2012 Fiscal Year Research-status Report
1型糖尿病に対する脱分化脂肪細胞を用いた新規免疫抑制療法の開発
Project/Area Number |
24591344
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
石毛 美夏 日本大学, 医学部, 助教 (90420950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 太郎 日本大学, 医学部, 教授 (50366580)
麦島 秀雄 日本大学, 医学部, 教授 (80183648)
浦上 達彦 日本大学, 医学部, 准教授 (60223616)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 再生医療 / 1型糖尿病 / 細胞治療 |
Research Abstract |
1型糖尿病モデルマウスの検証およびDFATの作成・機能解析を行った。 1型糖尿病モデルマウスであるNODマウスは、14週より血糖値200mg/dl以上となり糖尿病を発症する個体が出現した。24週時の糖尿病発症率は約5割であった。発症前の経過は様々で、突如高血糖をきたす個体もあれば、150~200mg/dlの軽度血糖上昇が数週間みられる個体も存在した。糖尿病発症前、発症直後、発症2週間後において、皮下脂肪からDFATを作成した(NOD-DFAT)。マウス皮下脂肪由来DFATはヒト皮下脂肪由来DFATと異なり、すべての個体から安定して作成可能な技術は確立していない。そのため、当初はコロニー形成が少なく継代が困難でDFATの作成に難渋したが、酵素処理時間などの検討により改善がみられ、いまだ全例ではないが、発症前・直後・2週後すべてのタイミングにおいてDFATの作成が可能となった。糖尿病発症前と比較し、発症直後のマウスの皮下脂肪由来のDFATコロニー数はやや少ないものの差はなく、増殖も同等で数代の培養継続は可能であった。しかし、両者ともヒト皮下脂肪由来DFATに比べ、増殖は遅く、培養可能継代数も少なかった。糖尿病発症2週間後のマウスでは皮下脂肪が減少しており採取可能量が少なく、それによりDFATコロニー数も減少し成長も遅い傾向があり、培養継続は困難であった。 培養可能となったNOD-DFATで、細胞表面抗原の解析を行った。CD45及び CD34は陰性、 CD90及び CD105は陽性で現在までのDFATの報告と同等であるが、検体数が不足しており、さらなる検討が必要である。さらに、NOD-DFATの免疫寛容関連分子の発現について、IFN-α, IFN-β, TNF-α刺激下で培養を行い、最適な刺激濃度及び培養期間等の条件検討を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度であり、動物実験開始のための倫理的手続きや動物舎のスペースの確保に時間が必要であった。動物実験開始後は、NODマウスは自然発症の1型糖尿病モデルのため発症率が24週で約5割と高くはなく、マウス購入から発症までに2-3か月程度必要であり、糖尿病発症後の実験となるため、予想より実験進行が遅れることとなった。さらに、マウス皮下脂肪由来DFATの培養方法は確立しておらず、採取から分離・培養など条件検討に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
NODマウス皮下脂肪によるDFAT(NOD-DFAT)の初代培養方法をさらに改善し、より効率のよい培養方法とする。NOD-DFATの作成効率を上げ、細胞数を確保することにより、以下の実験が推進される。得られたNOD-DFATに対し、細胞表面抗原(CD105, CD90, CD34, CD45など)についてさらなる解析を行い、免疫寛容誘導にかかわる因子(IFN-γ, IDO, PGE2, TGF-βなど)の発現、分泌される液性因子に対するリンパ球の遊走能・増殖抑制効果や樹状細胞への分化抑制能を、糖尿病発症前・発症後においての相違も含めた検討を行う。続いて、NODマウスにNOD-DFATを投与し、NOD-DFATの免疫抑制効果による糖尿病の発症抑制作用の有無を血糖値や血中サイトカインの推移、膵組織変化などから検討する。 さらに、1型糖尿病患者末梢血リンパ球とDFATの共培養にて、DFATによる増殖抑制効果が得られるか、ヒトにおいても1型糖尿病の発症にNODと同様の自己免疫機序が働き、DFATにより免疫寛容が誘導されるかin vitroで検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
糖尿病発症前及び直後のNODマウス皮下脂肪からNOD-DFATを天井培養で作成するため、NODマウス及び培地やウシ胎児血清、シャーレ等のプラスチック器具などの消耗品を購入する。また、学内専門施設でのマウス飼育にかかる費用も計上する。NODマウスは自然発症モデルであり、糖尿病の発症や進行を追跡するため、頻回の血糖値の測定(少なくとも1匹で10回以上)で追跡を行わなければならない。今年度に血糖測定器はすでに購入したが、消耗品である血糖測定用チップは使用期限があり随時購入するため、これにかかる費用がある。得られたNOD-DFATの細胞表面抗原を蛍光活性化細胞分取装置(FACS)にて解析を行うために、CD34, CD45, CD90, CD105などの蛍光抗体を、サイトカインの刺激下で免疫寛容誘導にかかわる因子の発現を検討するため、IFN、TNF及びmRNA精製からプライマー反応までの一連の試薬、ELISAアッセイキット、プラスチック器具を購入する。NOD-DFATのin vivoにおける糖尿病発症抑制効果の有無を検討するため、NODマウスを購入し飼育するための費用及び治療後の膵臓の炎症性変化追跡のための組織切片作成を外部委託するための費用、組織染色のための免疫染色抗体及び試薬の購入にかかる費用を計上する。 1型糖尿病患者末梢血リンパ球に対するDFATによるリンパ球増殖抑制効果を検討するための採血用機器及び培養に必要なサイトカイン、培地やプラスチック器具などの消耗品を購入する。 研究成果を国内学会で発表するための旅費及び発表原稿の英文校正にかかる費用を計上する。
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