2012 Fiscal Year Research-status Report
ヒト化マウスを用いたATL腫瘍幹細胞の同定と機能解析
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24591414
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
浜口 功 国立感染症研究所, 血液・安全性研究部, 部長 (90348780)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | HTLV-1 / ヒト化マウス / モデルマウス |
Research Abstract |
ヒト化マウスを用いたヒトHTLV-1感染症モデルを構築するため、東京臍帯血バンクより譲渡された研究用臍帯血中の単核細胞(MNCs)から磁気ビーズを使ってヒトCD34陽性細胞を単離し、NOG (NOD/SCID/IL2RγKO) マウスへの移植を行った。 マウス1匹あたり3~4 × 105個のヒトCD34陽性細胞を尾静脈より移植した場合、移植後1ヶ月目には既に末梢血リンパ球細胞のおよそ15~55%にヒトCD45陽性細胞が認められたが、50%以上がB細胞(CD19陽性)であり、T細胞(CD3陽性)は見られなかった。しかし移植後3ヶ月目から4ヶ月目にかけてCD3陽性CD4陽性またはCD3陽性CD8a陽性の分化したヒトT細胞の増加が認められ(およそ10~30%)、相対的にB細胞の割合は減少した(およそ15~30%)。 次に我々はヒトCD45陽性CD3陽性細胞が末梢血リンパ球細胞の10%以上となり、かつ50%以上のCD4細胞の分化が認められたマウスを選別して、HTLV-1感染モデルの作製を試みた。マイトマイシンCを添加した培養培地で37℃、1時間処理したHTLV-1感染細胞株MT2をヒト化マウスの腹腔内に2.5 × 106個移植した。現在、移植したマウスの末梢血をFACSとReal-time PCRにより解析し、in vivo でHTLV-1感染T細胞が増殖することを確認している。同様の感染モデルでは移植後4ヶ月以降ATL様のリンパ腫及び白血病を発症することが報告されているため、この腫瘍細胞を免疫不全マウスに連続移植することにより、高い腫瘍原性を維持する細胞集団を同定し、その機能特性を明らかにして行く予定である。 このようにヒト化マウスの作製は順調に進んでおり、HTLV-1を含めた多くのヒト感染症のモデルとして活用する準備が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書では平成24年度の計画として、ヒト化マウスへのHTLV-1感染によるATLモデルマウスの作製とATL-LSC同定及び病態進展機序の解明を行うこととした。現在までに定期的に臍帯血由来造血幹細胞移植を実施することにより、安定したヒト化マウスの作製を行うことができている。また、HTLV-1感染細胞を用いたin vivo感染モデルの構築も計画通り行えている。ただし、過去に同様の系を用いた実験においては、ATL様の病態を発症するまでに4ヶ月程度の期間を必要としたため、現在はHTLV-1感染ヒト細胞の解析を行いつつ、腫瘍化した細胞の出現を待っている段階である。またATL-LSCを同定するためには、さらに数回連続した移植が必要となるため、実際にATL-LSCの解析を行うのは平成25年度となる見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
より効率的なヒト化マウス作製のため、我々は成体マウスを用いたヒト化マウス作製と並行して、マウスの新生児肝臓にヒト造血幹細胞を移植するモデルも作製している。このモデルでは成体マウスの尾静脈への注射する場合と比べてより少ない細胞で、短期間に分化したヒトT細胞をもつヒト化マウスが得られ、長期の感染実験を行うことが可能になるものと期待される。 これらのマウスモデルを用いて、引き続きFACS解析と発現遺伝子プロファイリングを用いた、ATL-LSCの同定と病態発症機序の解明に向けた解析を進める。また平成25年度にはTax-Tgマウスモデルにおいて観察されるようなATL-LSCの局在がHTLV-1感染モデルマウスにおいても認められるかを脾臓および骨髄を中心として、In situ hybridization法や免疫組織化学を用いた組織学的解析法を用いて明らかにして行く。さらに、その知見をもとにATL-LSCの機能を支持するニッチ細胞の有無を検証し、その性状と機能を発現遺伝子解析から解き明かして行く。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度も継続的にヒト化マウスの作製を行うため、マウスの飼育維持管理のための経費、臍帯血の調達に関わる経費、および造血幹細胞の調整に必要とする試薬・培地類購入のために諸経費を使用する。また、ATL-LSC解析としてFACS解析を行うための抗体・試薬類の購入、マイクロアレイによる発現遺伝子プロファイルリングを行うための経費、ATL-LSCニッチ解析に向けた脾臓および骨髄等の組織解析を行うための抗体・染色試薬等の購入、及びニッチ細胞における発現遺伝子解析を行うための経費として使用する計画である。
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Research Products
(2 results)