2013 Fiscal Year Research-status Report
中和単クローン抗体パネルを用いたHIV感染の治癒に向けた研究
Project/Area Number |
24591484
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
松下 修三 熊本大学, エイズ学研究センター, 教授 (00199788)
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Keywords | HIV-1 / エンベロープ蛋白 / 交差中和抗体 / ADCC / 免疫学 / ウイルス / 感染防御学 / 免疫学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、抗体の可変部位を分子クローニングする新しい方法を用いて、非サブタイプB感染症例から、新規単クローン抗体を分離し、有効なAIDSワクチン開発に貢献すること、および、cART治療下に残存するHIV-1産生細胞を排除する治療戦略の基礎研究として、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)に関して臨床分離株を標的としたアッセイシステムを構築し、有効な抗体反応を同定することである。 1.中和抗体を持つ症例の同定と中和単クローン抗体の作製: 昨年までの研究で、広範囲の中和抗体活性を示すCRF01_AE感染症例を同定した。該当症例の末梢血単核球からメモリーB細胞を分離、EBVで形質転換後にクローニングした。培養上清をCRF01_AE envelope発現細胞にてスクリーニングし、特異的結合活性が見られた10クローンについてsubtype AE, A, B及びCへの交差反応性を検討した。これらより交差反応性の強い3クローンからRNAを抽出し、Oligo(dT)プライマーと逆転写酵素でcDNAを作製した。これを鋳型として抗体の重鎖、軽鎖のV領域を特異的に増幅、クローニングし、組み換え抗体を作成中である。 2. ADCC活性に関しては、サブタイプBの抗体を用いて条件設定を行っている。単量体gp120を用いた方法に加え、AIDS reference reagent programからtransmitted /founder virusを含む臨床分離株を分与いただき、これをspinoculationという方法で、CEM-NKR 細胞に感染させ、標的細胞として用いるADCC測定系を確立した。現在、抗体パネルを用いて、ADCC活性を測定中である
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、抗体の可変部位を分子クローニングする新しい方法を用いて、非subtype B感染症例から、より交差反応性の強い新規単クローン抗体を分離し、有効なAIDSワクチン開発に貢献することである。本研究のもう一つの目的は、cART治療下に残存するHIV-産生細胞を排除する治療戦略開発として、抗体依存性細胞傷害活性(antibody dependent cell mediated cytotoxicity: ADCC)に関して臨床分離株を標的とした新規アッセイシステムを構築し、有効な抗体反応を同定することである。我々は昨年までに、広範囲の中和抗体活性を示すCRF01_AE感染症例を同定した。該当症例の末梢血単核球からメモリーB細胞を分離、EBVで形質転換後にクローニングした。培養上清をCRF01_AE envelope発現細胞にてスクリーニングし、特異的結合活性が見られた10クローンについてsubtype AE, A, B及びCへの交差反応性を検討した。これらより交差反応性の強い3クローンからRNAを抽出し、Oligo(dT)プライマーと逆転写酵素でcDNAを作製した。これを鋳型として抗体の重鎖、軽鎖のV領域を特異的に増幅、クローニングし、組み換え抗体を作成中である。一方、ADCC活性に関しては、これまでの報告の多くは、実験室で用いられているウイルスに関して行われ、臨床分離株についての方法は確立されていない。我々は、spinoculationという新たな方法で、臨床分離株をNK耐性の標的細胞(CEM/NKR-CCR5)に感染させ、ADCC活性を測定する実験系を確立した。現在、抗体パネルを用いて、ADCC活性を測定中である。このように、2年目は目標通りの結果が得られ、データを蓄積し論文化する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に変更はない。平成25年度に得られた結果をもとにして、交差中和抗体を持つ症例から平成26年度も中和単クローン抗体を樹立する。特に、アジア・アフリカで感染が拡大しているウイルス株を中和する抗体のパネル作成の継続的な努力をする。作成した抗体の交差反応性、とくに非subtype Bウイルスをどのくらいカバーできるか、中和試験で検討する。現在すでに約40種類のシュウドウイルスを作成してきたが、NIAID AIDS reagent program から、さらに36種類のENV発現plasmid panelを供与していただいている。これらのシュウドウイルスを作成するとともに中和活性を調べる。中和抗体の分子クローニングを継続し、交差反応性の抗体の進化を検討し、実際にワクチンで誘導可能な抗原エピトープの探索を行う。一方、ADCC 活性の測定には、transmitted /founder virusを含む臨床分離株を、spinoculationという新たな方法で、標的細胞であるCEM/CCR5-NKR 細胞に感染させ、これを用いたFACSによる定量法を確立した。現在、抗体パネルを用いて、ADCC活性を測定中である。ADCC活性の測定では、ウイルス株と抗体の組み合わせによって様々な条件検討が必要であることがわかってきた。現在、実験を繰り返し、臨床分離株にも有効なADCC活性の条件を検討中である。
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