2012 Fiscal Year Research-status Report
中和単クローン抗体パネルを用いたHIV感染の治癒に向けた研究
Project/Area Number |
24591484
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
松下 修三 熊本大学, エイズ学研究センター, 教授 (00199788)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | HIV-1 / エンベロープ蛋白 / 交差中和抗体 / ADCC / 免疫学 / ウイルス / 感染防御学 / 免疫学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、抗体の可変部位を分子クローニングする新しい方法を用いて、非サブタイプB感染症例から、新規単クローン抗体を分離し、有効なAIDSワクチン開発に貢献すること、および、cART治療下に残存するHIV-1産生細胞を排除する治療戦略の基礎研究として、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)に関して臨床分離株を標的としたアッセイシステムを構築し、有効な抗体反応を同定することである。 1. 中和抗体を持つ症例の同定と中和単クローン抗体の作製:20名のサブタイプAE感染症例由来の血漿検体に関して、サブタイプの異なる22種のウイルスに対する中和活性を検討し、2検体に48% の交差中和を認めた。これらの血清抗体の中和に関連するエンベロープ変異体を用いた検討では、V2/V3の糖鎖関連エピトープの関与が考えられた。これらの症例の末梢血単核球を分離し、CD8+細胞除去後にEBVを用いてトランスフォーム、クローニングして、増殖するB細胞を分離培養し、抗エンベロープ抗体をスクリーニングした。これまでのところ8種類の候補抗体を得た。 2. 中和抗体の分子クローニング:EBV刺激とクローニングによって得られた上記8種類のB細胞クローンからRNAを抽出し、Oligo(dT)プライマーと逆転写酵素でcDNAを作製した。これを鋳型として抗体の重鎖、軽鎖のV領域を特異的に増幅、クローニングし、Fabを発現させ、活性を検討中である。 3. ADCC活性に関しては、サブタイプBの抗体を用いて条件設定を行っている。単量体gp120を用いた方法に加え、臨床分離株を感染させた細胞を用いた実験系およびNK細胞のCD107aの発現に関連した測定系の基礎データを蓄積しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、抗体の可変部位を分子クローニングする新しい方法を用いて、非subtype Bウイルス感染症例から、より交差反応性の強い新規単クローン抗体を分離し、有効なAIDSワクチン開発に貢献することである。本研究のもう一つの目的は、cART治療下に残存するHIV-産生細胞を排除する治療戦略開発として、抗体依存性細胞傷害活性(antibody dependent cell mediated cytotoxicity: ADCC)に関して臨床分離株を標的とした新規アッセイシステムを構築し、有効な抗体反応を同定することである。一年目の実績としては、サブタイプの異なる22種のウイルスに関する交差中和活性を持つ2症例が同定でき、さらに、その1例からは8種類の候補単クローン抗体を得ることができた。現在、それぞれのB細胞から抗体遺伝子を単離・再構築し、活性を測定する過程にある。一方、ADCC活性に関しては、これまでの報告の多くは、実験室で用いられているウイルスに関して行われ、臨床分離株についての方法は確立されていない。我々は臨床分離株をNK耐性の標的細胞(CEM/NKR-CCR5)に感染させるべく努力したが、ほとんど感染しないことが判明した。より感受性の高い細胞で継代した後に、ウイルス感染を試みるなどの工夫を続けるとともに、NK細胞のCD107aの発現を測定する検出系の条件検討を行っている。このように、すべてが順調とは言わないまでも、それぞれに進歩が見られ、おおむね順調に目的に向かって進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に変更はない。平成24年度に得られた結果をもとにして、交差中和抗体を持つ症例から平成25年度以降も中和単クローン抗体を樹立する。特に、アジア・アフリカで感染が拡大しているウイルス株を中和する抗体のパネルが作成できるように、継続的な努力をする。作成した抗体に関しては、交差反応性、とくに非subtype Bウイルスをどのくらいカバーできるか、中和試験で検討する。現在すでに約40種類のシュウドウイルスを作成してきたが、NIAID AIDS reagent program から、さらに36種類のENV発現plasmid panelを供与していただいている。これらのシュウドウイルスを作成するとともに中和活性を調べる。中和抗体の分子クローニングを継続し、交差反応性の抗体の進化を検討し、実際にワクチンで誘導可能な抗原エピトープの探索を行う。一方、エンベロープ発現細胞表面への抗体結合活性の測定及びADCC活性に関しては、臨床株からクローニングされたENV 遺伝子をpLP-IRES2-EGFP へ組み換える。作製したベクターを293T 細胞にトランスフェクトし、交差反応性の抗体の機能的ENV3量体への反応性をFACSにて測定する。ADCC 活性の測定にはCEM/CCR5-NKR 細胞を用いpLP-EGFP-ENVをトランスフェクトし、G418 で発現細胞を選択した後に、正常人の末梢血単核球と様々な濃度の抗ENV 抗体を用いて培養する。ADCC 活性による細胞傷害効果はGFP 陽性細胞におけるPI 取り込み及びENV発現細胞の減少をコントロールと比較することにより定量可能である。ADCC活性に関しては、様々な抗ENV抗体を用いた条件検討が必要と考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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