2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24591422
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
冨山 佳昭 大阪大学, 医学部附属病院, 准教授 (80252667)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柏木 浩和 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10432535)
田所 誠司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80403062)
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Keywords | インテグリンαIIbβ3 / CMK / inside-out signaling / talin-1 / kindlin-3 |
Research Abstract |
血小板インテグリンαIIbβ3は血栓形成の中核をなすタンパク質であり、その機能は病的環境においてダイナミックに変化しており、ポジティプあるいはネガティブに制御されている。本研究は、申請者らが新たに確立したCMK細胞システムを用いて、血小板インテグリン機能をポジティプあるいはネガティブに制御する分子に関して、その分子機構の詳細を明らかにすることを目的としている。 αIIbβ3はアゴニスト刺激によるinside-outシグナルにより瞬時に活性化型に変化し血小板凝集を惹起する。最近αIIbβ3活性化にはtalin-1およびkindlin-3が必須であることが明らかとなってきた。現在までCHO細胞に異所性に発現させたαIIbβ3が用いられていたが、αIIbβ3CHOはアゴニスト刺激に反応せず、CHO細胞にはkindlin-3を発現していない等の欠点を有する。この欠点を補い、αIIbβ3のより生理的な解析を行うため内因性αIIbβ3を発現するヒト巨核球系細胞株CMKを用いた実験系を構築した。ダイナミックに変化するαIIbβ3活性化を的確に検出するため、PAC1の結合速度(initial velocity assay)を用いて解析すると、CMKではPARIペプチドによる刺激によりαIIbβ3が一過性に活性化する。 CMKにおけるαIIbβ3活性化は、CHO細胞とは異なりtalin-1のヘッドドメイン(THD)を強制発現させるのみでは活性化せず、血小板と同じくアゴニスト刺激が不可欠であり、talin-1およびkindlin-3依存性であった。種々のtalin-1変異体を発現させαIIbβ3 活性化におけるtalin-1の機能部位を解析すると、talin-1とβ3膜近傍領域の結合が極めて重要でありtalin-1とこの部位との結合を障害するとαIIbβ3の活性化は完全に消失したが、この部位より遠位にあるβ3のNPxY領域との結合を障害してもαIIbβ3の活性化は消失しなかった。以上よりtalin-1とβ3膜近傍領域の結合がαIIbβ3活性化に必須であることが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、申請者らが新たに確立した血小板インテグリンを生理的に活性化しうるCMK細胞システムを用いて、血小板インテグリン機能をポジティプあるいはネガティブに制御する分子に関して、その分子機構の詳細を明らかにすることを目的としている。前年度のCMKを用いた解析結果をさらに発展すべく、本年度では、talin-1によるインテグリンαIIbβ3の活性化の分子機構の詳細を明らかにできた。CMKは巨核球系の細胞株のため、遺伝子のノックダウンがCHO細胞に較べると困難であり、またその形質の維持にも熟練を要した。一方、過剰発現系での解析は極めて順調であり、αIIbβ3の活性化に関してtalin-1のfull-length、talin head domain(THD)、さらにはこれらの変異体を発現させることにより、talin-1とβ3膜近傍領域の結合が極めて重要であることが明らかとなり、従来のαIIbβ3発現CHO細胞系との相違を明らかにすることに成功した。 Talin-1は血小板活性化に伴い、まず高親和性の結合部位であるβ3のNPxY領域に結合し、その後β3の膜近傍領域に結合すると考えられている。CHO細胞の解析結果では、膜近傍領域よりもNPxY領域がより重要との成績であった。しかしながら、今回の我々の検討にてNPxY領域よりもβ3の膜近傍領域とtalin-1の結合がより重要であることが示された。 上記にように、CMK実験系は極めて優れた実験系であり順調に成果が挙がっている。本実験系によりαIIbβ3活性化の分子機構をより詳細に解析することが可能になると考えられ、あらたな血小板機能制御法の開発に寄与することが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度までの解析を発展すべく、申請者が開発したCMK細胞システムを中心にαIIbβ3活性化機構を解明していく予定である。血小板およびCMK細胞系では、インテグリンαIIbβ3活性化に関しては、アゴニスト刺激が必須である。さらに血小板ではその活性化が持続するのに対し、CMKでは活性化は一過性であり持続しない。一方従来のCHO細胞系では、インテグリンαIIbβ3の活性化はアゴニスト刺激には反応できず、伝達経路が未完成であると考えられる。さらにCHO細胞では、THDの過剰発現にみによっても容易にαIIbβ3は活性化するため、活性化の抑制系も未発達であると考えられる。言い換えると、これら細胞系によるαIIbβ3活性化の分子機構の差違は、活性化維持機構の差、活性化抑制分子の差、に起因すると考えられる。今後はこれらの差違に注目して、αIIbβ3活性化に重要な分子に関する解析を推進する。 具体的には、活性化維持機構としてP2Y12およびRap1B、活性化抑制分子としてα-actinin、に注目してCMK細胞系を中心とした解析を行う。さらにRap1Bドミナントネガティブノックインマウス(Rap1B DN)のを作製とともにその繁殖を行っているが、ホモマウスは胎生致死であり繁殖できない。そのためRap1B DNのヘテロマウスを用いて出血時間や血栓形成モデルを用いてin vivo解析を行う予定である。さらに先天性血小板減少症患者より見出した、αIIbβ3活性化変異[αIIb(R995W)]に関して、そのin vivoでの影響をノックインマウス[αIIb(R990W)]を作製し解析する予定である。 このように、本研究では申請者の開発したCMK細胞システムを基盤としてインテグリンαIIbβ3の活性化機構の詳細をポジティブおよびネガティブの観点よりさらに解明し、新たな血小板機能制御法の開発をめざす。
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Research Products
(8 results)