2013 Fiscal Year Research-status Report
フェントン反応による好中球細胞外捕捉現象制御機構の解明と難治性血管炎治療への応用
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24591461
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
平橋 淳一 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70296573)
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Keywords | 血管炎 / 腎炎 / 好中球 / ラクトフェリン / NETs |
Research Abstract |
研究開始時には、NETs形成は活性酸素種に依存するという過去の報告から、フェントン反応に着目して研究を立案していたが、鉄のキレート剤によるフェントン反応の阻害薬によってもNETsは阻害されなかったことから、過去に活性酸素産生を抑制するとされていた生体内プロテアーゼ:ラクトフェリンに標的を移し、ラクトフェリンが効果的なNETs阻害薬であることを見出した。本研究によって、我々は現在までに以下のことを示す実験データを得た。①好中球二次顆粒成分の一つであるラクトフェリンが、無刺激の好中球においては細胞質に分布していたものが、MPOやエラスターゼとは異なり刺激により細胞膜へ移行すること、②外因性に投与されたラクトフェリンは、好中球細胞膜に集積しクロマチン膨張に続いて起こる細胞膜の破裂を抑制した。③電子顕微鏡で観察したNETs形成は、ラクトフェリン非存在下では一本一本の線維が蜘蛛巣状に拡散しているのに対し、ラクトフェリン存在下では一塊に凝集したような形態的特徴を呈していた。④ラクトフェリンはNET-DNAと電荷的に結合し、電気的結合によってNETs形成を抑制するという仮説が支持された。⑤予想に反してラクトフェリンはNETs形成に必須とされている細胞内現象、すなわちROSの産生、それに引き続くエラスターゼの核移行および核内でのヒストン消失、またROSにより活性化される酵素PAD4が触媒するヒストンのシトルリン化などに影響を及ぼすことなくNETs形成を抑制していた。⑥IgG非依存性局所血管炎モデルにおけるLSRでは、細胞外に放出されたNETsが内皮傷害を引き起こしたものと考えらえるが、ラクトフェリンの経口投与によって皮下出血は著明に抑制され、ラクトフェリンがin vivoにおいてもNETs形成を抑制することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
蛍光顕微鏡下の生細胞(好中球)観察の実験系が非常にうまくworkし、実験データを得るスピードが増したため。また、研究グループ内での議論を頻繁に行い、実験の立案が活発に行われたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにいくつかのNETs形成抑制物質が報告されている。NADPH oxidaseの上流であるRaf-MEK-ERKの遮断がNETs形成を抑制するという報告や、活性化血小板が引き起こすNETsに対してアスピリンが抑制的に機能するという報告等がある。しかし、安全にNETs抑制作用を発揮する内因性物質はこれまでに報告がない。我々はラクトフェリンがNETs形成を抑制する内因性物質であることを見出した。この結果は、ラクトフェリンがNETsが関連する様々な疾患に対する安全な治療選択肢となる可能性を示唆する。今後、NETsの関連する病態(深部静脈血栓症や敗血症など)モデルを用いてラクトフェリンが治療薬となりうるかを検証していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
効率的な物品調達が行われたため。 次年度研究費とあわせて、消耗品の購入に用いる。
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[Presentation] Lactoferrin is a suppressor of neutrophil extracellular traps in inflammation2013
Author(s)
Koshu Okubo, Mako Kamiya, Yasuteru Urano, Hiroshi Nishi, Jan Herter, Tanya Mayadas, Daigoro Hirohama, Kazuo Suzuki, Tomokazu Nagao, Mototsugu Tanaka, Miho Kurosawa, Shinji Kagaya, Keiichi Hishikawa, Masaomi Nangaku, Toshiro Fujita, and Junichi Hirahashi
Organizer
XIth International Conference on Lactoferrin:Structure, Function, and Applications (2013 Rome)
Place of Presentation
ローマ(イタリア)
Year and Date
20131006-20131010
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