2012 Fiscal Year Research-status Report
線溶系物質による樹状細胞機能の制御:炎症性疾患に向けた新たな治療コンセプトの提案
Project/Area Number |
24591472
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
伊藤 量基 関西医科大学, 医学部, 准教授 (70434826)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野村 昌作 関西医科大学, 医学部, 教授 (20218358)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 樹状細胞 / 血小板 / 炎症 / アレルギー / 凝固系物質 / 線溶系物質 / TNF superfamily |
Research Abstract |
本研究テーマを完遂するために、1)凝固系物質による樹状細胞(Denderitic Cell:DC)の活性化と炎症応答増強の実験システムの確立、2)そのシステムを利用して、線溶系物質による炎症反応制御能の検討という二段階を必要とする。 今回、その1)として、凝固系物質である血小板を用いたDCの活性化機構を明らかにした。 アレルギー発症機序においてDCはTh2関連アレルギー性炎症を惹起し、アレルギー性炎症カスケードを引き起こす。上皮由来のサイトカインである胸線間質リンパ球増殖因子(thymic stromal lymphopoietin:TSLP)が、DCからケモカインリガンド17 (CCL17)を産生させることにより、メモリーTh2細胞の局所浸潤とアレルギー性炎症の維持に重要な役割を果たすことが報告されている。一方、凝固系物質である血小板はサイトカインやTNFスーパーファミリーなどの免疫メディエーターを発現し、炎症誘導においても重要な役割をしておる。しかしながら、血小板とDCのクロストークによるアレルギー免疫応答調節機序の報告は殆ど無い。 今回我々は新たに、トロンビン受容体により活性化した血小板がCD40リガンドやRANKリガンドなどのTNFスーパーファミリーを発現することにより、DCのCD86を増強し、さらにTSLPと同時に活性化血小板を添加することによって、DCから産生されるCCL17を増加させることも明らかにした。したがって、血小板はDCによるTh2免疫応答を増強し、アレルギー性の炎症を増幅させる可能性が示唆された。すなわちDCに由来するTh2関連アレルギー応答において、血小板による新たな増幅機序の可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
線溶系物質トロンボモジュリンの持つ抗炎症作用が重要なメカニズムと考えられているが、このTMの持つ抗炎症効果を様々な免疫炎症病態に治療として用いることが出来ないか?そのために、まず本申請では、「樹状細胞」と「凝固系物質の代表的物質である血小板」によるクロストークというvitroにおける実験システムを構築し、その中で血小板によって樹状細胞の活性化と炎症応答増強という新しい炎症増強機構を発見した。この段階までに当初より時間がかかり、一年の時間の中では、次のステップとして予定している線溶系物質(トロンボモジュリン・活性化プロテインC)を用いた炎症抑制効果を解析するステップまでには至っていない。しかしながら、この樹状細胞と血小板という内因性リガンドのクロストークという炎症機構を実験システムとして確立することは、今後それを基盤として線溶系物質を用いた治療コンセプト確立のために非常に重要であるため、予定より時間がかかろうとも、緻密な実験を必要とし、それは、本申請においては必要であったと考える。 このシステムを用いることは、今後各種の線溶系物質や抗血小板薬などの治療効果を一律で調べることが可能となり、今後の研究の時間効率に有益と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策として一年目までに確立した「樹状細胞」と「凝固系物質・血小板」のvitroにおける実験システムを基盤として、線溶系物質(トロンボモジュリン・活性化プロテインC)、さらには抗血小板薬などを用いて、その炎症制御能を有するものはどれか?そしてその細胞学的および分子的基盤を解明する。 その具体的方法については、昨年までに確立した「血小板によるDC活性化」のvitroシステムを用いて、一律的に以下の実験を行う。 1.Toll様レセプター(TLR)リガンドを用いた感染に起因する外因性炎症、 2.血小板や好中球などの産生物質alarminなど内因性リガンドによって誘導される自然炎症この、1と2に関してのDCの活性化の修飾増強効果に対して線溶系物質(トロンボモジュリン・活性化プロテインC)、さらには抗血小板薬が、どのような抑制効果を持つのか、またその作用の分子基盤をvitroの系を用いて明らかにしたい。 さらに今後は、疾患モデルマウス(SIRS、敗血症、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、SLE、クローン病様炎症性腸疾患)を用いて、これらの疾患マウスにおけるDCサブセットの機能と線溶系物質(トロンボモジュリン・活性化プロテインC)・抗血小板薬を投与することによってこれら疾患の治療効果をvivoのレベルで検証し、凝固線溶反応と免疫炎症反応の相互作用の実態を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
A:ヒトDCの活性化培養系に、1.各種外因性TLRリガンド(PGN:TLR2L, polyIC:TLR3L, LPS:TLR4L, flagellin:TLR5L,loxoribine:TLR7L, R848:TLR7/8L, CpG:TLR9L, HSV-1:DNA virus, Flu:RNA virus)の添加。2.活性化血小板・内因性リガンドHMGB1または好中球由来NET(neutrophil extracellular traps)の添加。 これらの外因性リガンド・内因性リガンドによるDC刺激系において、線溶系物質(トロンボモジュリン・活性化プロテインC)や抗血小板薬の添加による抗炎症作用とDC機能の関連の検討を行う。これらの刺激試薬並びに解析試薬に研究費を使用する予定である。 B:さらに炎症性疾患モデルマウスとして、HMGB1を全身投与したマウス(SIRS)、LPS投与マウス(敗血症)、NC/Nga mouse(アトピー性皮膚炎)、OVA吸入刺激マウス(気管支喘息)、2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸直腸内投与による炎症性腸疾患発症マウス(クローン病様炎症性腸疾患)を用いる。さらに本研究ではDNA+抗DNA抗体+HMGB1あるいはTLRリガンド(CPG,polyU)を用いて、ヒトと同様なI型IFNに起因するSLEモデルマウスの作成をあらかじめ行う。 これらモデルマウスを用いて、局所ならびに全身への線溶系物質製剤(トロンボモジュリン・活性化プロテインC)・抗血小板薬を投与する。そして以下の解析を行う。各マウスのDCサブセット・各エフェクター細胞を同定し、ヒト細胞と同様の分子発現を解析し、治療効果判定として疾患病態バイオマーカーの発現を経時的に解析する。これらのマウス並びにマウス用解析試薬にも研究費を使用する予定である。
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Research Products
(14 results)