2012 Fiscal Year Research-status Report
多発性骨髄腫における骨髄微小環境の生物学的特性を標的とした新たな治療法の開発
Project/Area Number |
24591409
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
木崎 昌弘 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (20161432)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 多発性骨髄腫 / 幹細胞 / 骨髄微小環境 / 細胞死 / 分子標的療法 |
Research Abstract |
本研究は、多発性骨髄腫の分子病態をより明確にし、分子基盤に基づく新たな治療法を開発することを目的としている。そのために、骨髄腫細胞の増殖に必須なシグナル伝達分子と骨髄微小環境との相互作用を明らかにし、新たな治療標的を明らかにすることを本年度の目的とした。本年度は骨髄腫細胞の増殖に必須のNF-κBを介するシグナルに注目し、その活性を阻害する新たな低分子化合物の作用機構を検討した。われわれは、これまで1'-acetoxychavicol acetate (ACA)がNF-κB阻害活性を有することを見いだし、ACAを構造展開することによりさらに優れた阻害活性を有する種々の誘導体を合成した。その中で、TM-233と名付けた化合物は、種々の骨髄腫細胞株(U266, RPMI8226)や患者骨髄細胞から得たCD138分画細胞の細胞周期をG1期に停止させ、細胞死を誘導した。TM-233は、細胞死関連タンパクの中で細胞死を抑制するMcl-1の発現を低下させた。Mcl-1の上流に位置する分子としてはSTAT3の脱リン酸化が認められたため、TM-233はJAK/STAT系を介してMcl-1の転写を抑制することで、骨髄腫細胞の細胞死を誘導するものと思われた。さらに、骨髄腫細胞を細胞質分画と核分画に分離し、NF-κB活性について検討したところ、TM-233は細胞質におけるp65(RelA)/P50の発現を増加させ、核分画での発現を低下させた。したがって、TM-233は細胞質から核へのNF-κBの移行を阻害することで、NF-κB活性を抑制すると考えられた。興味深いことに、TM-233はプロテアソーム阻害薬bortezomibに耐性となった骨髄腫細胞株の細胞死を誘導し、臨床的にはボルテゾミブ耐性患者への有用性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究においては、増殖シグナルを介する骨髄腫細胞と骨髄微小環境の相互関係を明らかにするために、骨髄腫細胞株を用いた後に、患者骨髄検体より骨髄腫幹細胞を分離し、骨髄ストローマ細胞との関係を検討する予定であった。骨髄腫細胞株および骨髄腫患者細胞を用いた研究は容易に進行したが、患者骨髄検体よりの骨髄腫幹細胞の分画と同定に時間を要している。当初計画では、正常および骨髄腫患者より骨髄単核球を分離し、MACSを用いてCD138分画よりSP細胞を分離、分画して骨髄腫幹細胞として使用する予定であった。しかしながら、骨髄腫検体からのCD138分画の分離効率が悪く、十分な細胞分画が得られないために、骨髄腫幹細胞の分画が困難な状況にある。さらに、幹細胞マーカーとして果たしてSP分画が妥当かとの検討も合わせて行う必要があるが、そのアッセイ系の構築が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の本研究の推進方策としては、骨髄腫細胞と骨髄ストローマ細胞におけるNF-κBを介するシグナル伝達に関する解析を、骨髄腫幹細胞を用いて行うことである。そのためには、骨髄腫幹細胞の分離方法を迅速に確立するとともに、骨髄腫における幹細胞マーカーの同定も合わせて行う必要がある。その上で、骨髄腫幹細胞と骨髄ストローマ細胞のNF-κBを介する相互作用に介在するROSの意義を明らかにしたいと考えている。さらに、われわれが新たに見いだしたNF-κB阻害活性を有するTM-233の分子作用機構の詳細を検討し、分子標的治療薬としての可能性を検討したいと考えている。合わせて、骨髄腫患者より得られた骨髄微小環境を構成する重要な分画である骨髄ストローマ細胞に対する抗体作成にも取り組み、骨髄腫細胞との供培養系において治療薬としての可能性について検討したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(9 results)