2013 Fiscal Year Research-status Report
劇症1型糖尿病の成因ー患者分析より新たに見出された2分子の病態学的意義の解明
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24591362
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
今川 彰久 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80373108)
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Keywords | 劇症1型糖尿病 / NK細胞 / KLRC3 / CD94 |
Research Abstract |
本研究の目的は、劇症1型糖尿病において、1)ウイルス感染下流に位置する蛋白X(=ISG15)、2)患者免疫担当細胞で発現が低下する蛋白Y(=KLRC3)のβ細胞傷害における意義を明らかにすることである。 1)蛋白 X (=ISG15)の検討:前年度までの検討から、マウス膵β細胞株MIN6細胞では、IFNα添加により蛋白 Xの発現が用量依存的に増加すること、蛋白 Xを強制発現させると炎症性サイトカインによるアポトーシスが減少し、逆にノックダウンさせるとアポトーシスが増加することを明らかにしていた。蛋白 Xの発現はfreeの蛋白 Xのみを評価していたが、今年度は複数の抗体を用いて、ISG15 conjugated蛋白の発現を含めて検討した。その結果、ISG15 conjugated蛋白はfree ISG15と同様にIFNα添加により用量依存的に増加することなどが明らかになった。 2)蛋白Y(=KLRC3)の検討:前年度までの検討結果から、蛋白Y(=KLRC3)は主にCD3陰性CD56陽性でソーティングされたNK細胞に発現していることが明らかになっていた。そこで、末梢血単核球中のNK細胞割合を比較したところ、劇症1型糖尿病ではNK細胞の割合が有意に低下していた。また、NK細胞におけるRT-PCRの結果、劇症1型糖尿病では、1)KLRC3発現量が有意に低下、2)KLRC3とheterodimerを形成するCD94の発現が有意に低下、3)KLRC3とファミリーを形成するKLRC1やNKG2Dの発現は有意差がない、などが明らかになった。また、臨床的な解析から、劇症1型糖尿病患者のうち、末梢血単核球中のNK細胞の割合が低いほど、高血糖症状発現までの期間が有意に短く、先行感染から膵β細胞の破壊までの期間が短いことを示唆するものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の計画では、1)蛋白X過剰発現系を用いた機能解析、2)蛋白Xを過剰発現させたモデルマウスの作成と解析、3)蛋白Xの血中濃度測定キットの検証、4)ヒト末梢血NK細胞において蛋白Yに関連して発現増強及び低下が予想される分子の発現を検討する予定であった。このうち、蛋白Xについては、新たにconjugated蛋白の評価も必要であると考えられたため、今年度は1)蛋白Xの発現誘導の検討、2)蛋白X過剰発現系を用いた機能解析、3)蛋白X発現抑制系を用いた機能解析を再評価した。結果の一部は第56回日本糖尿病学会で報告した。一方、4)についてはヒト末梢血を用いた解析が順調に進展し、その一部は第56回日本糖尿病学会で報告し、論文として発表した(Nakata S et al. Immunol Lett 2013)。 以上のように本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従い、平成26年度は、蛋白 X (=ISG15)および蛋白Y(=KLRC3)の総合的評価を行う。このうち平成26年度は、特に蛋白 X (=ISG15)の評価を重点的に行う。当初計画していた、蛋白Xを過剰発現させたモデルマウスの作成と解析、蛋白Xの血中濃度測定キットの検証の前に、マウス単離膵島や幹細胞を用いた検証とサイトカイン以外の誘導因子によるapoptosisについて検証する。それらの結果を総合的に評価する。 これらの方策は研究代表者のもと、大学院生やポスドクを組織して推進していく。研究成果については引き続き学会発表、論文発表などを通じて発信していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画の手順を一部修正し、次年度以降に使用する予定が生じたため、次年度使用額が生じた。すなわち、蛋白Xを過剰発現させたモデルマウスの作成などを予定していたが、それらは平成26年度に施行予定あるいは計画修正としたためである。 細胞培養に関する費用、サイトカイン等分子生物学試薬購入に関する費用、マウス購入/飼育費、蛋白X測定キット購入費、FACSおよび免疫組織化学に使用する抗体、遺伝子発現量測定のためのキットの購入など、計画にしたがって研究費を使用する。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Low gene expression levels of activating receptors of natural killer cells (NKG2E and CD94) in patients with fulminant type 1 diabetes.2013
Author(s)
Nakata S, Imagawa A, Miyata Y, Yoshikawa, Kozawa J, Okita K, Funahashi T, Nakamura S, Matsubara K, Iwahashi H, Shimomura I.
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Journal Title
Immunol Lett
Volume: 156
Pages: 149-155
DOI
Peer Reviewed
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