2013 Fiscal Year Research-status Report
骨粗鬆症治療のための再生医療に向けた副甲状腺細胞分化誘導法の開発
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24591366
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
岩崎 泰正 高知大学, 医歯学系, 教授 (30303613)
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Keywords | 副甲状腺 / カルシウム / 骨粗鬆症 |
Research Abstract |
私どもは、過去の研究、および昨年度の研究において、転写因子 Glial cell missing B (GCMB) が PTH 遺伝子の組織特異的発現を規定する重要な因子であることを報告してきた。また昨年度の研究で、実際の症例において GCMB の遺伝子変異が遺伝性副甲状腺機能低下症の原因となることを見出し、ヒトにおける GCMB と PTH 遺伝子発現との関連も裏付けられた。以上の結果を踏まえ、本年度は、ラット副甲状腺組織由来の PT-r 細胞株を用いた in vitro の検討を継続し、以下に示す成績を得た。 1) PTH 遺伝子の発現は、CaSR 活性化による [Ca++]i の上昇により抑制される。これは通常のホルモン遺伝子発現とは逆方向の制御であるため、副甲状腺細胞特異的な調節機構が存在する可能性が高い。私どもは副甲状腺組織に発現している転写因子 Sp6 (KLF14, epiprofin) に焦点を当てた検討を行った。その結果、Sp6 の結合配列が PTH 遺伝子プロモーター上に存在すること、[Ca++]iの上昇により calcineurin/NFAT 系の活性化を介して、Sp6 の発現が誘導されること、PTH 遺伝子の発現は恒常的に発現する転写因子 Sp1 に依存していること、Sp6 は Sp1 による PTH 遺伝子発現に競合することで、その転写活性を強力に抑制すること、などの結果を得た。 以上のように、[Ca++]i による PTH 遺伝子の抑制性制御機構の分子メカニズムを初めて明らかにした。以上の研究成果は、本研究の最終的な目標である、PTH 遺伝子発現の人為的制御に向けた重要な基盤的知見となることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
副甲状腺ホルモン (PTH) 遺伝子の発現が生体内のカルシウム濃度に応答して制御される細胞を再生工学的に樹立する場合、通常のホルモンとは逆向きの制御、すなわち逆シグモイド曲線的なの抑制性制御が再現されることが必須である。しかしその分子機序の詳細は不明のままであった。今回の我々の検討結果は、細胞外カルシウム濃度上昇が CaSR を介して細胞内カルシウム濃度を上昇させ、これが calcineurin/NFAT系を活性化して Sp6 の発現を誘導すること、発現した Sp6 が、PTH 遺伝子プロモーター上で Sp1 と競合することにより転写を抑制すること、という一連の分子機序を初めて明らかにした。これらの成果は、生体内のカルシウム代謝制御を理解する上で大きなインパクトをもたらすものと認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に大きな成果が得られたため、本年度は過去の検討結果との整合性を詰めるための種々の検討を行う。すなわち、 1) PTH の遺伝子発現に関与する他の転写因子、すなわち GCMB、NF-Y, VDR などと Sp1/Sp6 との協調的な転写調節機構の詳細を解明する。 2) 私どもの共同研究者は、GATA3 遺伝子の変異で PTH 遺伝子発現の低下を伴う副甲状腺機能低下症を発症することを見出している。本年度は、GATA3 の標的が、GCMB, NF-Y, Sp1, あるいは PTH 遺伝子自体など、どの遺伝子であるのか、in vitro の系で明らかにすることにより、GATA3 遺伝子変異による副甲状腺障害の発症機序を解明する。
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