2012 Fiscal Year Research-status Report
フローサイトメトリーによる膠原病患者抗血管内皮細胞抗体の対応抗原の同定と機能解析
Project/Area Number |
24591438
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤井 博司 東北大学, 大学病院, 講師 (30531321)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 膠原病 / 血管内皮 / 自己抗体 |
Research Abstract |
膠原病患者血清より、強い抗血管内皮細胞抗体(AECA)活性を持つ血清をスクリーニングし、それらの自己抗原同定を行った。今年度は特に疾患標識マーカーが存在しない高安動脈炎の自己抗体同定を重点的に行った。AECA活性を持つ膠原病患者IgGで染色後、抗血管内皮細胞の対応抗原を発現する細胞をFACSにてソーティング後クローニングを行った。クローニング後、血管内皮細胞由来の自己抗原を同定しその機能解析も行った。 AECA活性は、SLE(systemic lupus erythematosus; 全身性エリテマトーデス)、関節リウマチ、高安動脈炎で特に高率に認められた。初回の検討では、SLE患者由来のIgGを用いたソーティングにより、2つの異なるクローンを単離した。両クローン共に、FLRT2のcDNA挿入を認めた。HUVECはFLRT2を恒常的に発現しており、ソーティングを行ったAECA IgGはFLRT2を移入した細胞に選択的に結合した。以上よりAECAの新規対応自己抗原としてFLRT2を同定した。抗FLRT2抗体はSLEにおけるAECAの20.5%を占めており、主要なエピトープはunique regionに存在していた。抗FLRT2抗体価は血清中の補体価と負の相関を示し、さらに抗FLRT2抗体はFLRT2発現細胞に対して補体依存性の細胞傷害性を示した。これらの結果は今年度に論文として出版された。 抗FLRT2抗体の同定により、AECAの対応抗原には多様性があると考えられ、異なる疾患や病態において更なる対応抗原の同定を試みた。その結果、溶血性貧血を呈したSLE患者からはPk抗原を、関節リウマチ患者血清からはICAM1(intercellular adhesion molecule 1)をそれぞれ対応抗原として同定した。これらの結果も今年度に論文として出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規膜型自己抗原を同定するシステムの確立に加えて膠原病患者より複数の膜型自己抗原を同定できた。レトロウイルスベクターと、フローサイトメトリーを用いた膜表面蛋白自己抗原の同定系をSerological identification system for Autoantigens using a Retroviral vector and Flow cytometry (SARF)と命名し、次年度も新規膜型蛋白の同定、解析へ進みことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 抗FLRT2抗体による血管内皮細胞機能の解析 FLRT2はその構造から接着分子、シグナル伝達分子として機能することが示唆されている。抗FLRT2抗体の病変形成における役割を明らかにするために、抗FLRT2抗体を用いて血管内皮細胞と共培養することにより血管内皮細胞機能(炎症性分子の発現、細胞死、血管新生)についての実験を行う。血管内皮細胞には上述のHUVEC、腎糸球体内皮細胞、肺微小血管内皮細胞、皮膚微小血管内皮細胞を用いる。 (2)膠原病患者由来AECAを用いた新規膜型自己抗原のクローニング 今回確立したSARFを用いて膠原病患者における新たな膜型自己抗原の同定を試みる。特に今年度得られた成果から高安動脈炎における抗血管内皮細胞抗体活性が強いことが注目された。当教室は活動性のある高安動脈炎の血清をすでに複数有しているためこれらを用いて高安動脈炎における新規膜型自己抗原の同定を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は新規自己抗原同定システムの開発が当初の予定以上に順調に進んだため、それを用いて新たな自己抗原の同定に力点を置いた。そのため、当初予定していた、同定した自己抗原の機能解析は次年度より行うこととなったため繰越金が出来た。翌年度より実施する機能解析の系を樹立し、細胞死、血管新生などの細胞機能における自己抗原、自己抗体の意義を解析するために必要な経費として、平成25年度請求額と合わせて使用する予定である。
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