2013 Fiscal Year Research-status Report
多剤耐性菌における分子疫学マーカーとしてのインテグロンの解析と実用化
Project/Area Number |
24591489
|
Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
趙 維華 昭和大学, 医学部, 講師 (90327916)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
胡 志青 昭和大学, 医学部, 准教授 (60245826)
|
Keywords | グラム陰性桿菌 / 薬剤耐性遺伝子 / インテグロン / PCR分析 / DNAシークエンス解析 |
Research Abstract |
本研究計画は、長年の研究で確立した技術と知識を生かして、インテグロンを多剤耐性菌の同定における新たな分子疫学のマーカーとして樹立させるのを目的とする。インテグロンとは、細菌が持つ外来の遺伝子を取り込んでそれを強力に発現させる遺伝子構造であり、トランスポゾン、プラスミドと染色体DNA上を頻繁に転位する。その故、インテグロンに獲得した耐性遺伝子が容易に菌間で伝達される。インテグロンはグラム陰性菌に広く存在し、耐性遺伝子を持つインテグロン-1は91菌属に属する189菌種から確認されている。特に46%の腸内細菌科の菌株がインテグロン-1を保有しており、環境中に広く分布している。インテグロン-1が持つ耐性遺伝子の種類、数と並び方は様々であり、この多様性は異なる起源と獲得の経路を示唆している。従って、インテグロンを分子疫学のマーカーとして利用し、耐性遺伝子の検出、新たな耐性遺伝子の発見、院内感染の起源と感染経路の究明、院内感染症の診断、および治療薬の選択等で実用化できると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今までの研究で、我々は、昭和大学病院をはじめ、複数の病院で保存されてきた薬剤耐性グラム陰性菌の臨床分離株と臨床資料を収集し、薬剤感受性、薬剤耐性の伝達性、およびPFGEパターンを分析した。インテグロン-1の基本構造を基づいて、その5'-CSと3'-CSの配列に相補的な一対のプライマーを設計し、そのプライマーが挟む全ての遺伝子をPCR法で増幅した。続いて、そのPCR産物のDNA配列を解析し、遺伝子の種類およびその並び方を解明した。この分子疫学的手法を用いて、インテグロンによる耐性遺伝子の検出に成功し、腸内細菌科の菌にもblaIMP-10耐性遺伝子、大腸菌や肺炎桿菌にもblaIMP-11耐性遺伝子が存在していることを初めて確認した。また、この分子疫学的手法を用いてインテグロン関連のblaIMP耐性遺伝子の病院内定着と伝播をサーベイランスすることが有効であると確認した。これらの研究結果をまとめた原著論文と総説をJournal of Medical Microbiology、Future MicrobiologyとCritical Reviews in Microbiology等の雑誌に発表した。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. 供試菌株とその臨床資料の収集・薬剤感受性試験・メタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)産生能の確認: 複数の病院から分離された耐性グラム陰性菌とその詳細資料を収集し、微量液体希釈法を用いて各菌株に対する種々の抗生物質の最小発育阻止濃度を測定し、薬剤感受性パターンを確認する。特異的な抑制剤(メルカプト酢酸ナトリウム)を利用したディスク拡散法によって、MBL産生菌をスクリーニングする。 2. DNA抽出・PFGE解析: 耐性菌からDNAを抽出した。同種の菌株間における薬剤感受性パターンとMICが類似している場合、PFGE解析によって、同じ耐性株による院内感染者であるか否かを確定する。 3. 耐性遺伝子の伝達: E. coli HB101とE. coli JM109をレシピエントとして用い、接合と形質転換による耐性遺伝子の伝達性を検証する。 4. PCRによるインテグロンの増幅・PCR産物のDNA配列解析・耐性遺伝子及びその並び方の解明: インテグロン-1に共通する遺伝子配列、即ち、5’-CSにあるインテグラーゼ-1遺伝子 (intI1) と3’-CSにあるqacE△1に相補的な一対のプライマーを設計し、そのプライマーが挟む遺伝子をPCR法で増幅する。目的のPCR産物を抽出キットで精製し、DNA配列解析を行う。専用ソフトウェア (DNASIS Pro)を用いてシークエンスデータを解析し、データベース (GenBank) との照合によって耐性遺伝子の種類とその並び方を解明する。 5. シークエンスデータの解析を中心に、同定された多剤耐性遺伝子と臨床資料を合わせて基礎データ庫を構築する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最終年度(平成26年度)にDNAシークエンシングとシークエンスデータの解析などを中心とする研究を行う予定であり、多額の資金が必要とする。平成25年度の未使用額と平成26年度の使用額を合わせて最終年度に使用する予定である。 DNA抽出キット、PCR用試薬、プライマー合成、DNAシークエンシング等消耗品費用約178万円を必要とする。薬剤耐性における国際学会やシンポジウムに参加し、研究成果を世界に向けて発信するために、旅費約40万円を必要とする。論文掲載料(Open Access fee)や別刷り代等約50万円を必要とする。
|
Research Products
(5 results)