2013 Fiscal Year Research-status Report
ストレスによる食餌嗜好性の変化と脳内メカニズムの解明
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24591374
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
岡本 士毅 生理学研究所, 発達生理学研究系, 助教 (40342919)
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Keywords | 嗜好性 / ストレス / コルチコトロピン放出ホルモン |
Research Abstract |
これまでに、マウス視床下部室傍核(PVH)のAMPキナーゼ(AMPK)を活性化させると、PVHでの脂肪酸酸化が亢進し、炭水化物食嗜好性が高まることを見出した。また、絶食後の再摂食時における炭水化物嗜好性の亢進作用にも、PVHニューロンにおけるAMPK-脂肪酸酸化機構が関与することを見出した。さらに、PVHのコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)含有ニューロンがこれらの調節機構に必須であることを証明した。CRHは古くからストレス応答性ホルモンとして知られる。そこで本研究では、社会性心理的ストレス負荷時における食餌嗜好性の変化と、その制御機構の発動機序、CRHニューロンにおけるAMPKと脂肪酸酸化の関与を調べることにより、ストレスが摂食障害を引き起こす脳内機構の一端を明らかにする事を目的とする。 本年度はマウスを用いて食餌嗜好性を変化させる社会性心理ストレス負荷条件をほぼ確立した。更に嗜好性制御ニューロンと考えられるCRHニューロン特異的にAMPKに対するshRNAを発現させたマウスを作成し、同様の心理ストレスを与えても、食餌嗜好性は変化しなかった事から、社会性心理ストレス時に於いてもCRHニューロンにおけるAMPKの寄与が重要であると考えられた。現在実験回数を重ね、各種ストレスパラメーターの測定とAMPK下流因子の活性化について検証を続けている。 またストレス負荷後の餌毎の摂食量の変化だけでなく、摂食時間のパターンが大きく変化する事、更に群れ行動を主体とする齧歯類の、群れに於ける順位と食餌嗜好性の関与を伺わせる結果も同時に見受けられて来た。これら新たな結果も統合し、AMPK-CRHを主軸とした、ストレスによる摂食障害の作用機序の一端を解明出来ると確信している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
食餌嗜好性を変化させる生理的ストレス条件の確立と安定に手間取ったが、ほぼ確定できたと考えられる。測定系が非常に安定しないと考えていたのだが、実は群れ行動を主体とした齧歯類の個体差をむしろ敏感に検出出来得る測定系ではないか考え、現在更に検証を続けている。またCRH-IRES-Cre recombinase ノックイン(KI)マウスにLoxP配列を組み込んだウィルスベクターを用いてAMPKに対するshRNA限局発現させたマウスを作製する際、最初に使用したAAVベクターでは発現量は高いが、感染部位に於ける炎症による影響が激しく、レンチウィルスに変更したため、若干実施に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
ストレス負荷後の各種ストレスパラメーターの測定とAMPK下流因子の活性化について検証を続ける。 肥満モデルマウスへのストレス負荷実験を実施する。 AMPKを介したCRHニューロン活性化のメカニズムの解析を行う。これまでの実験ではAMPKがミトコンドリアでの脂肪酸酸化を介してCRHニューロンの細胞内Ca2+濃度を上昇させると考えていた。しかし、脂肪酸トランスポーターのCPT1aの他にもニューロンではCPT1cが小胞体に存在する。脂肪酸酸化阻害薬Etomoxirは両サブタイプに影響する事が予想されるので、サブタイプ特異的な抑制マウス、細胞株を用いて、AMPKによるCRHニューロン活性化機序を解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ストレス条件の検討に時間が掛かったため、予定していたパラメーター測定キット等の購入が遅れたため サンプル採取は継続しているので、測定を開始する予定である。またストレス後のゲノム解析を追加実施する予定である。
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Research Products
(3 results)