2013 Fiscal Year Research-status Report
恒常的活性化チロシンキナーゼを発現した造血器腫瘍に対する統合的分子標的療法の開発
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24591384
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
三浦 修 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10209710)
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Keywords | 造血器腫瘍 / 分子標的療法 / チロシンキナーゼ |
Research Abstract |
造血器腫瘍細胞の発症や進展に重要な恒常的活性化チロシンキナーゼ変異体であるBCR/ABL, Flt3-ITDおよびJak2-V617Fを発現した白血病細胞およびモデル造血細胞株を用いて検討を行い、それぞれの変異体に対する阻害薬で活性化を抑制することで、etoposideなどの化学療法薬によるChk1の活性化とChk1依存性のG2/M期での細胞周期arrestを抑制し、Bax活性化、ミトコンドリア膜電位障害、caspase活性化を介したapoptosisの誘導を相乗的に誘導しうることを見いだした。また、GDC-0941やMK-2206等のそれぞれPI3KやAktの阻害薬も、キナーゼ変異体の抑制とほぼ同様の効果をもたらすことを見いだした。特に、imatinibのみでなく第二世代のBCR/ABL陽性白血病治療薬であるdasatinibやnilotinibにも完全耐性を示すBCR/ABLのT315I変異体発現細胞に対しても、GDC-0941やMK-2206により抗癌剤との相乗的apoptosisが誘導される事を見いだした(PLoS One 8:e79478, 2013)。また、p53がp21などの標的遺伝子産物の発現誘導を介して抗癌剤誘導性のChk1活性化を抑制することを見出し、p53の発現誘導を亢進させるnutlin-3がチロシンキナーゼ阻害薬と同様に、G2/M期での細胞周期arrestを抑制しapoptosisの誘導を相乗的に誘導しうる事を示した(投稿準備中)。これらの結果はChk1を介したDNA損傷誘導性チェックポイント活性化調節の分子機構解明へ向けて重要な意義を有するのみでなく、BCR/ABLのT315I変異を含めた治療抵抗性造血器腫瘍に対する化学療法薬と併用した統合的分子標的療法の新規開発に直結しうる臨床的にも極めて重要な意義を有する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
恒常的活性化チロシンキナーゼ変異体がGSK3ßの不活化を介して DNA損傷誘導性の Chk1活性化を抑制恒常的活性化チロシンキナーゼ変異体が GSK3ßの不活化を介して DNA損傷誘導性の Chk1活性化を亢進し治療抵抗性をもたらす分子機構の詳細を明らかにするとの目標に対して、これらの変異体が PI3K/Akt経路の活性化を介することでGSK3ßを不活化し、 Chk1のubiquitin化を介したproteasome系での分解を抑制することで、その活性化とG2/M期での細胞周期 arrestを維持させ、 Bax活性化、ミトコンドリア膜電位障害、 caspase活性化を介した apoptosisの誘導を阻害することを見出し、さらにはE3リガーゼMdm2の阻害によるp53の活性化を亢進させる事で、チロシンキナーゼ阻害薬と同様に、抗癌剤によるChk1活性化抑制により相乗的アポトーシスを恒常的チロシンキナーゼ変異体発現細胞に持たしうる事を見出す等のことで、その一部を達成すると供に、より詳細な分子機構解明の為の実験系を確立することが出来た。また、 T315I変異を有する BCR/ABL発現細胞に対する新規治療法開発へ向けての取り組みにおいても、 sorafenibと DNA損傷反応との相乗効果のみならず、臨床開発中の PI3K阻害薬 GDC-0941や Akt阻害約 MK-2206、さらにはp53の活性化促進薬nutlin-3が sorafenibと同様に、抗癌剤誘導性の apoptosisを相乗的に増強しうることを見いだすことにより、目標達成に向けて着実に研究を進展させることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後更に恒常的活性化チロシンキナーゼ変異体がDNA損傷誘導性のChk1活性化を抑制し治療抵抗性をもたらす分子機構の詳細を明らかにするため、GSK3ßによるChk1のリン酸化部位を同定し、Claspinのリン酸化やユビキチン化による分解機構への関与を明らかにする。さらに、p53によるChk1活性化抑制の分子機構を明らかにする為、p53やp21等の標的遺伝子産物のChk1との細胞内での結合や、ATRによるChk1リン酸化過程に及ぼす影響を解明する。また、分子標的薬と抗癌剤の併用療法による異常チロシンキナーゼのproteasomeを介した分解につき、BCR/ABLやFlt3-ITDを発現した白血病細胞の臨床検体でも検討を行うと供に、E3リガーゼを同定しユビキチン化の分子様式と意義を明らかにする。さらに、Chk1とチロシンキナーゼ変異体のproteasomeを介した抑制機構に対するSTAT5、HSP90や脱ユビキチン酵素( DUB ) の阻害による増強効果を、新規治療法開発へ向けて患者臨床検体やマウス実験モデル系を含めて検証する。
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Research Products
(7 results)