2013 Fiscal Year Research-status Report
microRNAを標的とした関節リウマチの新規治療法開発と新病態機序解明への挑戦
Project/Area Number |
24591443
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
宮坂 信之 東京医科歯科大学, 医学部, 非常勤講師 (30157622)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
溝口 史高 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60510360)
|
Keywords | 関節リウマチ / micro RNA |
Research Abstract |
特定分子を標的とした生物学的製剤の誕生により、関節リウマチ(RA)の治療は飛躍的に向上したが、依然、治療抵抗例や易感染性を伴う生物学的製剤の使用困難例を多数認め、RAの病態生理学における新たな標的を対象とした安全性の高い治療法の開発が必要不可欠である。micro RNA(miRNA)は、複数の標的遺伝子の発現を転写後レベルで適度に抑制し、様々な病的状態に関与する。故に、miRNAの発現を制御することは、正常から逸脱した過剰な免疫反応や炎症を適切なレベルへ調節し、RAの新たな治療標的として、有効性と高い安全性が期待される。 我々は、miRNA阻害剤libraryを用いた網羅的機能解析法にて同定した、RAの治療標的に成り得るmiRNA (治療標的候補miRNA)のRAにおける病態学的作用機序を、標的遺伝子の同定を通して解明し、RAに対する新らたな作用機序を持つmiRNAを標的とした治療戦略を提唱することを本研究の目的とした。 平成24年度は、miRNA阻害剤library法でRA滑膜線維芽細胞(RASF)からMMP-3とIL-6産生量を減少させ、RAの病態に関与すると考えられた数種類の治療標的候補miRNAの機能解析のために、治療標的候補miRNAの標的遺伝子を探索した。具体的には、RASFにおいてMMP-3、IL-6の発現に対し抑制的に働く遺伝子を標的遺伝子とし、複数のmiRNAデータベースと各種生物学的分子の相互作用(パスウエイ)を解析するソフトを利用し、1つのmiRNAに存在する複数の標的遺伝子から、数種の治療標的候補miRNAに共通する標的遺伝子(遺伝子X)を絞り込んだ。 平成25年度は、遺伝子Xが、実際に治療標的候補miRNAの標的遺伝子である可能性を検証した。具体的には、治療標的候補miRNAの阻害剤をそれぞれRASFに導入した際に、RASFにおける標的遺伝子Xのタンパク発現が対照と比較し亢進していることをWestern blot法で確認し、そしてその結果としてMMP-3、IL-6産生が減少していることをELISA法にて確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
交付申請書提出時、平成24年度には、miRNA阻害剤library法で同定したRAの治療標的候補miRNAの標的遺伝子を推定し、その可能性をWestern blot法やルシフェラーゼレポーターアッセイ法にて確認することを計画した。平成25年度は、治療標的候補miRNA阻害の関節炎に対する治療効果を検証するため、アデノウイルスベクターをRASFやコラーゲン誘導関節炎マウスモデルへ感染させ、治療標的候補miRNAを阻害した際の、RASFからのMMP-3、IL-6産生量の変化や実際に関節炎モデルに対する治療効果を評価する予定であった。 しかし、平成24年度に、RAの治療標的候補miRNAの標的遺伝子を探索する過程で、当初計画していた探索方法では情報量が膨大になり、至適な標的遺伝子を抽出するのが一時困難な状況となった。各種生物学的分子の相互作用(パスウエイ)を解析するソフトを新たに検索ツールとして組み合わせることで、治療標的候補miRNAの標的遺伝子を推定できた(標的遺伝子X)が、この段階で多大な時間をロスした。 平成25年度は、解析ソフト上、推定された標的遺伝子Xが、実際に複数の治療標的候補miRNAの標的である可能性をWestern blot法とルシフェラーゼレポーターアッセイ法にて確認することを第1目標に計画を変更したが、ルシフェラーゼレポーターアッセイ法はまだ遂行していない。標的遺伝子Xが治療標的候補miRNAの実際の標的である可能性をWestern blot法で確認した際、標的遺伝子Xのタンパク発現の亢進の程度が当初期待していた亢進の程度より低い結果となった。今回のRASFを用いた一連の実験では、RASFの培養環境を実際のRA患者の病態と類似させるため、炎症性サイトカインであるTNF-aを加えているが、加えるTNF-a濃度の再検証や、RASFが発現する標的遺伝子Xのタンパクの評価時間(タンパク回収時間)の再検討等を行っていたため、計画が遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、ヒトRASFを用いて、RAの治療標的候補miRNAの同定と、その標的遺伝子XをmiRNAデータベースとパスウエイ解析ソフトより推定した。平成25年度は、治療標的miRNAの推定標的遺伝子Xの転写後調節の可能性を、RASFに治療標的候補miRNAの阻害剤を形質導入し、標的遺伝子Xのタンパク発現亢進をWestern blot法で検出して確認した。 RASFに治療標的候補miRNA阻害剤を導入した際の標的遺伝子Xのタンパク発現推移を検証している過程で、RASF培養時に追加するTNF-の有無により、治療標的候補miRNAが標的遺伝子Xに及ぼす抑制効果に違いが生じることが判明した。この違いを説明する仮説の検証が、RAの治療標的に成り得るmiRNAとその標的遺伝子の病態学的作用機序の解明には重要であると考えるため、平成26年度は、まずこの仮説の検証のために、TNF-a存在下、非存在下におけるRASFの標的候補miRNAの発現量の違いをRT-PCR法にて評価する。また、治療標的miRNAの推定標的遺伝子Xの転写後調節の可能性の続きとして、ルシフェラーゼレポーターアッセイ法での発現制御の評価を行う。 交付申請書提出時には、治療標的候補miRNA阻害の関節炎に対する治療効果を検証するため、関節炎マウスモデルを用いたin vivoの実験も計画していたが、本年度が研究最終年度に当たるため、まずは本年度までの一連のin vitroの実験で得られた結果から、RAの病態生理におけるmiRNAとその標的遺伝子の働きを考察し、新たな病態生理学的機序解明へと発展させ、これらの知見を論文化し、世間へ公表することを優先する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「現在までの達成度」の項目に記した様に、当初平成24、25年度に施行予定であった治療標的miRNAの推定標的遺伝子への転写後調節の可能性を検証するためのルシフェラーゼレポーターアッセイ法の実験や、関節炎マウスモデルを用いたin vivoでの治療標的候補miRNA阻害の関節炎に対する治療効果検証実験が未実施であるため、次年度使用額が生じることとなった。 「今後の研究の推進方策等」の項目に記した様に、平成26年度は、TNF-a存在下、非存在下におけるRASFの標的候補miRNAの発現量の違いをRT-PCR法にて評価することを中心的に進める予定のため、PCRの実験を行うのに際し必要な試薬に研究費を主に使用する予定である。ルシフェラーゼレポーターアッセイ用試薬の購入も検討している。また、得られた研究成果を社会・国民へ発表するために国内外の学会への積極的な参加を予定しており、旅費としての使用も考えている。
|