2012 Fiscal Year Research-status Report
多剤耐性アシネトバクターの新規病原因子の探索と重症化に関与する宿主側要因の解析
Project/Area Number |
24591490
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
斧 康雄 帝京大学, 医学部, 教授 (10177272)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
祖母井 庸之 帝京大学, 医学部, 講師 (10311416)
越尾 修 帝京大学, 医学部, 講師 (30365986)
永川 茂 帝京大学, 医学部, 助教 (50266300)
菊地 弘敏 帝京大学, 医学部, 講師 (80338681)
上田 たかね 帝京大学, 医学部, 助教 (80459312)
中野 竜一 帝京大学, 医学部, 助手 (80433712)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | アシネトバクター / 食細胞 / LAD2細胞 / 貪食能 / 血清オプソニン活性 / サイトカイン産生 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
本研究は、多剤耐性A. baumannii(MDRA)の新規病原因子の探索と発症/重症化に関与する宿主側要因を解析することを目的とするものである。本年度は、被検菌であるMDRA、薬剤感受性A. baumanniiの標準株(ATCC19606)を含め、菌株数を増やし健常人好中球や単球に対する抗食菌性を、多剤耐性緑膿菌(MDRP)などと比較検討した。その結果、A. baumannii (MDRAを含む)の食細胞の食作用に付随する活性酸素産生能は他の細菌に比較して著明に低下していた。血清存在下で、Gram染色/ギムザ染色し鏡検でMDRA とMDRPの好中球による貪食能を比較すると、MDRAはMDRPに比較して、いずれの条件下でも貪食されにくく、これはFITC標識A.baumannii を貪食させFACS解析した場合もほぼ同様であった。しかし、菌を遊走因子とした場合の好中球の遊走作用に及ぼす影響は同等であった。次に、A. baumanniiの貪食に必要なオプソニン因子を調べるために、多数の型の違うA. baumanniiを用いて、抗体除去血清、補体除去血清、両者除去血清を用いて検討した。その結果、MDRAにおいては、補体よりも抗体除去によりオプソニン作用が低下したので、感染防御因子として血清中の莢膜特異抗体が重要であることが示唆された。次に、ヒト由来マスト細胞株であるLAD2を用いてA.baumanniiへの応答を炎症性サイトカイン遺伝子発現とサイトカイン産生を指標に解析した。標準株と臨床分離株をLAD2細胞と反応させたところ、4時間後の標準株で刺激したLAD2細胞でTNF-α遺伝子発現の増強が観察されたが、MDRAなど他の臨床分離株刺激ではTNF-α遺伝子発現に変化は見られなかった。他のサイトカインなどの遺伝子発現解析と培養上清中のサイトカイン産生は現在解析中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
食細胞やマスト細胞との相互作用に関しては当初の予定どおりに進行しているが、トランスポゾンをランダム挿入させ表現型の異なる変異株の作成は現時点でまだ実現できていない。 そこで、病原因子としてのリポ多糖体に着目し、現在菌体成分から精製中である。 マウスの動物感染実験に関しては、動物倫理委員会の許可を受け、現在実験中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
1、健常人だけでなく,感染防御能低下患者やセプシス/重症肺炎患者などの活性状態が異なる好中球を用いて検討する。 2、病原因子の一つと考えられるA. baumanniiのリポ多糖(LPS)を培養後分離・精製し、好中球に及ぼす影響を遺伝子レベルで解析する予定で、 現在外注し精製中である。得られたLPSを好中球に添加し、発現するパターン認識受容体遺伝子、炎症性サイトカイン遺伝子、ケモカイン受容体遺伝子、抗炎症性サイトカイン、炎症性ミエロイド細胞受容体遺伝子及びGPCRリン酸化酵素遺伝子の変化を解析する。 3、A.baumanniiを肺に感染させるマウス肺炎モデルを用いて、A.baumannii の標準株と臨床分離株の病原性の比較解析を行う予定である。 4、アシネトバクター属菌は土壌など環境中からしばしば分離される環境菌であるが、動物(家畜)の保菌状況については不明な点が多いので、家畜のアシネトバクター属菌の保菌状況ならびに耐性菌の分離状況の調査を行なう。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に研究に必要な試薬購入に使用予定である。特に、LPS精製は外注するため費用がかかる。また、実験動物購入費や好中球機能解析のために10万円ほど人件費に使用する予定である。
|