2012 Fiscal Year Research-status Report
走化性を示す細胞が走る向きを決める仕組みを解き明かす。
Project/Area Number |
24591473
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
山内 明 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (80372431)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗林 太 川崎医科大学, 医学部, 教授 (60251443)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 細胞走化性 / 炎症 / 走化性因子 / GPCR / シグナル伝達 / 好中球 / 脂質メディエーター / 骨髄系細胞 |
Research Abstract |
これまで好中球の遊走パターンが、細菌で作られるホルミルぺプチド(fMLP)と、炎症惹起因子の血小板活性化因子(PAF)では明らかに異なり、fMLPへは一方向性の遊走が、PAFへは多方向性でランダムな方向の遊走が観られていた。 まず遊走パターンに、リガンドによる優先性はあるのかを検討した。すなわち、fMLPとPAFを濃度を変化させて混合したリガンドに対する好中球の遊走パターンを検討した。fMLPを100nMで一定にしてPAF濃度を1, 10, 100nMにして混合したリガンドでは、一方向性でまっすぐな遊走が観られfMLPへの遊走パターンが優位に観られた。また、PAFを100nMで一定にしてfMLP濃度を1-100nMと変化させて混合したリガンドでも、一方向性の遊走が観られfMLPへの遊走パターンが優位に観られた。このことからfMLPへの遊走がPAFより優先していることがわかった。 次にこの遊走パターンの違いのメカニズムの解明に進んだ。これらのパターンの違いは受容体以下のシグナルに違いがあることが予想される。これらの受容体(GPCR)の細胞内ループi1, i2, i3領域およびC末端領域は下流のシグナル伝達に重要だとされている。そこでこれらの受容体(FPR1およびPAFR)のi1, i2, i3領域およびC末端領域の置換体(キメラ)コンストラクトを作成した。作成したコンストラクトを哺乳類細胞発現ベクターに挿入し、まずT細胞系の細胞株Jurkat細胞へ導入した。すると導入前にはfMLPあるいはPAFへの遊走を示さなかったが、導入後には明かな遊走を示し、これらのコンストラクトは機能していることが分かった。すなわち本実験系にて進めていくことが妥当であると思われた。今後はこの実験系を用いて、FPR1、PAFR、およびFPR1-PAFRキメラ受容体の機能を比較検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度までに、FPR1、PAFR、およびFPR1-PAFRキメラ受容体を外来性遺伝子として骨髄系細胞へ導入し、同時に内在性の、FPR1あるいはPAFRをノックダウンを行った上で、細胞の遊走パターンを検討する予定であった。前者の外来性遺伝子コンストラクトの作成と機能評価は達成したが、後者の内在性遺伝子ノックダウンまでは至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度中に、FPR1、PAFR、およびFPR1-PAFRキメラ受容体(外来性)遺伝子コンストラクトの導入と後者の内在性遺伝子ノックダウンを同時に行い、細胞の機能評価を達成する。あるいは、外来性遺伝子が発現が強く、内在性遺伝子発現を無視できる場合は、そのまま機能評価を進める。これらにより、FPR1とPAFRの細胞内シグナルの違いを明かにする。 さらに元々平成25年度以降に予定しているFPR1、PAFR、およびFPR1-PAFRキメラ受容体に結合するタンパク質の探索も行う。末梢血好中球あるいは上記遺伝子を導入した骨髄系細胞株をfMLPまたはPAFにて刺激後、可溶化してそれぞれの抗受容体抗体を用いて受容体と共にタンパク質を免疫沈降により取得する。得られたタンパク質を高速液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS)を用いて検出する。上記の免疫沈降の方法を改良して、最近よく用いられる6xHis-tag(ヒツチジンタグ)を付加したコンストラクトを作成中である。 また、FPR1、PAFR、およびFPR1-PAFRキメラ受容体に結合するタンパク質のリン酸化を探索し、受容体以下のタンパク質の活性化状態を評価する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度にやや遅れがちであったため研究費が499千円残ったが、平成24年度の未使用額は平成25年度請求額と合わせて消耗品購入費用と人件費にあてさせていただきたい。平成25年度請求分は、予定している受容体以下のタンパク質探索のために消耗品、人件費、また成果発表のため旅費として予定通り使用させていただきたい。
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Research Products
(8 results)