Research Abstract |
関節リウマチ(RA)における炎症性骨破壊には破骨細胞が主要な役割を果たしている。申請者はRA滑膜組織培養において破骨細胞が形成され、in vitroで骨吸収を来す過程でIL-17 familyの変動に着目し、炎症性骨破壊に果たすIL-17 familyの役割を明らかにする。昨年度は、IL-17ファミリーのRA滑膜炎組織における局在を検討し、滑膜表層細胞下に浸潤する単核球にIL-17A,IL-17F陽性細胞の集積を確認した。本年度は、RA滑膜組織・細胞培養においてin vitroで破骨細胞が形成される過程におけるIL-17family の変動、Th17細胞が産生するサイトカインやTh17細胞の分化に関わるサイトカインの変動を検討し、変形性関節症(OA)滑膜組織・細胞培養におけるサイトカインの変動と比較した。 RA患者4例、OA 患者4例より同意のもと、人工関節置換術時に滑膜組織を採取した。滑膜組織を細切し短時間培養後、組織由来の細胞を回収し、再び培養した。 滑膜組織・細胞の培養2, 4, 6, 10, 13-15日目の培養上清のIL-17 A,IL-17F,IL-6, IL-21,22,23, TGFβ,TNF, TNFR,VEGF,MCSF, RNAKL, OPGなどのサイトカインを多項目同時解析手法(Multiple Analyte Profiling: MAP)で解析した。 その結果、IL-1, IL-6, TNFαといった炎症性サイトカインは培養初期に産生量が多く,IL-17 、IL-23 、TGFβ、MCSF,VEGF,RANKL, OPGは培養後期で産生が増加した。この中で、IL-23,TGF β、MCSF,VEGF,RANKL, OPGはRA滑膜細胞培養でOA 滑膜細胞に比較して有意に産生が増加し,OA滑膜とは異なるサイトカイン産生パターンを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、関節リウマチ(RA)患者の膝関節手術例が少なく,滑膜炎組織や培養滑膜細胞を用いて検討する予定であったサイトカインの変動解析が多数例でできなかった。しかし、少数例で行った検討では、RA滑膜炎組織にはIL-23,IL-22,MCSF, VEGF, RANKL, OPGなどRA滑膜とOA滑膜では全く異なる産生パターンを示すサイトカインが明らかになったため、これらのデータを確認するため,症例を増やすと同時に、これらのサイトカインの骨髄培養における破骨細胞形成への影響をin vitroで検討する計画につながった。 また,少量の培養上清中の多数のサイトカインを同時に測定する多項目同時解析手法(Multiple Analyte Profiling: MAP)キットは、IL-17/IL-23系、破骨細胞分化系のサイトカインをanalyteとして搭載するため、受注生産の上、海外輸入のため入手するのに時間を要し、次の段階の検討へ移れなかった 。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,まず滑膜組織を複数のRA, OA患者より採取し、滑膜細胞からの破骨細胞の形成過程におけるIL-17 /IL-23 axisの変化を解析する。多項目同時解析手法(Multiple Analyte Profiling:MAP)を用いて、サイトカインの培養上清中の濃度を網羅的に解析し、今年度の研究成果として明らかになったRA滑膜細胞培養で特異的に産生されているIL-17A,IL-17F,IL-22,IL-23, RANKL,OPG,TGFβ の変動を検証する。 そして、これらのサイトカインの変動と形成された破骨細胞(TRAP陽性多核細胞)数との関連を検討する。 さらに、ラットあるいはマウス骨髄細胞培養系を用いて、IL-17ファミリーやTh17 細胞の分化や増殖、生存及びサイトカイン産生を調節しているIL-17A,F, IL-22, TNFα, IL-6およびTGFβ,IL-21, IL-23の破骨細胞形成への影響を検討する。 これらの研究結果をふまえて、RA滑膜細胞由来破骨細胞が形成される過程におけるIL-17/IL23 axisの役割を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、関節リウマチ(RA)患者の膝関節手術例が少なく,滑膜炎組織や培養滑膜細胞を用いて検討する予定であったサイトカインの変動解析が多数例でできなかったため、多数のサイトカインを同時に測定する多項目同時解析手法(Multiple Analyte Profiling: MAP)キットの購入数が少なかった。さらに多数のサイトカインを同時に測定する多項目同時解析手法(Multiple Analyte Profiling: MAP)キットはIL-17/IL-23系、破骨細胞分化系のサイトカインをanalyteとして搭載するため、受注生産の上、海外輸入のため入手するのに3カ月もの時間を要し、次の段階の検討へ移れなかった。 収集したRAあるいは変形性関節症(OA)滑膜組織・細胞培養上清のIL-17ファミリーおよびTh-17細胞が産生するその他のサイトカイン(TNFα, IL-6, IL-22)やTh17細胞の分化誘導に関わるIL-23,IL-21,TGFβ,Th1および Th2 サイトカインを同時に定量する多項目同時解析手法(Multiple Analyte Profiling:MAP)を行うための測定Kitを購入する。ラットあるいはマウスの骨髄細胞を用いた破骨細胞形成系において,RA滑膜細胞培養において有意に産生が多いサイトカイン(IL-17A, IL-17F,IL-22,IL-23, TGFβ,TNFα,VEGF,MCSF,RNAKL,OPG)を単一あるいは組み合わせて、破骨細胞の形成と骨吸収活性に及ぼす影響を検討するため、ラットやマウス、各サイトカインを購入する予定である。
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