2012 Fiscal Year Research-status Report
マイナー抗原特異的免疫療法による免疫誘導能評価の標準化に関する研究
Project/Area Number |
24591435
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | 愛知県がんセンター(研究所) |
Principal Investigator |
赤塚 美樹 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍免疫学部, 客員研究員 (70333391)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 同種移植 / 免疫学 / 細胞治療 / ワクチン |
Research Abstract |
本研究の目標は、標準化可能な抗原提示細胞の開発であり、抗原エピトープ、β2ミクログロブリン、拘束性HLA分子をシングルチェインで発現するベクターの開発と、すべての対象マイナー組織適合抗原(mHAg)系の細胞の準備である。mHAgで系が作動した場合は、WT1など他の主要な抗原系についても抗原提示細胞を作成する。 平成24年度の計画は、①mHAgエピトープ・β2ミクログロブリン・拘束性HLAをシングルチェインで発現できるプラスミドを対象とする各mHAgについて準備し、②レトロウイルスを用いてこれらを安定発現し、アロHLAを欠く抗原提示細胞株(クローン化)を樹立するほか、③抗原発現量を調整しうる発現プロモーターの改変を行うことであった。 ①および②の課題に関しては、申請時点で完成していたHLA-A*24:02拘束性のACC-1Y mHAg以外のmHAg提示ベクターに加え、本年度はACC-1C (HLA-A*24:02)、HA-1 (HLA-A*02:01, -A*02:06)を作成し、レトロウイルスパッケージング細胞に導入、そのvirus上清を感染させることで721.221 LCL、K562細胞表面での発現を確認した他、mHAgに対応するCTLによって認識され、良好に傷害されることを確認済みである。作成した抗原提示細胞の一部やHLA導入細胞は、共同研究として他施設への譲渡も行っている。 抗原提示細胞のクローン化に関しては、課題③とした、Kozak配列改変による発現量のコントロールが不十分であったために実施していない。721.221 LCL、K562等のクローニングは容易であるので、発現量調節が解決しだいクローニングを行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度に発現量の調節系を確立する予定であったが、リボゾームの認識効率にもっとも影響を与えるとされるKozak配列を最良型(CCGCC)、Wild型、不良型で3種類のベクターを作成しACC-1Yの系で発現量を解析したが、有意な差を認めなかった。レトロウイルスのLTRプロモータそのものが強すぎてmRNAが大量に作られて過ぎている可能性があり、原因を検討中である。 この問題が生じたため、作成予定であったHLA-B*44:03拘束性のACC-2およびACC-6については、エピトープとβ2mの作成は終了していたものの、ベクターへの組み込み、ウイルス産生系への移行を一時中断している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の作業で発生した抗原発現量を調整の問題を解決する。この問題点は、本研究費申請時にある程度予見されたので、平成25年度の研究課題として挙げてあったものである。Kozak配列の改変には限界があったため、ベクターを変更し、たとえばテトラサイクリンでmRNAの発現量を調節できるプロモータを導入することを考慮している。もう1つの可能性として、mRNAの3’側にmRNAを不安定化する配列の導入を考慮する。 次いで、平成25年度の検討課題である、In vitroアッセイ系の確立および、mHAg不適合移植症例の移植後末梢血試料を用いたアッセイを行う。過去に樹立したmHAg特異的CTLの細胞傷害性の確認は終了したので、本年度はCTLクローンの活性化能、増殖刺激能を確認する。この際、IL-2、IL-7、IL-15などのサイトカイン添加の必要性、至適濃度とスケジュールを決定する。 次いで、抗原提示細胞の提示mHAgに対応するmHAgの不適合移植を受けた患者末梢血を刺激し、CTLの誘導能の確認を行う。誘導能の評価は刺激前後のHLAテトラマー陽性率、interfron-γ産生細胞数の増幅効率で行う。 以上の検討の上で方法論が確立できた場合に限り、保存細胞数に限りのある貴重なワクチン臨床試験を通じて採取、凍結保存された末梢血単核球細胞試料について同一条件で培養を行い、mHAg特異的CTL免疫反応のワクチンによる誘導・ブースター効果について評価する。なお、ワクチン臨床試験は別途進行中であり、評価対象の試料は蓄積されつつある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は上述のように、プロモータ系の改変が大きな課題となる。テトラサイクリンやその他の薬剤誘導型ベクターを購入し、発現量のコントロールが可能か検討する。また、mRNAの3’配列を変更する必要が生じた場合は、DNAの人工合成も必要となる。 CTLのアッセイには細胞傷害試験用のアイソト-プ等が必要となるほか、サイトカイン測定のためのELISAキットないしは抗体ビーズの購入が必要となる。 またもし単鎖エピトープ-β2m-HLA抗原提示細胞で新たに誘導されるCTLの特異性(内在性に産生されるエピトープを提示する細胞を認識できないなど)に問題が生じた場合は、本質的に抗原提示細胞系を再構築する必要が発生するため、特定の性質をもった細胞株の購入などに研究費を使う可能性がある。
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