2013 Fiscal Year Research-status Report
TSLPシグナル解析を通じた樹状細胞の機能的可塑性を維持する機構の解明
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24591468
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
有馬 和彦 佐賀大学, 医学部, 講師 (60336112)
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Keywords | 樹状細胞 / 可塑性 / 細胞内シグナル伝達 / サイトカイン受容体 / TSLP / アレルギー |
Research Abstract |
免疫応答の最前線に位置し,自己と非自己の抗原認識に深く関わっている樹状細胞は各種感染や炎症の特性に応じて異なる免疫応答を誘導し得ることが知られている。この性質を樹状細胞の機能的可塑性と呼び,樹状細胞を活性化させる因子の質的・量的差異およびそれらの組み合わせによって生み出されると考えられている。申請者はこれまでにアレルギー発症に深く関わっているサイトカインTSLPがヒト樹状細胞を活性化させる機構を明らかにしてきた。TSLPは主として上皮細胞から産生・分泌される分子であり,受容体欠損マウスでは実験的アレルギー症状の軽減が見られるなど,アレルギー治療の新規標的分子として注目されている。 実施二年目となる今年度はTSLP受容体の下流シグナルについてTSLP受容体を強制発現させた細胞株を用いて解析を行った。TSLP受容体鎖の細胞内部分にはITAM様の配列が存在しており,この領域を介したシグナル伝達が生じるのか否かに興味が持たれたが,これまでのところプライマリー樹状細胞を用いても,Syk過剰発現細胞を用いても,TSLP依存的なSykの活性化は認められていない。一方,前年度,TSLP受容体鎖はある種のサイトカインのシグナル伝達を抑制することが確認されたが,これが非特異的な反応ではないことを確認することができた。 また,TSLP刺激とpoly(I:C)刺激による樹状細胞における誘導遺伝子群の相違を評価するためにパスウェイ解析を行ったところ,TSLP刺激により細胞間接着に関連する遺伝子群の発現が有意に亢進していることが新たに明らかになった。これは細胞の形態的変化とも矛盾せず,TSLPのユニークなシグナルが細胞間の接着イベントと関連している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画としてはTSLPシグナルとpoly(I:C)シグナルとの質的相違を説明する分子機構を探索することと,TSLPシグナルにおけるSykシグナルの関与を中心とするシグナル伝達の解析を挙げていた。一つ目の計画に関して興味深い知見を得つつあること,また二つ目の計画に関しては(行った実験条件下では)SykシグナルはTSLPシグナルに関与しないことが明らかとなった。後者は結果的にはネガティブデータであるが以前からの懸案事項であり,これが解決したことで新たな可能性を模索することができるようになった。このことより達成度は上記区分とした。
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Strategy for Future Research Activity |
TSLP受容体はヒトにおいてはその発現細胞の希少さから下流のシグナル伝達解析が十分になされていない分子である。またアレルギー病態形成に寄与することが近年明らかになった自然リンパ球様細胞innate lymphoid cellsもTSLPに応答するという報告があり,アレルギー病態の理解にとってますますTSLPシグナル解析の意義が重要となっている。これまでの二年間で得られた知見を元にTSLPシグナルの解析を深め,成果を発表できるように努力していきたい。
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Research Products
(11 results)