2013 Fiscal Year Research-status Report
感染や組織傷害による甲状腺自然免疫能活性化の自己免疫疾患発症への関与
Project/Area Number |
24591375
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
鈴木 幸一 国立感染症研究所, 感染制御部, 室長 (20206478)
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Keywords | 自然免疫 |
Research Abstract |
これまでに、病原体の感染や細胞傷害による自己ゲノムDNA断片の漏出などによって、甲状腺細胞自身が持つ自然免疫系が活性化し、甲状腺細胞に主要組織適合性複合体MHC class II発現も誘導されることを明らかにした。さらに、このような機序によって甲状腺細胞自身が自己の内在性抗原を免疫系に提示することが、自己免疫反応が開始する大きな誘因になるのではないかと考えられた。 そこで、感染や細胞傷害の際に甲状腺ホルモン合成に必要な機能遺伝子発現がどのような動態を示すか検討を行った。その結果、DNAウイルスを感染させたり2本鎖DNA (dsDNA)で刺激して、甲状腺細胞上にMHC class I, class IIの異常発現が誘導される際に、甲状腺ホルモン合成に必要であり、また実際に自己抗体が産生されることも知られている種々の甲状腺機能遺伝子の中で、サイログロブリン(Tg)遺伝子発現のみが強く抑制されることがわかった。同様のTg遺伝子発現抑制は培養甲状腺細胞に強い電荷をかけることによる細胞傷害や2本鎖RNA (dsRNA)の導入によってももたらされたことから、広く甲状腺細胞の自然免疫活性化によって引き起こされる現象であると考えられた。 これらの検討により、甲状腺において感染や組織障害により自然免疫系が活性化し、甲状腺細胞自身にMHC異常発現が誘導されることによって自己抗原の提示が可能になるような状態において、少なくとも自己抗原となり得ることが知られている様々な甲状腺機能遺伝子発現が増強するようなことは無いことがわかった。むしろ、Tg発現が抑制されたことは、自然免疫活性化の際に甲状腺ホルモン合成という内分泌機能が抑制される機序を説明する現象として興味深いと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分化した甲状腺細胞機能の多くを維持しているラットFRTL-5細胞を用いて、強い電荷をかけることで純粋な細胞傷害を与えたり、FRTL-5細胞自身のゲノムDNA断片をトランスフェクションにより細胞質に導入することで、甲状腺細胞がサイトカインを発現するなどの自然免疫系が活性化するとともに、甲状腺細胞上に主要組織適合性複合体MHC class IIが異常発現することから、そのような状態において自己細胞が持っている抗原の提示ができるようになる可能性を示した。さらに、その際に甲状腺ホルモンの合成に関わる多くの機能タンパクのうちサイログロブリン(Tg)の発現が強く抑制されることが明らかになった。甲状腺に感染や炎症が起こった際にホルモン合成能が低下することは知られていたが、本研究成果はその機序を説明するための重要な知見を提供するものであると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究開始当初は、甲状腺自己免疫反応の標的となる自己抗原が、甲状腺細胞上にMHC class IIが異常発現するような際に、どのようなプロセッシングを受けて提示されるかについて詳細に解析する予定であった。しかしながら、強力な自己抗原の一つとして良く知られているサイログロブリン(Tg)の発現はむしろ強く抑制されることが判明した。今後、この機序の詳細についてさらに研究を進めることが必要であると考えられる。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Demonstration of innate immune responses in the thyroid gland: potential to sense danger and a possible trigger for autoimmune reactions2013
Author(s)
Kawashima A, Yamazaki K, Hara T, Akama T, Yoshihara A, Sue M, Tanigawa K, Wu H, Ishido Y, Takeshita F, Ishii N, Sato K, Suzuki K
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Journal Title
Thyroid
Volume: 23
Pages: 477-487
DOI
Peer Reviewed
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