2012 Fiscal Year Research-status Report
甲状腺癌リスク因子FOXE1とNKX2-1は良性腺腫形成にも関連するのか
Project/Area Number |
24591369
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
SAENKO Vladimir 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (30343346)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 正洋 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50284683)
光武 範吏 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (50404215)
伊東 正博 独立行政法人国立病院機構(長崎医療センター臨床研究センター), 臨床検査科, 部長 (30184691)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 内分泌学 / 甲状腺腫瘍 / 遺伝子多型 |
Research Abstract |
研究の最初の段階は、日本人におけるFOXE1およびNKX2-1遺伝子のSNP(一塩基変異多型)が、甲状腺良性腫瘍である濾胞性腺腫の発症と関連があるかどうかを評価することを目的としている。長崎県内の病院において、甲状腺濾胞性腺腫と診断された症例が腫瘍登録から得られた。このうち、同時に、あるいは後に甲状腺がんを発症した症例は除外された。その結果、長崎市内の大規模病院より1026例の濾胞性腺腫のサンプルが収集され、まず、当初の病理診断の検証を行い、494例で濾胞性腺腫の診断が確認された。さらに神戸の隈病院において、同様に390例のうち347例の診断が確認され、合計841例がこの研究の対象となった。各ブロックごとに一片8μmのパラフィン切片5片を、DNA抽出のために作成した。 第二段階では、 ヒト乳頭状甲状腺がん細胞にて、ドキシサイクリン誘導ノックダウン法を用い、FOXE1の機能的役割の解明に挑んだ。細胞をドキシサイクリンによって刺激した後のFOXE1タンパク質とmRNAレベルとの減少が、それぞれウェスタンブロット法と定量RT-PCRによって確認された。GeneChip Human Genome U133 Plus Array(Affymetric)を用いたマイクロアレイ発現解析を行ったところ、発現が低下した遺伝子では発育プロセスに関連しているものが多く見られる一方、制御されていない遺伝子の大半が免疫反応、運動、細胞遊走に関連していることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体的な進捗状況は当初の計画にほぼ沿っているので、評価②と判定できる。多数の濾胞性腺腫についての情報を集めることが第一段階であった。1,416例の濾胞状腺腫の記録が長崎市内と神戸の病院から集められ、検討された。これは、当初計画の1,000例を上回る数である。 次の段階では、これら提携病院から集められた対象となる症例において、実際に再度ヘマトキシリン・エオジン染色を行い、病理診断の再確認を行った。厳しい条件によって診断が厳密でないものを除外した結果、提携病院において抽出された857症例のうち、439症例(51.25%)が研究の対象から外された。このかなり高い除外率は、過剰診断(153例、34.9%)または過小診断(191例、43.5%)によるところが大きい。その他の理由としては、組織が量的に不十分であったり、一定のクオリティーに達していなかった(40例、9.1%)、あるいは、パラフィン切片が作成できなかったため(55例、12.5%)などが挙げられる。これらの検証作業は順調に行われた。 マイクロアレイの実験では、FOXE1のノックダウンにより、細胞の脱分化および悪性の表現型の獲得作用に基づいた変化を引き起こした。研究のこの段階も予定通り順調に行われた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画には、パラフィン切片からのDNA抽出、遺伝子型の決定、暫定的統計分析およびFOXE1ノックダウンの機能的評価などが含まれる。DNAは5枚の8μmのホルマリン固定パラフィン包理(FFPE)切片から、アルカリ性緩衝液を用いて抽出する。 遺伝子型決定は、以前の我々の研究と同様(Matsuse et al., J Med Genet 2011)、事前に作成され機能的に検証済みのFOXE1のプローブを用いて行われる。近年の全ゲノム関連解析によって甲状腺がん発症に関連する2q35のrs966423、8p12のrs2439302、 14q13.3のrs116909374などのSNPsが判明してきている(Gudmundsson et al., Nat Genet 2012)ため、分析されるSNPsの数も増やすことになるであろう。サンプルサイズの拡張については、遺伝子型と統計学的評価の結果に基づき、決定する。 FOXE1ノックダウンの効果を機能的に評価するために、以下の指標を用いる:(1)ドキシサイクリン有または無の条件における細胞増加率、(2)細胞運動性アッセイ、(3)細胞外マトリクスによる細胞浸潤アッセイ。 加えて、ヒトの濾胞性腺腫組織のFOXE1のタンパク質の発現を、我々の研究(Bychkov et al., Thyroid 2013)で報告しているように、FFPEセクションを用い、免疫組織化学的に評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
提携病院の長崎医療センターに169症例、隈病院に390症例の診断検証を行ってもらったことにより、追加のミクロトーム刃と顕微鏡プレパラートを買う必要がなかった。前年度から繰り越された8478円は、使用されなかった。 今年度の使用計画は以下の通りである。 試薬;45万円、細胞培養器;10万円、消耗品;10万円、ガラス製品;2万8478円、国内旅費;15万円、国際旅費;33万円、その他;15万円
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Research Products
(18 results)