2012 Fiscal Year Research-status Report
マウス気管支喘息モデルを用いた舌下免疫療法のメカニズムの解明
Project/Area Number |
24591462
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
小屋 俊之 新潟大学, 医歯学系, 助教 (90444158)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂上 拓郎 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任助教 (00444159)
長谷川 隆志 新潟大学, 医歯学総合病院, 准教授 (90361906)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 気管支喘息 / 舌下免疫療法 / 免疫寛容 / アナフィラキシー / 動物モデル |
Research Abstract |
近年気管支喘息は増加の一途をたどっており、医療費の高騰が懸念されている。吸入ステロイドなどの優れた薬剤はあるが、疾患修飾能はなく、喘息を治癒に導くことはできない。原因治療とされる免疫療法が、疾患修飾能を兼ね備えた唯一の治療として、現在注目を集めている。 アレルギー疾患における免疫療法にはいくつかの投与方法があり、代表的なものとして、経口法、皮下法、舌下法がある。その中でも舌下法は、アナフィラキシーが少ないことや将来的には患者自身が自宅で免疫療法を維持していくことが可能である。現在アレルギー性鼻炎・気管支喘息に対して、舌下免疫療法は全世界的に治験が行われている。しかしながら、舌下法を含め、免疫療法の効果のメカニズムは解明されていない点が多く、どういった症例をターゲットにすればいいか不明である。 本研究おいて、マウスの気管支喘息モデルとして、ダニ抗原をアレルゲンとしたダニ抗原特異的喘息モデルを作成し、そのモデルに対して舌下免疫療法を行い、免疫寛容に至るメカニズムを明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当研究の計画の中で、3つの目標を設定した。1)ダニ抗原特異的喘息モデルの作成、2)ダニ抗原を使った舌下免疫療法の実践、3)口腔内、頸部リンパ節内の樹状細胞の解析と樹状細胞の機能修飾による免疫療法の効果の解析である。 まず1)ダニ抗原特異的喘息モデルの作成に関してであるが、ダニ抗原を1日1回(5日/週)点鼻を行い、3週、5週、7週と点鼻を行ったマウスを解析した。5週間点鼻により気道過敏性、好酸球性気道炎症が認められた。さらに気管支肺胞洗浄液中のTh2サイトカインの上昇、組織所見では気道周囲のリンパ球、好酸球浸潤、気管支杯細胞の増生も5、7週間点鼻モデルでしっかり認められる。これらのデータより5週間以上、ダニ抗原を点鼻することによって気管支喘息モデルを作成できると確認できた。次に2)ダニ抗原を使った舌下免疫療法の実践についてであるが、ダニ抗原を5週間点鼻するモデルを使って、舌下免疫療法モデルを検討した。舌下免疫療法は2週間施行することにした。免疫療法として、500μg/日と5mg/日で設定した。メサコリンに対する気道過敏性や好酸球性気道炎症は、5mg/日で有意に抑制できた。組織所見では、500μg/日群でも抑制傾向を認めた。気管支肺胞洗浄液中のサイトカインレベルは免疫療法群でも明らかな抑制効果は得られなかった。3)口腔内、頸部リンパ節内の樹状細胞の解析と樹状細胞の機能修飾による免疫療法の効果の解析に関しては、今後解析予定である。 以上より実験計画としてはおおむね順調に経過していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はメカニズムの解析を中心に進めていくことになる。そのターゲットを樹状細胞に焦点を当てた解析を行う。まず口腔粘膜内の樹状細胞や頸部リンパ節内の樹状細胞の細胞表面マーカー、サイトカイン産生能、抗原提示能を陽性コントロール群と免疫療法群で比較する。口腔粘膜内や頸部リンパ節内の樹状細胞の採取は、我々が以前行っていた肺内や腸管リンパ節内から採取する方法を応用する(Hayashi M et al. 2009, Kawakami H et al. 2012)。また以前の報告(Van Overtvelt et al. 2008)を参考に、口腔内のリンパ節の機能変化についても解析する。さらに樹状細胞の機能を修飾するとされる因子を抗原の舌下投与とともに投与することにより、樹状細胞の機能変化の増強効果を解析する。樹状細胞の機能解析だけでなく、当然のことであるが、喘息治療効果としての気道過敏性や肺内サイトカイン産生能、組織所見、さらにメカニズムとしてのTregの分析、IgE/IgG2bなどの免疫グロブリン定量、組織内の肥満細胞の解析なども同時に行う予定である。また肺標本または頸部リンパ節をホモジェナイズした上で、gene chipを行い、陰性・陽性コントロールと比較し、変動しているサイトカイン、ケモカイン、増殖因子などについても解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現在までの達成度や今後の研究の推進方策にも触れたように、所属リンパ節である口腔内、頸部リンパ節内の樹状細胞の解析や樹状細胞の機能修飾による免疫療法の効果の解析に対して研究費を使う予定である。具体的にはフローサイトメトリー用の抗体、サイトカイン測定用のELISAキット、免疫組織染色用の抗体やキットなどの物品に予算を配分する。またマウス実験であり、実験動物のマウスもかなりの匹数を使用する予定である。
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