が極めて重要であり、それに続く215-226アミノ酸部位に含まれる酸性アミノ酸群がおそらく脂肪滴の融合を介して巨大脂肪滴形成の効率をあげていることも明らかにした。 脂肪細胞特異的FSP27変異体トランスジェニックマウスの作成は現在進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
脂肪組織におけるFSP27の蛋白レベルの解析、特に褐色脂肪組織におけるFSP27の蛋白量の定量が当初予想していたよりも不安定で難渋したため、遅れが生じている。さらに、解析途中で明らかになったことは、FSP27の蛋白が初めに予想していたよりもダイナミックに翻訳後修飾を受ける可能性があることも解析の遅れの原因となっている。このため、本課題の主要な解析項目の1つである組織のFSP27蛋白量と脂肪蓄積能の関係を明らかにすることに時間を消費している。またFSP27変異体トランスジェニックマウスの作成も予定よりも遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
脂肪細胞特異的FSP27変異体トランスジェニックマウスの作成に重点を置いて進めて行く。今回の検討過程でFSP27欠損マウスは週令によって糖代謝能が変化することが明らかになった。これは週令によってインスリン感受性臓器への脂肪蓄積が変化するためと考えており、この検討も進める。さらに、高脂肪食投与によって、脂肪組織の脂肪蓄積状態に変化を与えた状態で、脂肪組織のFSP27の発現量と脂肪蓄積能の関係を明らかにすると同時に、肝臓や骨格筋の脂肪蓄積量がどう変化するのか、続いて検討を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
文具が予定額よりも安くなったため。 平成26年度と合算して使用を予定している。
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