2012 Fiscal Year Research-status Report
新興真菌症の薬剤耐性機序-真菌にも耐性菌選択濃度域があるのか-
Project/Area Number |
24591487
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
時松 一成 大分大学, 医学部, 講師 (20347032)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
門田 淳一 大分大学, 医学部, 教授 (50233838)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 薬剤耐性菌 / 院内感染対策 |
Research Abstract |
試験管内でトリコスポロンの真菌薬の耐性誘導実験を行ったところ、抗真菌薬との接触により、容易に多剤抗真菌薬に対する耐性が誘導されることを明らかにした。アゾール系抗真菌薬の標的酵素である14α demethylase(14DM)をコードするerg11の全遺伝子配列を解明し、更に、アミノ酸変異を見出して、論文発表を行なった。治療に抗真菌薬が使用された臨床分離株の中から高度薬剤耐性を示すトリコスポロン株を見出した。同じく14DMをコードする遺伝子の別の部位にアミノ酸変異が生じていることを発見した。 薬剤排泄ポンプの亢進機序による耐性機序も想定されるた。アゾールと同じ細胞内動態を呈するローダミンを用いて、薬剤耐性トリコスポロン株に接触させたところ、薬剤感受性真菌に比べ、耐性真菌ではローダミンの濃度が低いことが判明した。これにより、トリコスポロンのような担子菌においても、カンジダと同様に、薬剤排泄ポンプの亢進が、薬剤耐性機序に関与していることが推測された。 また、トリコスポロンは生体内に留置する医療デバイス(血管留置カテーテル、尿道留置カテーテル)の表面に、バイオフィルを形成することを明らかにした。バイオフィルムを形成したトリコスポロン株は浮遊菌に比べ、複数のアゾール系抗真菌薬や、ポリエン系抗真菌薬に対して、薬剤感受性が低下することを明らかにした。臨床では、トリコスポロンによるカテーテル感染や尿路持続感染を経験するが、これらの現象には真菌のバイオフィルム化が関与している可能性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トリコスポロンに対する薬剤耐性機序を段階的に解明することができている。トリコスポロンのバイオフィルム形成能と薬剤耐性化現象を示すデータを得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究者らが発見した14DMのアミノ酸変異が、普遍的に薬剤耐性に関与するのか、一般に真菌での形質転換に用いられるSaccharomycesで形質転換し、薬剤耐性化現象が起きるかどうかを明らかにする。 耐性機序に薬剤排泄ポンプの亢進の関与を明らかにするために、ラジオアイソトープ標識したアソール抗真菌薬を用いたトリコスポロンの菌体内へ取り込み、排泄実験を行なう。 キレート剤やマクロライドなど、一般細菌でみられるバイオフィルム形成抑制物質が、トリコスポロンのバイオフィルム形成抑制にも働くか研究する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に、14DM変異遺伝子の形質転換による耐性化の確認と、薬剤排泄ポンプの解明を行なう。形質転換に必要なSaccharomycesやプラスミドの準備を次年度早々に行なう予定である。
|