2012 Fiscal Year Research-status Report
microRNAを標的とした関節リウマチの新規治療法開発と新病態機序解明への挑戦
Project/Area Number |
24591443
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
宮坂 信之 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30157622)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
溝口 史高 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60510360)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 関節リウマチ / microRNA / microRNA阻害剤ライブラリー / Il-6 / MMP-3 |
Research Abstract |
特定分子を標的とした生物学的製剤の誕生により、関節リウマチ(RA)の治療は飛躍的に向上したが、依然、治療抵抗例や易感染性を伴う生物学的製剤の使用困難例を多数認め、RAの病態生理学における新たな標的を対象とした安全性の高い治療法の開発が必要不可欠である。micro RNA(miRNA)は、複数の標的遺伝子の発現を転写後レベルで抑制し、様々な病的状態に関与する。故に、miRNAの発現を制御することは、正常から逸脱した過剰な免疫反応や炎症を適切なレベルへ調節し、関節リウマチ(RA)の新たな治療標的として、有効性と高い安全性が期待される。 そこで我々は、miRNA阻害剤libraryを用いたスクリーニング法にて同定したRAの治療標的に成り得るmiRNA の病態学的作用機序を、標的遺伝子の同定を通して解明することと、また、関節炎モデルマウスを用いたmiRNA阻害による治療効果の検討を通じ、miRNAを標的としたRAに対する新らたな作用機序を持つ治療法の開発を、本研究の目的とした。 平成24年度は、miRNA阻害剤libraryを用いた網羅的機能解析法にてRA滑膜線維芽細胞(RASF)からのIL-6とMMP-3産生量を有意に変化させ、RAの病態に関与していると考えられ、他のRA患者のRASFにおいても再現性を確認した数種類の治療標的候補miRNAの機能解析のために、まず治療標的候補miRNAの標的遺伝子を探索した。具体的な探索方法としては、RASFにおいてIL-6、MMP-3の発現に対し抑制性の働きをする遺伝子を標的遺伝子とし、複数のmiRNAデータベースと各種生物学的分子の相互作用(パスウエイ)を解析するソフトを利用し、1つのmiRNAに存在する複数の標的遺伝子から、それぞれの治療標的候補miRNAに共通する標的遺伝子を絞り込んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書提出段階では、平成24年度には、miRNA阻害剤libraryを用いた網羅的機能解析法より同定したRAの治療標的候補miRNAの標的遺伝子を推定し、その可能性をWestern blot法やルシフェラーゼレポーターアッセイ法にて確認することを第一目標に掲げていた。また、治療標的候補miRNA阻害による関節炎に対する治療効果を検証するのに際し、これまで当研究室にて確立しているアデノウイルスベクター法により、目的とした候補miRNAの阻害を確実に行えるか否かを確認するため、in vitroにて、アデノウイルスベクターをRASFへ感染させ、miRNA阻害剤使用時と同様の、RASFからのIL-6、MMP-3産生量の変化が得られるかを確認する予定であった。 しかし、治療標的候補miRNAの標的遺伝子探索において、当初計画していたmiRNAデータベースを用いてRASFのIL-6、MMP-3の発現過程上、抑制性の働きが既知の蛋白であるp21、Rb、IB等の遺伝子に対する治療標的候補miRNAの関与を検証する方法と、データベースより予想される各々の治療標的候補miRNAの複数の標的遺伝子の内、サイトカイン・プロテアーゼ産生抑制や細胞増殖抑制に働く遺伝子を探索し検証する方法では、情報量が膨大となり、至適な標的遺伝子を抽出するのが困難であった。検索ツールとして、各種生物学的分子の相互作用(パスウエイ)を解析するソフトを組み合わせた結果、治療標的候補miRNAに共通する標的遺伝子を絞り込むことに成功したが、上記の理由により時間を費やしてしまったために、実験の進捗は当初の計画よりは遅れてしまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度まで、ヒトRASFを用いて、RAの治療標的候補miRNAの同定と、その標的遺伝子をmiRNAデータベースとパスウエイ解析ソフトより推定した。平成25年度は、前年度に行う予定であった治療標的miRNAの推定標的遺伝子への転写後調節の可能性につき、治療標的候補miRNAを阻害した際や前駆体導入にてmiRNAを過剰発現させた際のWestern blot法やルシフェラーゼレポーターアッセイ法での発現制御の評価にて直接確認する。 次に、治療標的候補miRNA阻害による関節炎に対する治療効果を解明するため、アデノウイルスベクターを用いた系にて検討を行う。アデノウイルスベクターをRASFやコラーゲン誘導関節炎マウスモデルへ感染させ、治療標的候補miRNAを阻害した際の、RASFからのIL-6、MMP-3産生量の変化や実際に生体内における関節炎に対する治療効果を評価する。 平成26年度は、平成25年度に進めていた治療標的候補miRNA阻害による関節炎マウスモデルへの治療効果検証実験を継続し、治療標的となる真のmiRNAを同定する。なお、単独のmiRNAの阻害にて十分な治療効果が得られない場合は、複数の治療標的候補miRNAを同時に阻害し、治療効果の検討を行う。またmiRNAデータベースより探索した治療標的候補miRNAに対する標的遺伝子の結果も統合し、RAの病態生理におけるmiRNAの働きを考察し、新たな病態生理学的機序解明へと発展させる。また一連の実験より得られた知見を学会や論文を通し、積極的に世間へ公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「現在までの達成度」の項目に記した様に、当初平成24年度に施行予定であった治療標的miRNAの推定標的遺伝子への転写後調節の可能性を検証するためのWestern blot法やルシフェラーゼレポーターアッセイ法の実験や、アデノウイルスベクターを用いた実験が未実施であるため、次年度使用額が生じることとなった。翌年度分の請求助成金と併せ、Western blot, ルシフェラーゼレポーターアッセイ用試薬費用と、in vivoでの関節炎動物モデルを用いたmiRNAを標的(アデノウイルスベクターによるmiRNA阻害)とした治療法の開発としての実験動物代として主に使用予定である。また、得られた研究成果を社会・国民へ発表するために国内外の学会への積極的な参加を予定しており、旅費としての使用も考えている。
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