2012 Fiscal Year Research-status Report
オートファジー関連蛋白質の新規機能をターゲットとしたマスト細胞の機能制御の試み
Project/Area Number |
24591470
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
牛尾 博子 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30317391)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | マスト細胞 / オートファジー |
Research Abstract |
我々は、オートファゴゾームの膜構成成分であるLC3-II (Atg8)がマスト細胞の顆粒に局在すること、およびLC3-IIの形成に不可欠な酵素Atg7を欠損したマスト細胞で顆粒成分や脱顆粒能に異常をきたすことを見いだしている。しかしながら、Atg7以外のオートファジー関連遺伝子が、マスト細胞の顆粒形成やその構成成分の貯留、代謝に果たす役割の詳細については不明である。そこで本年度はAtg7以外のオートファジー関連遺伝子のうち、すでにメラノゾームの形成や腸管のPaneth 細胞の分泌機能において重要であることが報告されているオートファジー関連蛋白質Atg18 (WIPI1)、Atg16Lに着目して解析を行った。Atg18 (WIPI1)、Atg16Lを欠損したマスト細胞をshRNA法により作成し、マスト細胞の顆粒形成、構成成分の貯留について検討した。その結果、マウスの骨髄由来培養細胞を用いた系では、いずれの遺伝子の欠損でもマスト細胞の顆粒の形態や貯留量に明らかな異常は見いだせなかった。またLC3-IIの顆粒への局在についても正常なマスト細胞との間に顕著な差はみられなかった。そこで、マスト細胞の顆粒形成や分泌に関与するターゲットとなるオートファジ-関連遺伝子を新たに見つけるため、マスト細胞の顆粒形成や脱顆粒に伴って変化するオートファジー関連遺伝子をPCR-array法を用いて検索した。その結果、Atg9bやAtg8のホモログであるGamma-aminobutyric acid (GABA) A receptor-associated protein-like 1 (GABARAPL1)を含め、いくつか遺伝子の有意な変動を見いだした。現在、これらの遺伝子とマスト細胞の顆粒形成、脱顆粒との関連について検討を行うべく、これらの遺伝子を欠損したマスト細胞の作成のための準備を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、Atg7以外でターゲットとなるオートファジー関連遺伝子を検討するにあたり、すでにメラノゾームの形成や腸管のPaneth 細胞の分泌機能において重要な役割を果たすことが報告されているオートファジー関連蛋白質Atg18 (WIPI1)、Atg16Lに絞って検討をすすめたためである。これらの遺伝子を欠損するマスト細胞を作成するにあたり、分化途中あるいは分化したマスト細胞にこれらの遺伝子のshRNAを導入したが、マウス骨髄由来のマスト細胞では顆粒の形態、貯留にあまり顕著な差がみられなかった。また、shRNA導入細胞の生存率が芳しくなく、はっきりとした機能や形態を観察するまでに時間を要してしまった。そのため、当初計画にあった、ライソゾームの異常からマスト細胞の分泌ライソゾームが巨大化するマウス(C57BL beige/beige)やメラニン合成に必須のtyrosinaseの発現を直接制御するMicrophthalmia-associated transcription factor(MITF)という転写調節因子に異常のあるC57BL6-mi/miマウス由来のマスト細胞を用いた、形態学的、生化学的検討があまり進んでいない状況にある。研究実績の概要に記載したように、PCR-array法にて、次にターゲットとするオートファジー関連遺伝子の候補をすでに絞ってあるので、今後はこれらの候補遺伝子の欠損が及ぼす影響を正常のマスト細胞で検討していくと同時に、顆粒異常のあるマウスからのマスト細胞において、これらの遺伝子産物の局在や異常について検討していく。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要に記載したように、マスト細胞の顆粒形成や脱顆粒に伴い変化するオートファジー関連遺伝子の候補をPCR-array法にてすでに把握している。本年度はこれらの候補遺伝子に着目し、これらの遺伝子の欠損によるマスト細胞の顆粒形成や機能の異常について正常のマスト細胞を用いて検討していく。また候補のオートファジー関連遺伝子を欠損させたマスト細胞の生存に異常がある場合に備え、マスト細胞の分化や活性化にともなう細胞内でのこれらの遺伝子産物の局在についても明らかにしていく。同時に前年度ほとんど着手できなかった、分泌ライソゾームが巨大化するマウス(C57BL beige/beige)やメラニン合成に必須のtyrosinaseの発現制御に関わる転写調節因子:Microphthalmia-associated transcription factor(MITF)に異常のあるC57BL6-mi/miマウス由来のマスト細胞を用いて、LC3-II、Atg9b、GABARAPL1を含めたオートファジー関連遺伝子のmRNA発現およびこれらタンパク質の細胞内での局在と顆粒形成異常との関連についても検討を行っていく。またヒトマスト細胞株LAD2を用いても、マウスの結果を確認しながらすすめていく。 候補となるオートファジー関連遺伝子については、上にあげたオートファゴゾーム膜の形成に関与する遺伝子以外にも複数のものがあり、それらの遺伝子についても当初の研究計画に追加してその機能に即した検討をマスト細胞を用いて行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画に従い、マウスのマスト細胞やヒトマスト細胞株LAD2の培養に必要な試薬および培養機器の購入、免疫学的検討、形態学的検討をするための試薬、遺伝子の精製や導入のための物品費に使用する予定である。また今年度は顆粒形成異常をもつマウスを購入するため、実験動物費を多めに計上している。
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Research Products
(5 results)