2013 Fiscal Year Research-status Report
免疫記憶細胞化した遺伝子改変T細胞を利用する白血病に対する新規細胞免疫療法の開発
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24591426
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
藤原 弘 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (20398291)
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Keywords | 細胞傷害性Tリンパ球(CTL) / T細胞受容体遺伝子(TCR)遺伝子 / 免疫記憶細胞 / 抗白血病効果 / 白血病性幹細胞 |
Research Abstract |
腫瘍抗原特異的T細胞受容体(T-cell receptor: TCR)遺伝子改変T細胞(TCR-T細胞)用いた「がんに対する細胞免疫療法」は、現在、アメリカを中心に臨床試験が行われ、その有効性を示す知見が集積されて来ているが、白血病に対する細胞免疫療法の臨床試験は始まったばかりである。我々は、2013年7月に白血病抗原WT1を、日本人に最も頻度が高いHLA-A24拘束性に認識するTCRを、独自の高効率レトロウイルスベクター(WT1-siTCR vector)に組み込み遺伝子導入したTCR-T細胞を利用して白血病・骨髄異形成症候群を治療する日本初の多施設共同臨床試験を開始した(UMIN 0001159)。 並行した基盤的検討として、白血病長期寛解を達成する上で重要な因子である①白血病抑制効果の増強・長期間の維持、②白血病性幹細胞の抑制の2点を達成するために、直接白血病細胞を傷害する遺伝子改変CD8陽性細胞傷害性T細胞(WT1-siTCR-CTL)の記憶細胞化と、白血病性幹細胞の局在部位である骨髄ニッチへのTCR-T細胞の集積性を高めることを目的として、同じWT1-siTCR遺伝子を導入したCD4ヘルパーT細胞(WT1-siTCR-HTL)の有用性に注目して研究を継続して来た。その結果、同時投与されたWT1-siTCR-HTLは、様々な機序を介して、WT1-siTCR-CTLの血病細胞傷害活性を増強し、セントラルメモリー・エフェクターメモリー細胞への分化を促進した。さらに骨髄ニッチへの遺伝子改変T細胞の集積性を高め白血病性幹細胞を標的とする細胞免疫療法の実現が視野に捉えられた。 また、異なる視点から、モノクローナル抗体を利用する細胞免疫療法の開発へ向けた新たなエフェクター細胞を開発し論文発表した。加えて、難治性成人T細胞白血病を対象とするTCR-T細胞療法の開発も行い論文発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床試験に使用している(クリニカル・グレード)WT1-siTCRベクターを用いて遺伝子改変したWT1-siTCR-HTLは白血病細胞を認識して活性化されると、ケモカインCCL4-CCR5の系を介してWT1-siTCR-CTLを、自身が攻撃している白血病細胞へ向かって集積させて、Th1ヘルパー機能を介して抗白血病作用を増強した。同時に、遺伝子改変していないCD4陽性T細胞と比較して、統計的に有意差を以てWT1-siTCR-CTLのメモリー細胞化を促進した。さらに、このWT1-siTCR-HTL自身もCTLとは異なる機序で白血病細胞をある程度傷害出来ること、ケモカインCXCR4-CXCL12系を介して輸注した免疫不全マウス骨髄へ移行することを突き止めた。すなわち、WT1-siTCR-HTLを併用することで白血病性幹細胞をも射程内に出来る可能性が示された。これらは、より高い臨床的抗白血病効果に繋がることを示唆している(論文投稿中)。同時に我々は、現在、WT1-siTCR-T細胞を用いる骨髄性白血病・骨髄異型性症候群に対する細胞免疫療法の臨床試験を実施しており、患者リクルートと実地臨床への導入に向けた様々なデータを集積中である。 次の段階は、①臨床試験で得られたデータを基に、試験管内で得られた知見の確認を進めていく。加えて②試験管内では、人工ヘルパーCD4陽性T細胞はTh1に限定されている。しかし、より長期に渡るCTLの機能強化にはTh17細胞の関与や、Programmed death-1等に代表される免疫チェックポイント分子への介入が必要なことが明らかになって来ている。これらの課題に対応し、より観察期間の長い実臨床に近いモデルを作成して、この治療法の最適化に向けた検討を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究最終年度に当たる今年度は、短期的には現在までに得られた結果を論文報告して前臨床試験からの改善点を明らかにする。合わせて、並行して進めている臨床試験から今後得られる情報を元に、患者体内での人工ヘルパーCD4細胞の抗白血病性CTLの免疫記憶化への関与を臨床的に評価する。本研究は、決してこれで完成するものでは無い。中期的には、白血病抗原を認識するT細胞受容体の抗原親和性の改善、受容体構造の改良による白血病応答性の改善が、包括的にこの人工ヘルパーCD4細胞と人工CTL併用を併用した抗白血病細胞免疫療法の有効性の長期化に寄与するか否かを明らかにする。加えて、現在の人工ヘルパーCD4細胞は、Th1型ヘルパーCD4細胞に限定されているが、免疫記憶細胞形成に重要とされるTh17型人工ヘルパーCD4細胞を作製して、その臨床的有効性を検討する。同時に、このTh17型人工ヘルパーCD4細胞の至適培養系確立へ向けた人工抗原提示細胞系の開発を行う。さらに、長期的課題として、抗白血病細胞免疫療法の最終目的は、白血病再発を長期に渡って抑制できる細胞免疫系を患者に輸注導入することにあるので、輸注したTCR-T細胞の寿命と効果延長に関与する免疫チェックポイント阻害の検討や、治療対象である骨髄性白血病細胞自体が持つ免疫抑制作用(骨髄細胞由来免疫抑制細胞:MDSC様作用)を回避する方法の確立へ向けた検討を進めて、より臨床的に実効性のある抗白血病細胞免疫療法の確立を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
免疫不全マウスの購入スケジュールの都合上、翌年度に回す予定とした。 動物実験に関連した抗体試薬の購入あるいは免疫不全マウスの購入の何れかにあてる予定。
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Research Products
(30 results)
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[Journal Article] Gene-modified human α/β-T cells expressing a chimeric CD16-CD3ζ receptor as adoptively transferable effector cells for anticancer monoclonal antibody therapy.2014
Author(s)
Ochi F, Fujiwara H*, Tanimoto K, Asai H, Miyazaki Y, Okamoto S, Mineno J, Kuzushima K, Shiku H, John Barrett J, Ishii E, Yasukawa M.
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Journal Title
Cancer Immunology Research
Volume: 2(3)
Pages: 1-14
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Adoptive transfer of genetically engineered WT1-specific cytotoxic T lymphocytes does not induce renal injury.2014
Author(s)
Asai H, Fujiwara H*, Kitazawa S, Kobayashi N, Ochi T, Miyazaki Y, Ochi F, Akatsuka Y, Okamoto S, Mineno J, Kuzushima K, Ikeda H, Shiku H, Yasukawa M.
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Journal Title
Journal of Hematology and Oncology
Volume: 7(1)
Pages: 3
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Development of a novel redirected T cell-based adoptive immunotherapy targeting human telomerase reverse transcriptase for adult T-cell leukemia.2013
Author(s)
Miyazaki Y, Fujiwara H*, Asai H, Ochi F, Ochi T, Azuma T, Ishida T, Okamoto S, Mineno J, Kuzushima K, Shiku H, Yasukawa M.
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Journal Title
Blood
Volume: 121(24)
Pages: 4894-4901
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Adoptive transfer of genetically modified Wilms' tumor 1-specific T cells in a novel malignant skull base meningioma model.2013
Author(s)
Iwami K, Natsume A, Ohno M, Ikeda H, Mineno J, Nukaya I, Okamoto S, Fujiwara H*, Yasukawa M, Shiku H, Wakabayashi T.
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Journal Title
Neuro-Oncology
Volume: 15(6):
Pages: 747-758
DOI
Peer Reviewed
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