2012 Fiscal Year Research-status Report
EBウイルス由来機能性RNAを標的としたホジキンリンパ腫の実験的分子標的治療
Project/Area Number |
24591378
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
和田 龍一 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20260408)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢嶋 信久 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (30443980)
今泉 忠淳 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90232602)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | Hodgkin lymphoma / RIG-I / IRF3 / EBER |
Research Abstract |
ホジキンリンパ腫では、Epstein Barr virus (EBV)の感染が認められ、腫瘍発生に関与していると考えられているが、その分子機構は十分明らかでない。我々は、EBV感染ホジキンリンパ腫において、自然免疫関連分子であるRIG-Iの発現が増強しているものの細胞死は誘導されていないことを見出した。このことから、自然免疫の経路を活性化することで、ホジキン細胞の細胞死を誘導する、ホジキンリンパ腫の新たな治療法の開発を目指し、自然免疫経路の異常の解明と実験的治療を目指している。今回の検討では、ヒトホジキンリンパ腫17例において、RIG-Iを介した自然免疫のシグナル経路について検討を行った。その結果、EBV感染ホジキンリンパ腫において、RIG-Iの発現はEBV非感染ホジキンリンパ腫に比較して増強しているものの、RIG-Iの下流に位置しtype 1 interferonを誘導するIRF3が、細胞質に発現しているものの、活性化されておらず、核内に移行していないことを見出した。さらに、EBV感染ホジキンリンパ腫では、EBV由来のEBNA1により発現が誘導され、制御性T細胞の浸潤に関わるCCL20の発現の増強も確認された。EBV感染ホジキンリンパ腫の腫瘍微小環境では、EBV非感染ホジキンリンパ腫に比較して制御性T細胞が多く、細胞傷害性T細胞が少ない。以上の結果から、EBV感染ホジキンリンパ腫においてRIG-Iの下流のシグナル経路のIRF3が非活性化されており、腫瘍細胞に対する細胞傷害性を減弱させる一因となっていることが考えられた。IRF3を活性化することが、自然免疫経路を活性化し腫瘍細胞の細胞死を誘導するホジキンリンパ腫の新しい治療となる可能性が考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
適切な治療標的分子の選定のために、ヒトホジキンリンパ腫において、RIG-Iを中心とする自然免疫のシグナル経路の解析を行った。その結果、RIG-Iのシグナルの下流の分子であるIRF3の非活性化を確認した。当初、Epstein Barr virus由来の機能性RNAで、RIG-Iと結合するEBERを標的分子と考えていたが、シグナル経路の解析からEBERは必ずしも適切な標的分子ではないことが明らかとなった。このため、標的分子の選択とその実験的治療戦略の見直しが必要となり、培養細胞を用いた実験的治療の準備が遅れている。しかしながら、ヒトホジキンリンパ腫における自然免疫経路のシグナル経路解析を十分行ったことで、より適切な治療標的分子が探索できており、実験的治療への準備が整った。
|
Strategy for Future Research Activity |
ヒトホジキンリンパ腫におけるIRF3の非活性化が明らかとなっており、IRF3の活性化を誘導する治療戦略や、IRF3により誘導されるtype 1 interferonの発現を誘導する治療戦略への変更が必要と考えている。現在、EBV感染ホジキンリンパ腫の腫瘍細胞内で特異的に、IRF3とinterferonベータを発現させ、自然免疫経路を活性化させる実験的治療法の構築を目指している。一方で、EBV感染ホジキンリンパ腫では、IRF3を不活性化する因子が存在する可能性がある。現在のところそのような抑制因子は十分解析されていない。このような分子を同定することにより、不活性化因子の抑制といった治療戦略も考えられる。EBV関連腫瘍の病態のさらなる理解や新しい治療に関わっており、このような分子の同定も進めたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、治療標的分子をIRF3に定め、実験的治療と、シグナル経路の解析、その治療効果の判定を進める。 1) ホジキンリンパ腫由来培養細胞を用いた実験的治療として、ホジキンリンパ腫由来の培養細胞にIRF3発現ベクター、またはinterferonベータの発現ベクターを導入し、自然免疫経路の活性化状態と細胞死について検討を行う。 2) IRF3はリン酸化されて活性化状態となり、核内へ移行してinterferonの転写を行う。発現ベクターの導入により、IRF3のリン酸化や核内への移行と転写活性について検討する。 3) EBV感染ホジキンリンパ腫と非感染ホジキンリンパ腫の腫瘍組織からRNAを抽出し、ウイルス由来のRNA分子の発現について探索を行う。IRF3を抑制する可能性のある分子として、BRLF1がありその発現の程度について検討を行う。
|